雨は、弱くなっていた。
最早降っているのか、止んでいるのか分からない程度の水滴が、空に残っている程度。
足元は濡れたまま。湿った空気が、全身にまとわりついた。
「……暑いな」
思わず、そう零れる。
冬弥は腕まくりしたワイシャツをそのままに胸元に風が入るようにシャツをパタパタとする。
「梅雨だしな」
隣から、軽い声。
遥陽は涼しい顔をしながらそこにいた。
「もうちょいで夏か」
「早くね?」
「でももう六月だろ」
「……まぁな」
少しだけ沈黙が落ちる。雨の音が、細く続いていた。傘をさしたくないな、と少し渋る。
「コンビニ寄るのか?」
「……アイスか」
遥陽の提案に冬弥が受けた。
「この天気で?」
雨の中で食べにくいと思っているのか、すごい顔で見てくる。それよりも冷たいものが食べたい。
「アイスに天気は関係ないだろ」
「はは、確かに」
マンションの近くにあるコンビニの店内は、涼しかった。冷気が一気に肌を撫でる。
「寒っ」
「さっき暑いって言ってただろ」
どっちだよ、と言いたげな遥陽。
「それとこれとは別」
「都合いいな」
笑い声が、少しだけ響く。選んだアイスを手にレジを済ませて、外に出る。
湿った空気が、また戻ってきた。
「やっぱ暑いな」
ダルさが勝った。
「だろ」
何でもない会話。
何も変わらない時間。
それでも……
——この時間が、続けばいい
そう、思った。
「ただいま。」
家に戻る。
玄関を開けると、いつもの静けさがあった。二人で靴を脱いで、冬弥はそのままリビングへ向かう。
明かりをつけると、少し遅れて部屋が白くなる。
意味もなく天気予報をテレビで流す。
「……」
ソファに腰を下ろし、少しだけ除湿をかけた。
手に持っていた袋をテーブルに置く前にアイスを一つ、取り出す。袋を破って、口に運ぶ。選んだものはソーダ味のかき氷。
冷たい。
さっきまでの暑さが、少しだけ遠のいた。
「……」
もう一口食べて、ふと、視線を上げた。
誰もいない。それが、当たり前のはずなのに。
「……遥陽」
呼んでも、返事はない。当たり前だろう。
—……さっきまで、一緒にいたはずなのに。
食べかけのアイスをそのままテーブルに置いて立ち上がる。理由は、特にない。
ただ——足が、自然とそちらへ向いた。廊下に出ると、足音が小さく響く。扉の前で立ち止まる。ノックは勿論しない。そのまま、ドアノブに手をかけ、開ける。
リビング以上に静かな部屋。
カーテンが、わずかに揺れている。
窓は、少しだけ開いていた。いつ、開けたっけ。
視線を動かしベッドの上。
「……遥陽」
そこに、いる。目を閉じたまま、微動だにしない。
まるでその姿は……
「……」
音もなく近づき、手を伸ばして肩に触れて少し揺らす。
「遥陽」
返って来ないとわかっていても、毎日呼んでしまう。
「遥陽……」
ピクリとも動かない体。
「……遥陽、俺を恨んでるか?」
横になり続ける遥陽に縋るように膝をつき、もう一度名を読んでから立ち上がり部屋を出ていった。
ツゥと流れた涙に気が付かぬまま。
最早降っているのか、止んでいるのか分からない程度の水滴が、空に残っている程度。
足元は濡れたまま。湿った空気が、全身にまとわりついた。
「……暑いな」
思わず、そう零れる。
冬弥は腕まくりしたワイシャツをそのままに胸元に風が入るようにシャツをパタパタとする。
「梅雨だしな」
隣から、軽い声。
遥陽は涼しい顔をしながらそこにいた。
「もうちょいで夏か」
「早くね?」
「でももう六月だろ」
「……まぁな」
少しだけ沈黙が落ちる。雨の音が、細く続いていた。傘をさしたくないな、と少し渋る。
「コンビニ寄るのか?」
「……アイスか」
遥陽の提案に冬弥が受けた。
「この天気で?」
雨の中で食べにくいと思っているのか、すごい顔で見てくる。それよりも冷たいものが食べたい。
「アイスに天気は関係ないだろ」
「はは、確かに」
マンションの近くにあるコンビニの店内は、涼しかった。冷気が一気に肌を撫でる。
「寒っ」
「さっき暑いって言ってただろ」
どっちだよ、と言いたげな遥陽。
「それとこれとは別」
「都合いいな」
笑い声が、少しだけ響く。選んだアイスを手にレジを済ませて、外に出る。
湿った空気が、また戻ってきた。
「やっぱ暑いな」
ダルさが勝った。
「だろ」
何でもない会話。
何も変わらない時間。
それでも……
——この時間が、続けばいい
そう、思った。
「ただいま。」
家に戻る。
玄関を開けると、いつもの静けさがあった。二人で靴を脱いで、冬弥はそのままリビングへ向かう。
明かりをつけると、少し遅れて部屋が白くなる。
意味もなく天気予報をテレビで流す。
「……」
ソファに腰を下ろし、少しだけ除湿をかけた。
手に持っていた袋をテーブルに置く前にアイスを一つ、取り出す。袋を破って、口に運ぶ。選んだものはソーダ味のかき氷。
冷たい。
さっきまでの暑さが、少しだけ遠のいた。
「……」
もう一口食べて、ふと、視線を上げた。
誰もいない。それが、当たり前のはずなのに。
「……遥陽」
呼んでも、返事はない。当たり前だろう。
—……さっきまで、一緒にいたはずなのに。
食べかけのアイスをそのままテーブルに置いて立ち上がる。理由は、特にない。
ただ——足が、自然とそちらへ向いた。廊下に出ると、足音が小さく響く。扉の前で立ち止まる。ノックは勿論しない。そのまま、ドアノブに手をかけ、開ける。
リビング以上に静かな部屋。
カーテンが、わずかに揺れている。
窓は、少しだけ開いていた。いつ、開けたっけ。
視線を動かしベッドの上。
「……遥陽」
そこに、いる。目を閉じたまま、微動だにしない。
まるでその姿は……
「……」
音もなく近づき、手を伸ばして肩に触れて少し揺らす。
「遥陽」
返って来ないとわかっていても、毎日呼んでしまう。
「遥陽……」
ピクリとも動かない体。
「……遥陽、俺を恨んでるか?」
横になり続ける遥陽に縋るように膝をつき、もう一度名を読んでから立ち上がり部屋を出ていった。
ツゥと流れた涙に気が付かぬまま。
