境界管理局は、怪異を扱う組織である。
その存在は一般には知られていない。
内部には複数の部署が存在する。
対怪異特務課は現場での調査および対処を担い
観測課は記録と監視を行う
技術課は術式や装備の管理を担当し
統制課は全体の指揮と判断を下す。
管理局に所属する者は左胸、心臓の上に紋章を装着する。二つの印が並び、右が管理局を示す椿の紋章、左が位を示す印となっている。
椿の紋章は全て共通で、背景色によって所属部署が識別される。
特務課は銀、観測課は紺、技術課は緑、統制課は金。
位を示す印は円形で、上位の花から鳥、風、月の四段階に分けられている。
花は、赤い円に金の文字。
鳥は、青い円に銀の文字。
風は、緑の円に白の文字。
月は、黒い円に紫の文字。
その色の違いによって、序列が分けられている。
学校が終わった放課後。
ポケットの中で鳴ったケイタイを見た冬弥は、送られて来たメッセージに記された「時間変更」の文字に目を細め遥陽を呼んだ。
「遥陽、急いで帰るぞ。」
「は、なんで??」
来週行われる郊外オリエンテーションに着ていく服を選びに、通い慣れた服屋に着ていたのだが、鏡に合わせながら不思議そうな顔をした遥陽に「篠宮からのだよ」と伝えると、遠い目をして服を渋々置いて店を出た。
「篠宮さんにまた怒られる気がする。」
「怒られるような事をしたのか?」
「いや、勘だよ勘。」
店があるショッピングモールから出てから暫く歩いていると、商店街に入った所で再びケイタイが鳴った。
「……はぁ。走るぞ遥陽」
「え、なんで!?」
言いながら駆け出した冬弥。慌ててついて行く。
「一時間後に迎えを寄越すってよ。」
「いち……は、時間無さすぎんだろ!」
結局、全力ダッシュで家迄戻り慌てて準備を始めた。
学校の制服を脱いで管理局から支給されたスーツを着用する。
上下ともに黒で統一され、ネクタイも同色。
装飾は少ないが、生地にはわずかに光沢があり、動きに合わせて鈍く光る。
目立つものではない。だが、視線を引く。
ネクタイの内側には椿の紋様が織り込まれている。
外からは見えない。気づく者も、ほとんどいない。
磨かれた革靴を靴箱から出して、履き替えた。
特務課専用のビジネスバッグを手に玄関を飛び出てエレベーターのボタンを押す。
15階のマンションの14階に住んでいる事から、タイミングによってはなかなかエレベーターが来ない。階段を降りても良いが、絶対途中で来てしまう。なら、大人しく待っていた方が早い。
結局数分待ってからエレベーターに乗り地下駐車場迄やってくると、コンクリートの匂いが鼻につき、僅かに湿った空気が肌に触れる。二人分の靴音が遅れて響き、見慣れた黒い車が決まった位置に止まっているのに気がついた。
既にエンジンはかかっている。
「……お待ちしておりました」
運転席の窓が開けられ抑えた男の声に冬弥は短く頷くと、遥陽と共に後部座席へと乗り込んだ。
ドアを閉め、静寂に満たされる車内。数秒後、音も揺れも無く車は滑るように動き出した。
地下のスロープを上がり地上へ。徐々に明るくなった車内にそっと目を伏せる。
窓の外に見える街の景色。信号機が色を変えた事で車が停止。横断歩道を渡る人に混ざる黒い影、見慣れた商店街の入口。何も変わらない。
ただ、車内がいつも以上に静かだった。
やがて、車は一つの建物の前で減速した。
建物の名前は、白藤総合ビル。
整い過ぎている外観、無機質なガラス張り、何処にでもありそうな10階建てのオフィスビル。
低層階には一般企業が入り、人の出入りも多い。
上階に進むにつれて入室制限がかかり、関係者以外は立ち入れない区画が増えていく。8階以上は、社員証がなければ入れない。10階では、関係者との会議が行われることもある。
表向きは、それだけの建物だ。
そのまま車は地下駐車場の中へと滑り込む。
再び光が途絶えた。
その存在は一般には知られていない。
内部には複数の部署が存在する。
対怪異特務課は現場での調査および対処を担い
観測課は記録と監視を行う
技術課は術式や装備の管理を担当し
統制課は全体の指揮と判断を下す。
管理局に所属する者は左胸、心臓の上に紋章を装着する。二つの印が並び、右が管理局を示す椿の紋章、左が位を示す印となっている。
椿の紋章は全て共通で、背景色によって所属部署が識別される。
特務課は銀、観測課は紺、技術課は緑、統制課は金。
位を示す印は円形で、上位の花から鳥、風、月の四段階に分けられている。
花は、赤い円に金の文字。
鳥は、青い円に銀の文字。
風は、緑の円に白の文字。
月は、黒い円に紫の文字。
その色の違いによって、序列が分けられている。
学校が終わった放課後。
ポケットの中で鳴ったケイタイを見た冬弥は、送られて来たメッセージに記された「時間変更」の文字に目を細め遥陽を呼んだ。
「遥陽、急いで帰るぞ。」
「は、なんで??」
来週行われる郊外オリエンテーションに着ていく服を選びに、通い慣れた服屋に着ていたのだが、鏡に合わせながら不思議そうな顔をした遥陽に「篠宮からのだよ」と伝えると、遠い目をして服を渋々置いて店を出た。
「篠宮さんにまた怒られる気がする。」
「怒られるような事をしたのか?」
「いや、勘だよ勘。」
店があるショッピングモールから出てから暫く歩いていると、商店街に入った所で再びケイタイが鳴った。
「……はぁ。走るぞ遥陽」
「え、なんで!?」
言いながら駆け出した冬弥。慌ててついて行く。
「一時間後に迎えを寄越すってよ。」
「いち……は、時間無さすぎんだろ!」
結局、全力ダッシュで家迄戻り慌てて準備を始めた。
学校の制服を脱いで管理局から支給されたスーツを着用する。
上下ともに黒で統一され、ネクタイも同色。
装飾は少ないが、生地にはわずかに光沢があり、動きに合わせて鈍く光る。
目立つものではない。だが、視線を引く。
ネクタイの内側には椿の紋様が織り込まれている。
外からは見えない。気づく者も、ほとんどいない。
磨かれた革靴を靴箱から出して、履き替えた。
特務課専用のビジネスバッグを手に玄関を飛び出てエレベーターのボタンを押す。
15階のマンションの14階に住んでいる事から、タイミングによってはなかなかエレベーターが来ない。階段を降りても良いが、絶対途中で来てしまう。なら、大人しく待っていた方が早い。
結局数分待ってからエレベーターに乗り地下駐車場迄やってくると、コンクリートの匂いが鼻につき、僅かに湿った空気が肌に触れる。二人分の靴音が遅れて響き、見慣れた黒い車が決まった位置に止まっているのに気がついた。
既にエンジンはかかっている。
「……お待ちしておりました」
運転席の窓が開けられ抑えた男の声に冬弥は短く頷くと、遥陽と共に後部座席へと乗り込んだ。
ドアを閉め、静寂に満たされる車内。数秒後、音も揺れも無く車は滑るように動き出した。
地下のスロープを上がり地上へ。徐々に明るくなった車内にそっと目を伏せる。
窓の外に見える街の景色。信号機が色を変えた事で車が停止。横断歩道を渡る人に混ざる黒い影、見慣れた商店街の入口。何も変わらない。
ただ、車内がいつも以上に静かだった。
やがて、車は一つの建物の前で減速した。
建物の名前は、白藤総合ビル。
整い過ぎている外観、無機質なガラス張り、何処にでもありそうな10階建てのオフィスビル。
低層階には一般企業が入り、人の出入りも多い。
上階に進むにつれて入室制限がかかり、関係者以外は立ち入れない区画が増えていく。8階以上は、社員証がなければ入れない。10階では、関係者との会議が行われることもある。
表向きは、それだけの建物だ。
そのまま車は地下駐車場の中へと滑り込む。
再び光が途絶えた。
