また明日


「よ、お前らー。最後の夏休みは〜って、それどころじゃねぇわな。」
夏休みが終わり、新学期を迎えた。
去年と比べたら驚く程楽しめなかったとこの場にいる……と言うか全国の受験生がそれを考えているのだが、血走った目で笑う立花は、とうとう金髪を辞めて髪を黒に戻したらしい。

「……あああああ!来年は絶対今年の倍は遊ぶ。絶対に。俺は決めた。来年は海外行く!行くからな!」
「あー、寝不足の頭に響く。立花、落ち着けー」
なんの宣言だ。塾やら習い事やらでほぼ遊びになんて、出かけられなかったのは、この場にいるほとんどがそう。それでも、遊びたいのは仕方の無い。
「……御影とも結局連絡しても都合が合わなかったしなあ」
「仕方ないよ。御影だって忙しいって言ってたもんな。」
「家の方が忙しくてな……色々と。」
冬弥は誤魔化しながら笑い読みかけの本に視線を移した。ここ最近連日で行っている任務でかなり疲れが溜まっている。そのうち纏まった休みが欲しいものだ。


いつも通り隣のクラスに迎えに行った放課後。
「……ふ、毎年恒例になったな。」

「月待、頼むよ!」
「え、やだよ。」
「どーーーーしても、お前じゃないとダメなんだ!」
何やら騒がしい遥陽のクラス。
冬弥は廊下の壁に寄りかかり様子を見守った。
「高校最後の文化祭、どーしても優勝したいんだ!」
「俺達は、優勝して1位の景品が欲しい!」
「あの、長時間並んでも入れないって有名な某テーマパークのチケットが欲しいんだ!」
「たのむ、月待!この通りだ!!」

遥陽の席を中心にクラス全員が集合。バッ!と同時に頭を下げ
そして……

「クラス代表として、後夜祭のメインであるイケコンに出てくれ!!」
「は!?絶対に嫌だね!!」

イケコンとは、『イケメンコンテスト』の略だ。
① 出場条件
各クラスから 1名選出
推薦制(本人拒否可だが、ほぼ強制)
② 審査方法は 3つの評価で決まる
1.外部投票(来場者)→ 一般客の票
2.校内投票(生徒)→ クラス人気・知名度
3.審査員票(教師)→ 出し物や文化祭内の活躍、一般的な授業態度
③ 審査項目
第一審査:ビジュアル
登場&一言
立ち姿・雰囲気
④第二審査:パフォーマンス
自由(歌・セリフ・演技など)
⑤第三審査:即興トーク
お題に答える
観客とのやり取り
⑥ 特別要素(重要)クラス加点
文化祭の売上・人気も加点対象
⑦優勝特典
一位
人気絶頂の某テーマパークの1日ファーストチケット
乗り物乗り放題券。1クラス分
二位
ギフト券。1000円分
三位
学食1日無料券

「毎年逃げてきただろ?今年は無理だったのか?」
冬弥の迎えに気が付きそそくさとクラスを出た遥陽に対し、教室から「まってぇ」やら「見捨てるなー」の他にも「俺ならお前をトップに立たせられるよ!」と聞こえてくる。
「一昨年からクラス同じのやつが、俺の逃走経路を完全に塞ぎやがった。冬弥のとこは?」
疲れた顔の遥陽は、隣を歩く冬弥の勝ち誇った顔でハッ!とした。
「今年はうちに立花がいるからな!」
「あーあぁ。明日はどーやって逃げるかな」
去年の後夜祭で見事一位を取った立花達が居たクラス。確か去年の景品は……あ、焼肉食べ放題だったか?いや、1泊2日の旅チケットだったか?
冬弥と遥陽は文化祭に少し出た後任務で管理局にいたからほぼ知らないが……大盛り上がりだったらしい。

遥陽のその様子にクスクスと笑う冬弥だったが、翌日自分も同じ目に合うとは夢にも思わなかった。

秋の文化祭まで後……2ヶ月。