また明日


第1地点から少し歩いた所は林の中だった。
その林の中にスタンプ台は無かったが、他班とすれ違ったり一般のお客さんもいる。
ここはどうやら奥地に撮影スポットがあるらしく、女性に人気だ。パワースポットだろうか?

林を抜けると、少し開けた場所に出た。木々の間から暖かな光が差し込む。

中央に、小さな机とスタンプ台。人はまばらで、静かなのがリラックス出来る。
「ここ、楽でいいですね」
斎藤が肩を回す。ずっと写真を撮ってたから少し疲れたらしい。まだ午前だが大丈夫か?

「一個目と違って平和だよな。」
立花がぼそっと言う。
「まだ言ってんのかよ」
不知火が笑った。
「いや別に、そうじゃなくて……ほら、人が多すぎたからさ。」
そのまま前に出て、台の上に紙を広げる。
ぱち、と音が鳴る。浮かび上がる文字。


「二つ目は?」
冬弥の質問。
「…………えっと、「!」かな。」
「場の次は!かよ。」
秋宮と不知火は紙から視線を外すと離れて行った。

「ま、全部集めりゃ分かるって」
軽く流す立花は、地図を鞄にしまう。
「てかさ」
「ん?」


「お前ら、好きなやつとかいんの?」
「「「「は?」」」」
空気が一気に崩れる。斎藤さえも言葉を失って立花を見た。

「急すぎるだろ」
「いいじゃん、暇なんだし」
秋宮の呆れ、立花の苦笑い。確かに男子高校生からしたらここまで何も無かったら飽きてしまう。それに次でお昼の時間になる。1度スタート地点まで戻ってから、また戻ってくるのはめんどうだ。でも、補習だけは嫌だ。
「お前は?」
秋宮が逆に、立花に聞き返す。
「まぁ、いないこともない」
「……出たよ」
立花の答えに不知火がヘッて言う顔をする。
「めんどくせぇ」
どっと笑いが起きる。
「で?」
そのまま視線が、冬弥へと流れる。
「深影は?」
一瞬、間が空いてから冬弥は、少しだけ考えて。
「いるよ」
あっさりと言った。
「え、マジで?」
不知火の驚き、斎藤の首傾げ
「誰?」
3人の声が重なった事で冬弥は視線を逸らして。

「……内緒」
人差し指を口の近くに寄らせそれだけを言う。

「いや気になるだろ!」
「絶対同じ学校ですよね。」
「俺達が知ってるやつ?」
少しだけ笑う冬弥の表情は柔らかい。
その中で「こいつらまじかよ」と若干引き気味になるのは立花。どう考えても冬弥の好きな人って……
ニコッと笑った冬弥に立花は口を閉じた。それ以上は、何も言わない。


スタンプを2つ押した事でそろそろ昼時だと、来た道を戻る中。

「だから、その時にーーー」
「絶対それ脈アリですよ!!」
「ねぇよ!」
笑い声が弾けた。

「この中ならお前が一番怪しいだろ」
「は?なんでです?」
「顔に出てんだよ」

騒がしいやり取り。
続いてたのか、恋バナ。
この間近くの女子校の生徒を助けた斎藤。先日その女子生徒から呼び出しをくらい、お礼のお菓子を貰った後、何度かカフェにお茶をしに行っているらしい。
秋宮は去年、彼女と別れてからはフリーを満喫し、不知火は上に絶対に逆らえない4人の姉がいる為若干女子恐怖症になっている。

その少し後ろ。
冬弥と立花の二人だけ、歩く速度が揃っていた。
声が、わずかに遠い。意識したわけじゃない。気づけば、距離ができていた。
「……御影。さっきの……助かった」
「何の話だ?」
突然のお礼。とぼけるように返す。立花は少しだけ言い淀んで。
「……いや、別に」
小さく笑った。
それでも、何かを言いかけて、飲み込んだのが分かる。
冬弥は、わずかに視線を落とす。
「立花」
「ん?」
少しだけ間を置いて。
「俺たちが見なければ、向こうも見ない」
冬弥の静かな声。まるで、言い聞かせるような。
「……っ」
息が詰まる。思い出してしまったあの視線がよぎり、しれずに拳を握った。

「大丈夫だよ」
「……?」
恐る恐る隣を見る立花。その目は恐怖に揺れていた。
「何も起こらない」
その言葉でスッと何かが落ちた。
これは、安堵か。
「……ああ。」
短く返事した立花だったが、冬弥の影が差した表情に気が付かなかった。

ー……今は。

風が、止んだ。