出月がいなくても、世界は回っていたし、僕だけが取り残されるなんていうロマンティシズムもなかったように思う。
週末に飲みに行く相手と、さして興味もないのに仕事の付き合いでもらった演劇のチケットの消化に付き合ってくれる奇特な友達を失った、ただ、それだけ。
気晴らしにと誘われた異業種交流会。
今にして思えば、大人になって『合コン』と言わない代わりに使い始めた言葉は、てんで異業種ではなく、何なら同業他社くらいの話の通じる食事会だった。
学生時代は年上ばかり、特に仕事ができる大人の女性に憧れて付き合っていた。
だから目に付いたのかもしれない。
少し背伸びをして大人な装いをしながら、言葉や仕草の端々に年相応の可愛らしさが覗く美代、後の妻に。
趣味が合う。
合わない趣味への距離感が好き。
一緒にいると楽しい。
たまに喧嘩をすると、直ぐに仲直りをしたくて仕方ない。
美代と付き合うまでにそう時間は掛からなかったし、付き合ってくれと言う頃には、結婚することを頭のどこか片端に置いていたように思う。
『春日には可愛い感じの子が似合うよ』
時折、頭に浮かぶ声に、聞こえないふりをした。
美代と付き合って2年が過ぎ、そろそろ結婚をと考え始めた頃、大学の旅サー仲間と仕事を共にしたとき、久方ぶりの、あの懐かしい扱いを受けた。
「出月どうしてる?日本戻ってから体調良くないって聞いたけど」
どこに旅したのかも、いつ日本に戻ったのかも、体調が悪いとは何なのかも、全部知らない自分が、腹立たしいとも、寂しいとも違う、何となく歯痒かった。
ただ、旅に出た日だけは、朧げながら僕にもわかった。
「付き合ってみたい」なんて、曖昧な気持ちで出月を斬りつけてしまった日の、きっと後だ。
自分が悪いと殊勝な態度で自責しながら、どこに行けば会えるだろうかと、食い下がっていた僕は、どうしようもなく滑稽で、そのものエゴだったんじゃないだろうか。
*****
週末に飲みに行く相手と、さして興味もないのに仕事の付き合いでもらった演劇のチケットの消化に付き合ってくれる奇特な友達を失った、ただ、それだけ。
気晴らしにと誘われた異業種交流会。
今にして思えば、大人になって『合コン』と言わない代わりに使い始めた言葉は、てんで異業種ではなく、何なら同業他社くらいの話の通じる食事会だった。
学生時代は年上ばかり、特に仕事ができる大人の女性に憧れて付き合っていた。
だから目に付いたのかもしれない。
少し背伸びをして大人な装いをしながら、言葉や仕草の端々に年相応の可愛らしさが覗く美代、後の妻に。
趣味が合う。
合わない趣味への距離感が好き。
一緒にいると楽しい。
たまに喧嘩をすると、直ぐに仲直りをしたくて仕方ない。
美代と付き合うまでにそう時間は掛からなかったし、付き合ってくれと言う頃には、結婚することを頭のどこか片端に置いていたように思う。
『春日には可愛い感じの子が似合うよ』
時折、頭に浮かぶ声に、聞こえないふりをした。
美代と付き合って2年が過ぎ、そろそろ結婚をと考え始めた頃、大学の旅サー仲間と仕事を共にしたとき、久方ぶりの、あの懐かしい扱いを受けた。
「出月どうしてる?日本戻ってから体調良くないって聞いたけど」
どこに旅したのかも、いつ日本に戻ったのかも、体調が悪いとは何なのかも、全部知らない自分が、腹立たしいとも、寂しいとも違う、何となく歯痒かった。
ただ、旅に出た日だけは、朧げながら僕にもわかった。
「付き合ってみたい」なんて、曖昧な気持ちで出月を斬りつけてしまった日の、きっと後だ。
自分が悪いと殊勝な態度で自責しながら、どこに行けば会えるだろうかと、食い下がっていた僕は、どうしようもなく滑稽で、そのものエゴだったんじゃないだろうか。
*****

