ヘトヘトで帰った1日目。
2日目が始まったのはいいが、1日目より明らかに人が多すぎて、12:00過ぎには予定分の食材が完売した冬弥達のクラス。
残念なお客さんの声だが、ここで思いついたのは、今並んでいる人だけ限定で撮れるチェキだ。
羨ましいと見られつつ、総勢20以上が撮り終えたのが14:00を少し過ぎた頃。
「……おつかれさまでしたぁ!」
何処のクラスよりも打ち上げモード。既に集合写真は撮り終えた。
それでも、冬弥だけは執事服のままそこにいた。
「御影は脱ぐなよ、それ。」
「そうだぜ、絶対1位撮るんだからな」
別の意味で燃え始めた。
「……まぢかよ」
冬弥は、張り出されたイケコンのメンバーの看板を見ていつ撮られた?と頭を抱えた。
執事姿で愛想を振り向く笑顔の冬弥の顔。別の人が見たら黄色い声をあげそうだが、ここにいるのは野太い男達の声だけ。
「あーあ。もう少しこっちの角度の方が良いのによ」
立花がケイタイを出すと、冬弥にそれを見せた。
正しく「美しい」と言われても過言では無い正面の冬弥の写真。
「冷たさの中にある秘められた闇深いなんちゃらがなんちゃらで〜って女子が騒いでたぜ」
「なんだよそれ。」
「さぁ?」
冬弥の呆れる声。立花はケイタイをしまうと「さぁてと」と体を伸ばす。
「俺は別のクラスのダチん所いくけど、御影はどーする?」
「俺は中庭に座ってろって言われた。」
「はは、姉川か?」
「そう。じゃあ、また後でな。」
看板から離れた冬弥はヒラヒラ手を振って中庭へ向かった。苦笑いの立花は時間を確認すると「姉川もスパルタだな?」と言って2階へ。
「……。」
何してようかな、と思った時。
耳鳴りが聞こえて、視線を彷徨わせ……
「なんで、ここに」
下駄箱の看板に気が付き、立花と話すよりも前。
校門の所に一組の男女が立っていた。
何処か不安そうな立ち姿。ヨレヨレの服装。特に女の方は今にも泣きそうに何かを握りながら男に支えられて立っていた。
「……いこう。」
「……ええ。」
そうしてやっと中へ入れる。
子供達の元気な声を受け流しながらひたすら校内を歩き回る。
「らっしゃいませー!」
「やきそば、焼きそばどっすかー!」
「演劇部の劇が開始します!ご覧になられる方は、体育館までーーー」
「ゾンビ達による百鬼夜行まであと10分!!絶望を見たい人は2階へ急げぇ!」
そんな呼び込みの声も、2人にとっては何の喜びにも楽しみにもならない。
全て回り終わり、女は落胆した。
「……ここじゃないんだな。もう、帰ろう。」
「そうねーー」
『俺は中庭にいろって言われた』
『はは、姉川か?』
『そう。じゃあ、また後でな。』
男子生徒の2人の声。女は目を見開き静かに視線をあげると、その灰色の目の男子生徒が見えた事で立ち止まった。男子生徒はこちらに気が付いていない。最後に見た時とは別人。でも、その冷たさだけは変わらない。
「あ、あなた……」
「どうした?」
「あの子……わ、若様……冬弥様よ」
女は踵を返す。だが、男はその名を聞いて、女の腕を掴んで止めた。顔が青白い。
「駄目だ。あの方から直々に接近を禁じられている。僕達がここに居ること自体、許された事じゃないんだ。」
男はヒソヒソと女を止めさせる。
「でも……あなた。自分の子に会う事を禁じられて10年……やっと、手がかりを見つけたのよ。」
女はポロリと涙を流す。それを不審がった周りの先生や客がヒソヒソと見てきた事で、騒ぎになるのは良くないと思ったのか、男が小声で「少しだけだ」と女を支えたまま歩き出した。
「少し……少しでいいの……あの子が側に居てくれるなら、それでーーー……ヒッ」
少し進み、中庭へ。
遠目にベンチに腰掛けている姿が見える。
女の震える声。男がそちらを見ようとした瞬間、背筋が凍る様な、異様な気配に体が動かなくなった。
「……っ!」
こちらを、見ている。
冬弥が、2人を認識して、ただ見ていた。
1桁の時から大の大人を視線だけで黙らせたあの子は、大きくなっても変わらずのままだ。
女は小さく悲鳴をあげ、男はガクガク震える足を懸命に立たせる。
ー……殺される
「ーーーー冬弥ぁ!」
その時
こんな空気を引き裂く元気な声に気が付き、二人は恐る恐る自分達とは逆方向を見て、目を見開いた。
そこには青い目の少年。
見間違えるはずが無い……あの子はーーー
「姉川って人が呼んでるぜ?なんか言い忘れた事があるって。」
灰色の目の少年に近寄る。
「そうか。なら、行くよ。ああ、そうだ。俺も用があるから着いてきてくれない?」
「え、いいけど。」
ここからでは何を話しているのか迄は聞こえない。
それでもずっと二人の様子を見ている男女は、灰色の目が隣にいる青い目の少年に何かを耳打ちした事に気がつく。
すると、こちらをキョロキョロと見た時、ほんの一瞬だけ目が合った。でも、直ぐに逸らされてしまい、2人は言葉を発せないまま、立ち尽くした。
一瞬見れた事を喜べとでも言うような冬弥の視線。
勿論一目だけでも見られるのならばいいと思ってた。
でも、会えて話せるならもっと良いと思ってた。
深くは、多くは、望んでない。
ただ、我が子がいる事を知りたかった。
例え、目の前の闇そのものを敵に回したとしても。
もう二度と、日の目が見れずとも。10年前から時間が止まってしまった二人の時間は、今更動きはしないのだから。
2日目が始まったのはいいが、1日目より明らかに人が多すぎて、12:00過ぎには予定分の食材が完売した冬弥達のクラス。
残念なお客さんの声だが、ここで思いついたのは、今並んでいる人だけ限定で撮れるチェキだ。
羨ましいと見られつつ、総勢20以上が撮り終えたのが14:00を少し過ぎた頃。
「……おつかれさまでしたぁ!」
何処のクラスよりも打ち上げモード。既に集合写真は撮り終えた。
それでも、冬弥だけは執事服のままそこにいた。
「御影は脱ぐなよ、それ。」
「そうだぜ、絶対1位撮るんだからな」
別の意味で燃え始めた。
「……まぢかよ」
冬弥は、張り出されたイケコンのメンバーの看板を見ていつ撮られた?と頭を抱えた。
執事姿で愛想を振り向く笑顔の冬弥の顔。別の人が見たら黄色い声をあげそうだが、ここにいるのは野太い男達の声だけ。
「あーあ。もう少しこっちの角度の方が良いのによ」
立花がケイタイを出すと、冬弥にそれを見せた。
正しく「美しい」と言われても過言では無い正面の冬弥の写真。
「冷たさの中にある秘められた闇深いなんちゃらがなんちゃらで〜って女子が騒いでたぜ」
「なんだよそれ。」
「さぁ?」
冬弥の呆れる声。立花はケイタイをしまうと「さぁてと」と体を伸ばす。
「俺は別のクラスのダチん所いくけど、御影はどーする?」
「俺は中庭に座ってろって言われた。」
「はは、姉川か?」
「そう。じゃあ、また後でな。」
看板から離れた冬弥はヒラヒラ手を振って中庭へ向かった。苦笑いの立花は時間を確認すると「姉川もスパルタだな?」と言って2階へ。
「……。」
何してようかな、と思った時。
耳鳴りが聞こえて、視線を彷徨わせ……
「なんで、ここに」
下駄箱の看板に気が付き、立花と話すよりも前。
校門の所に一組の男女が立っていた。
何処か不安そうな立ち姿。ヨレヨレの服装。特に女の方は今にも泣きそうに何かを握りながら男に支えられて立っていた。
「……いこう。」
「……ええ。」
そうしてやっと中へ入れる。
子供達の元気な声を受け流しながらひたすら校内を歩き回る。
「らっしゃいませー!」
「やきそば、焼きそばどっすかー!」
「演劇部の劇が開始します!ご覧になられる方は、体育館までーーー」
「ゾンビ達による百鬼夜行まであと10分!!絶望を見たい人は2階へ急げぇ!」
そんな呼び込みの声も、2人にとっては何の喜びにも楽しみにもならない。
全て回り終わり、女は落胆した。
「……ここじゃないんだな。もう、帰ろう。」
「そうねーー」
『俺は中庭にいろって言われた』
『はは、姉川か?』
『そう。じゃあ、また後でな。』
男子生徒の2人の声。女は目を見開き静かに視線をあげると、その灰色の目の男子生徒が見えた事で立ち止まった。男子生徒はこちらに気が付いていない。最後に見た時とは別人。でも、その冷たさだけは変わらない。
「あ、あなた……」
「どうした?」
「あの子……わ、若様……冬弥様よ」
女は踵を返す。だが、男はその名を聞いて、女の腕を掴んで止めた。顔が青白い。
「駄目だ。あの方から直々に接近を禁じられている。僕達がここに居ること自体、許された事じゃないんだ。」
男はヒソヒソと女を止めさせる。
「でも……あなた。自分の子に会う事を禁じられて10年……やっと、手がかりを見つけたのよ。」
女はポロリと涙を流す。それを不審がった周りの先生や客がヒソヒソと見てきた事で、騒ぎになるのは良くないと思ったのか、男が小声で「少しだけだ」と女を支えたまま歩き出した。
「少し……少しでいいの……あの子が側に居てくれるなら、それでーーー……ヒッ」
少し進み、中庭へ。
遠目にベンチに腰掛けている姿が見える。
女の震える声。男がそちらを見ようとした瞬間、背筋が凍る様な、異様な気配に体が動かなくなった。
「……っ!」
こちらを、見ている。
冬弥が、2人を認識して、ただ見ていた。
1桁の時から大の大人を視線だけで黙らせたあの子は、大きくなっても変わらずのままだ。
女は小さく悲鳴をあげ、男はガクガク震える足を懸命に立たせる。
ー……殺される
「ーーーー冬弥ぁ!」
その時
こんな空気を引き裂く元気な声に気が付き、二人は恐る恐る自分達とは逆方向を見て、目を見開いた。
そこには青い目の少年。
見間違えるはずが無い……あの子はーーー
「姉川って人が呼んでるぜ?なんか言い忘れた事があるって。」
灰色の目の少年に近寄る。
「そうか。なら、行くよ。ああ、そうだ。俺も用があるから着いてきてくれない?」
「え、いいけど。」
ここからでは何を話しているのか迄は聞こえない。
それでもずっと二人の様子を見ている男女は、灰色の目が隣にいる青い目の少年に何かを耳打ちした事に気がつく。
すると、こちらをキョロキョロと見た時、ほんの一瞬だけ目が合った。でも、直ぐに逸らされてしまい、2人は言葉を発せないまま、立ち尽くした。
一瞬見れた事を喜べとでも言うような冬弥の視線。
勿論一目だけでも見られるのならばいいと思ってた。
でも、会えて話せるならもっと良いと思ってた。
深くは、多くは、望んでない。
ただ、我が子がいる事を知りたかった。
例え、目の前の闇そのものを敵に回したとしても。
もう二度と、日の目が見れずとも。10年前から時間が止まってしまった二人の時間は、今更動きはしないのだから。
