「……篠宮、あの二人が来た。」
『とうとう行動に出たか。ここまで我慢出来たのが奇跡だ。んで、ハルは?』
「……何も無い。気が付きもしなかったよ」
文化祭が終わって少し。
片付けをしていた冬弥達のクラスは、少しずつ進めていた事も相まってどこよりも早く片付けが終わった。
少し離れると言って、冬弥は屋上へ続く階段で通話を繋げていた。相手は篠宮。
「だから、そうそうに消してーー」
『冬弥、それは違うだろ。』
物騒な事を考えた冬弥は、篠宮にそれを止められた。
『あの二人は、自分の子供が心配だっただけだ。お前もそれは分かるな?』
「……ん」
『だから、今回の事も大目に見ろ。』
「……。」
渋々頷くと、篠宮は『だが』と声を出した。
『わかっただろ?色々な事が限界なんだよ、冬弥。いつまでも隠し通せないんだ。』
「……そう、だな。」
珍しく弱気な冬弥の声。
「遥陽は……」
『冬弥?』
「いや、なんでもない。呼ばれてるから戻る。」
『ああ、楽しめよ。』
通話を切って壁に寄りかかる。
ズルズルと床に座ると、片膝を抱えた。
「……消えろ。」
スッと横にはらった。いつの間に短刀を持っていたのか、冬弥はブワッと消えていく怪異に顔を上げた。
ーやはり、増えてる。
ここ数ヶ月の間、学校近辺で発生する怪異の数が異常値だった。
観測課からも「異常が有れば報せを」なんて言われたが、そんな事分かりきっている。
「……まだ」
ゆっくりと目を閉じた。
「もう、少しだけ」
【それでは、明桜学園文化祭における総合ランキング発表を行いますーーーー】
体育館に全校生徒が集合し、生徒会によるその掛け声で3学年の中で1位2位3位を決める。尚、これに優勝したクラスだけ、豪華商品があるらしいのだが、それは週明けの月曜日に発表らしい。ソワソワとする生徒たち。
だが、今回の優勝は……二年四組に奪われた。
確か化学の実験で大盛り上がりしたところだ。凄く賑やかだったと立花から聞いたし、綺麗だったとか。
「まぁ、俺達はイケコンで優勝出来ればいいからな。」
「そうだな」
その後、2時間後に後夜祭のメインであるイケコンが始まるとのアナウンスに一時的に解散となった。
これは、自由参加。それだけ大きな大講堂で行われるのだ。
30分後には、後夜祭の出し物が行われる。
ライブやら漫才やら合唱やら先生達の弾き語りなど。
だが、冬弥達のクラスは大慌てで教室へ向かい、一部の人達で冬弥を「仕上げて」行く。全て姉川のプロデュース。演出も何もかもだ。
準備だけで1時間以上が経過。
後夜祭で流れを見ていたクラスメイトの連絡がはいると、立花が「俺達のクラスは最後から5番目だってよ!」に、姉川が顔を上げた。この順番はくじ引きで決まり、全15クラス学年バラバラなのだ。ただ、後になればなるほど余裕が生まれる。なぜなら多少なり演出が変えられるからだ。だが……
「変更は無しよ。そのまま行くわ。」
「姉川のプロデュースだから、成功するよな」
絶対的信頼。
「今から控え室に居ても問題はないわね、どうする?向かう?」
「ああ、そうだな……壇上には俺ひとりなんだっけ?」
「ええ、そうよ。」
冬弥が台本を確認しながら顔をあげる。
姉川が優しく微笑む。
「例え、あなた一人が舞台の上に立つとしても、わたしたちの心はひとつよ。そうでしょう?」
「そうだね、姐さんの言う通りだ。」
文化祭の期間、ずっと姉川のサポートをしていたクラスメイトがケラケラ笑い「大丈夫だよ」と冬弥の肩をポンと叩いた。
いや、そうじゃないのだが……まぁ、いい。
「ありがとう」
冬弥の言葉に全員が「任せろ」とか「大丈夫」と声をかけてくる。なんて、あたたかいのだろう。
「3年2組、準備してください」
楽屋で待っていた立花が先に大急ぎで大講堂へ走って戻る。生徒会の腕章を付けた案内係の1年が冬弥を見て言葉を失ったが、直ぐに視線を反らせて懐中電灯で床を照らしながら入口に案内した。
姉川が用意されていた観客席の椅子に座ると、腕を組んだ。何処か緊張した立花達の顔に苦笑い。
前のグループ達の華やかな演出に鼻で笑った。
「……引き立て役、ご苦労さま」
生徒会の元気のいいアナウンス。
【……お次は3年2組 御影冬弥だぁあ!】
「さぁ」
喧しいくらいにザワつく大講堂。
生徒たちの視線が出入口の扉に注がれる。
「黙らせなさい」
その声と同時に出入口に向かってライトが当てられた
