夕立みたいな恋だった






「うわー……もう、なんで卒業式であいつと話さんかったんやろ」
「ほらあ、後悔してるやん」

大学に無事入学して1週間が経った。
高校の頃の友達と会って話して、やっぱり伊鈴のことが忘れられないと言うと、ため息をつかれてしまった。

風の噂で、伊鈴は第一志望の大学に合格したと聞いていた。そして彼の大学の場所が、私の通う大学ととても近いということが、運命のように感じたのだ。

「大学近いんやし、ご飯誘ってみ。伊鈴、喜んで飛んでくると思うから」
「え〜〜無理。いまさら無理やって」
「何言ってるん。あんたらどう見ても両想いやったやん。ほら早く誘うよ」

友達に背中を押され、明日夜会わない?とLINEを送った。送っちゃったと、バクバクと心臓がうるさい中、すぐに返事が来た。

“え、会う”

ちくしょう、返事がメロい。

「……ふふふふふ」
「志乃、喜びが溢れ出てるって」
「明日なに着よっかな」
「もうるんるんやん」

好き、好きすぎる、伊鈴。
全然諦められなかったのは、1年片想いしたのは、この日のためだったのかもしれない。

恋は盲目の権化となった私は、次の日、伊鈴と約束どおりご飯を食べに行った。
おしゃれなお店でもなんでもない、みんなが知っているようなファミレスだった。

私と伊鈴には、恋愛面で共通点があった。
どちらも高校生になったばかりの頃にひどい思わせぶりをされた経験があり、付き合うための一歩を踏み出すのに臆病になっていたのだ。
彼が以前弄ばれてこっぴどく振られたという話は水面下で有名な話で、そのときのことを彼の口から聞いたのはこの日が初めてだった。

「思わせぶりって、怖いよな」

向かいに座る彼は、私の目を見て言う。
目が合った瞬間に、すぐさま言葉を返した。

「これは思わせぶりやない」

我ながら男前だったと思う。
突然の私の言葉に、彼は数秒困惑していた。

やっと私の意図を察したのか、彼は意を決したように告白してくれた。

「俺、志乃ちゃんのこと結構前から好きやってん」
「……うん、私も」

むず痒い会話に、ドリンクを飲む手が止まらなかった。

「マジか。志乃ちゃんは違うかなって思って、勇気出やんかった」
「……卒業式の日、話しかけてくれなかったくせに」
「だって、あの日志乃ちゃん俺のこと避けるから、嫌われてんのかと思って」
「それは、ごめん」

「え、てか志乃ちゃんが俺の彼女? マジで? やべえ〜!」
「ちょ、伊鈴、声大きいって」
「ごめん! てことでこれからよろしく、志乃ちゃん」


人生でいちばん、ドキドキした日。
勇気を出して、結ばれた日。

伊鈴の唯一になった日だった。