また明日


割れんばかりの拍手の後、司会者が【感動しました!】と言いながら近寄ってきそうになるのを視線で制し、後ろへ下がる。
他学年の嫉妬にまみれた視線と遥陽の微笑み。
冬弥は眉を下げて笑うと、他にはバレずに通り過ぎざまに拳をコツンと合わせた。


【これにてエントリーした出場者が全員揃いました!これよりアピールタイムを始めたいと思います!】

1番目から色々自己紹介していく。得意なこととか好きな事とか。自分がいかに優れているかや衣装に込めた思い。の発表。

『この軍服、演劇部から借りたんですけど、色が違うとかで一日で作り替えたんですよ、手芸部が。あん時は焦りましたねーーーー』
遥陽が裏話を始めると、客席から『大変だったぞ!』と声が上がり、会場が湧いた。

そして、今度は冬弥の番になった。
【御影さんは、その衣装は自前ですか?】
『いや、違いますよ。俺のクラスの頼れる「仲間達」がーーーーー今、これってアピールタイムですよね?』
【え、ああ、そうですけど?】
『なら、こんなのも…アリ、ですよね。』
突然冬弥が懐から短刀を取り出した。
戸惑う司会者に向けて剣先を向け【えっ】と声を上げた瞬間、キィンと刃と刃がぶつかる音がした。

『……お相手願う。』

冬弥はスッと表情を無くして、司会者の後ろを見ると、『受けて立とう』と軽やかな声が聞こえた瞬間
司会者の目前まで迫った冬弥が、ヒラリと体を躱し背後に立ち、わざと前へ進ませるように後ろから肩をトンと叩いた。よろける司会者が慌てて振り返る。
冬弥が再び一回転。短刀を短く振り、戸惑う観客席と控えてた生徒達の声を無視して遥陽の元へ駆け出し、遥陽は好戦的に笑うと、鞘からスラリと抜いた刀を持って冬弥に近寄り、再び刃がぶつかる音。

2人は顔を見合わせると1度花道へと飛躍。慌てた照明担当のスポットライトが2人を照らし、即興のショーが始まった。

「御影のやつ、こんな事するって言ってたっけ?」
「いや、何も聞いてないぜ」
「……でも、美しいわね。」

秋宮達の声の後にも他のクラスから「まさか、あれってアドリブなのかよ!」やら「本物みたいだな!」と全員の視線を釘付けにさせた。
その間も2人は刃を合わせる。時折冬弥が遥陽を支えながら回転させたり、遥陽が冬弥とは違う所を切りつけたりと不思議な動きが見られたが、そんなことはどうでもよかった。
こんなにも素晴らしいものが見られたからだ。

ー……はぁ。こんな時まで沢山出てきやがって。

周りからアドリブの殺陣だと思われているショーは、怪異をただ倒しているだけの立ち回りだった。
動きに合わせて髪の毛や着物の裾、袖、羽衣が美しく揺れる。
遥陽も気が付きそれに応戦しているのだが、数が多い。やっと半分。
冬弥が舌打ちをしかけた時、遥陽の口元を見てぞわりと背筋を震わせた。

ー笑ってる。

急いで次々と怪異を倒すと、ダランと遥陽が腕を下げ刀を持ったまま冬弥の首を目掛けて仕掛けてきた。
冬弥はそれを済んでて躱し、背後から抱き寄せ扇子に切り替え全員の視線を遮断させた。

そして、耳元で「遥陽」と名を呼び動きを止める。

【うおおおおお!圧巻だ!!こんなにも素晴らしい殺陣はこの世に存在するのであろうか!】

再び大きく湧いた声に司会者も熱がこもった声を上げて2人を称えた。
拍手喝采。二人は乱れない呼吸をそのままに己の武器をしまった。


【皆様お待ちかね!イケコンの優勝者の発表だ!】