月終王竜

黒死白雪(こくしはくせつ)
黒衣の人に助けられ、尻餅を搗く状態の私はと或る違和感を抱く。何故か警戒する事が出来ずに居て、何か可笑しく男性を見た時点で剣は手に持つ。隠す素振りも無く当然の様に堂々と為て、反応する理由には充分な筈です。

記憶を正確に思い返す私は確実に剣を見て居て、反応が出来ずに居た原因は不明と云う事実のみ。『超自然(オカルト)的』な力が働いた、状況から然う非現実な事を思う。男性は黒衣の人に因り距離が開き、近付いて来る様子は無く話し出す。

「二〇一〇年以来だな、愚弟」
「愚弟と呼ぶな、(おれ)故神(こがみ)(れい)だ」

黒衣の人は外見から想像が付か無い程に低い響く声を出し名乗る。故神零と云う姓名(フルネーム)から日本人の様です。

「違うだろう、貴様は俺と同じ『月の吸血鬼』の『王族』で在る『アリュキラド・ザカルベク』だ」

月の吸血鬼、王族? 吸血鬼が実在して居た? (いや)、月の吸血鬼と云うらしい、一般的な吸血鬼と何か違う?

反応する事が出来ずに居た『原因』は月の吸血鬼の能力?  本当に男性が月の吸血鬼なら納得が行く。

ですが故神零と云う人は何故アリュキラドと違う名前を名乗り、男性と敵対して居るのか不明です。
「日本に来た目的は何だ『アルカード・ザカルベク』」

「俺の目的は貴様だが、貴様を見付ける迄に何人も殺した」
「嘘……」

私は言葉を漏らした、私の他に標的(ターゲット)と成る人が何人も居て殺された。

零さんが此の場に来無い場合、私も同様に殺され死んで居た事は確実で、見知らぬ人達が死んだ事実に背筋が凍る。

「……何人を殺した」
零さんは目を細め、怒気を含む声で相手に問う。

(さっき)に話したろう、何人もだ」
「『戦争』が……」

相手は何て事が無く、完全に興味の無い表情で云い話を続ける。

「貴様が『殺した』月の吸血鬼の数と比べれば少ないだろう」
「殺した? 違う」

殺したと云う相手の言葉を零さんは否定します。

「六年前に己等は『生者死者では無い物体』と話した筈だ。己が手前(てめえ)等にした事は『壊す』で『殺す』では無い」

零さんが相手と敵対する理由は、考え方の違い?

「貴様は今も同じ様に俺と逆の事を云うな、俺達は『生者死者な存在』だ」

零さんは相手の言葉を聞き少し沈黙して話し出す。

「……己が月の吸血鬼を『全て』滅ぼす」

「矢張り変わらんか、なら俺は我等が神『エンドレス・エンド』に背く貴様を殺し『最終戦争(ハルマゲドン)』の発生を行う」

エンドレス・エンドと聞き疑問が浮かぶ。神の名前とは思え無い、何方かと云うなら『名称』です。
其れに最終戦争(ハルマゲドン)とは一体……

「『新約聖書』の『約翰(ヨハネ)のの黙示録』に在る世界最後の日に発生する終局戦争で世界の終わり。如何なる何て発生した刻の想像は容易い、何が目的だ」

宗教の戦争を発生と云う事で私は訳が分から無い。目的を聞かれた相手は疑問に思う様子です。

「目的だ何て、貴様も月の吸血鬼ならば分かるだろう?」

零さんは驚く様子で目を少し開く。

「おい……何故『王』と『最終戦争』が結び付く、唯の愚行だ、本気で『終王(ついおう)』に成る事が出来ると思うのか?」

終王とは何か、月の吸血鬼が持つ独自の言葉でしょうか。
「数時間後の零時から丁度『七日間後』に発生させる」

「何を根拠に戯言(たわごと)を云う」
零さんの質問に相手は答える。
「『啓示』と云えばわかるだろう」

(悪魔)』が……

相手の言葉を聞き、零さんが酷く不快な表情と低い声で呟いた。

「七日間で俺と『貴様等』の何方が殺し殺されるかだ」
漸く運命の相手と会えたのに数日で死ぬ何て。

「此の()を巻き込む気か手前(てめえ)……」

「勿論だ、貴様と共に其の娘も殺し、終王の(いしずえ)と為てやる」

嫌です絶対に、然う思い私は立ち上がる。
「御断りします」

零さんが驚いた顔をしますが私は続ける。
「私は必ず生き此の『人』と添い遂げます」
「フッ……ハハハハッ!」

私の言葉に相手は(笑])い出す。
「何を云い出したかと思えば出来る訳が無いだろう。其れに話を聞いて居た筈だ、其奴(そいつ)が俺と同じ存在だと」

「貴方とは違います」
自分でも堂々と思う驚く程の態度と声で其の言《事》を告げた。

「同じだ、何が違う、其奴は人間では無い」
私は直ぐ様に否定します。

「人間です」
私は誰が何と云おうと、必ず彼が人間だと答える。人間と云う以外の答え等は他に無い。

彼が人間だと云う事を誰にも否定させません。

零さん自身にも否定させ無い、何の様な事が或るとしても

「……愚かな人間、貴様の名は何だ」
「スノウ・ホワイト」

私と云う存在を表し、真白の少女が持つ名前です。

「愚かかもしれ無い、ですが私は、私の言葉に後悔は有りません」

「なら精々、其奴と生き苦しめ」
然う云い相手は此の場から跳び去り居無く成る。

零さんは武器を腰の鎖に挿し収め、私の方へ向く。
月明かりに照らされた零さんを見て、私は何か咄嗟に言葉を云う。

「月が綺麗ですね」

何故だか自然に、偶然と出た言葉でした。
言葉を聞く零さんは戸惑う表情から月を見上げた。

「何年振りだろうな、再び見るのは」
私は言葉の意味が分からずに居た。