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伊鈴と付き合ったのは春で、汗ばむ季節になるまでは、大学の近くにある川沿いで座って喋ることが多かった。
「もし川に落っこちたら、俺志乃ちゃん助けられへんわ」
「知ってる。伊鈴、カナヅチやもんね。いつも水泳の授業のあと青ざめてたの覚えてる」
「いやー恥ずい。マジでダサいわ俺」
「うん、ダサかった」
私が笑うと、伊鈴も同じように笑った。
「でも伊鈴が弱ってるのを見たときは、私がこの人を守ってあげたいっていつも思ってた」
私が伊鈴の隣にいたら絶対笑顔にさせるのにって。
「えっ、かっけえ志乃ちゃん。大好き」
「自分でも、良いこと言ったと思った」
「いや、深い愛ですこれは」
確実に私のほうが伊鈴のことを愛していた。
自分のことより、伊鈴のことを大切にしていた。
川沿いで、はじめてキスをした。
通りがかった高校生の男の子たちに高い口笛を吹かれて、とても恥ずかしかったことを忘れられない。
だけどそれよりも、そのときに見た川に映る夜景が、何よりも綺麗だった。



