夏休みが終盤に差し掛かるまでに2人は宿題を終わらせた。進路について考える時間もなく、ただ篠宮からの任務をこなしていたある日……
「冬弥、花火見ようぜ」
「……花火?」
遥陽から、そんな誘いがあった。
その日、篠宮からの無茶ぶりの任務を2泊3日の合宿のような形式でこなした帰り、街の中に貼ってあった広告を見ていた遥陽が、冬弥に声をかけたのだ。
「……いつ?」
「えっと、明後日」
任務でヘトヘトな冬弥だったが、迷わずケイタイを出してスケジュールを確認。あ。
「諦めろ、遥陽。その日は夜から任務だよ」
「……ええええええええええ!」
オーバーリアクション。
疲れ過ぎておかしくなっている。夏休みが夏休みで無くなった。
「……篠宮さんにお願いしてさ」
「無理だよ。その日、黒瀬も来る。」
「はあ……終わった。」
黒瀬も来るとなると案件がそれなりに厄介だったり、未成年では立ち入れない場所だったりと様々。
「……ぐっばい、さいごの……なつ、やすみ!」
まるでラスボスが勇者に倒された時のセリフのようだ。
その姿にくすくす笑い、近寄り肩に触れた。
「終わったら管理局で花火やろう。篠宮も呼べば怒られやしないよ」
「……ううぅ。そーゆー意味じゃ無いんだよぉ。」
「……じゃあ、どういう意味だよ」
「わからず屋。」
「は?」
拗ねた遥陽だったが、次の瞬間には「新作のゲームだ!」とゲームセンターへ走って行った。
「……花火、ね。」
「行くぞお前ら。」
「黒瀬。」
これから始まる任務の廃ビルを外を見上げる3人。
「……黒瀬。」
「ん?」
「……30分時間をくれ。」
そんな冬弥の声の後、「遥陽!」と叫んだ冬弥は、驚き振り返る遥陽の腕を掴んで走り出した。戸惑う声の遥陽。「な、ど、どうした!?」や「ちょ、転ぶ!」と声を出しながら廃ビル郡を抜け出し、とあるビルを駆け上がった。
「……はぁ。」
黒瀬はその姿を見ながら腕を組んで壁に寄りかかる。
呆れてはいるが、僅かに口元が緩んでいた。
「っはぁ、はぁ……と、冬弥!」
「……っはぁ」
屋上までノンストップで上がり切り、乱れる息を整えた瞬間
ードォン、パララ、ヒュルルルルルルル
ードォォォオン!!
「……あ」
「ここなら……少し遠いけど見えるかなって思ったんだ。」
そのままフェンスの近く迄寄る遥陽は、遠目に見える色とりどりの花を見つめた。
赤が滲んで、青が混ざって、白に溶ける
「……冬弥」
「見たかったんだろ、遥陽。」
冬弥もフェンスに近寄り遥陽を見た。
遥陽の目に反射する花火。キラキラと輝き美しい色を放った。
「冬弥……俺、冬弥と見られるなら何でも良かったんだ。」
フェンスの手すりをギュッと握りこちらを見てきた。
「ありがとう、冬弥。」
その屈託のない笑顔に冬弥は一瞬、なきそうになった。
遅れては咲き、先に弾けては散っていき……同じ形、同じ色は無い。
「来年も一緒に見ような、冬弥!」
いちばん最後、大きな花が弾けた。
視線を戻してしまった遥陽。冬弥は震える声を誤魔化すように「そうだな」と静かに告げた。
