−8624780096666666話 題:凍った未来
雪が降った今日。俺は凛人を助手席に乗せ、軽自動車で道路を走っていた。遊園地の帰りにコンビニで買い物をしてから帰ろうと凛人が提案して、それに俺が乗った形だ。
こなれた手つきでコンビニに駐車する。元々運転のセンスはあったが、駐車だけは完璧にできていなかった昔はもう存在しないものだ。
「着いたぞ。凛人」
「うん…ありがと」
寝ぼけ眼の凛人が見れるなんて、昔の俺が知ったらきっとオーバーヒートで燃え上がっているだろう。
コンビニは相変わらず24時間営業をしていて、こんな夜間にふらっと訪れても許される場所。軽快な入店音が鳴って、気だるげな店員がボソボソ声で「いらっしゃいませ」という言葉が聞こえた。きっと凛人には聞こえていない。
凛人はお菓子やら、サラダ、おにぎりなどを手に取ってかごに入れる。
ふと、俺の目にとまったのは冷気を放ったアイスケースだった。中にはアイスが沢山入っている。限定品や濃厚系のアイスが並んでいる。こんな真冬の時期にアイスは合わない。というのは昔で、今となっては温かい場所で食べるアイスがかなり需要が高いみたいだ。ミーハーだと思われたくはないが、この2個入り大福アイスを凛人とシェアしたいという欲求は抑えられない。
「袋は要りますか?」
「お願いします」
「お会計2568円です」
瞬時にピッタリの額を現金で払う。凛人がかごに入れていた商品の値段は余裕で把握済みだ。
「…ちょうどお預かりします」
若干引いた顔をした気だるげな店員はまたしてもボソボソ声で対応する。
「レシートのお返しです」
「ありがとうございました」
さっさと帰れみたいな圧を感じたので、大人しく温かいコンビニを後にする。
雪が降り注いで、ほんの少し積もったコンクリートの地面を足早に車へ向かう。
「雪、すごいね」
「そうだね」
「君と凄く合っているよ」
「…ありがと」
「……言われ慣れた?」
「全然!」
「夜道を明るく照らしてくれそうな笑顔」
「…初めて言われたなぁ」
その後の照れ顔もまた可愛くて、日々の疲れなんて嘘のように消えていく。もはや一種の薬なのではないだろうか?
「あ…そうだ」
レジ袋を漁って、例のアイスを取り出し、凛人に見せる。
「食べよ」
「そういえば食べたことなかったね。それ」
蓋を開けると、白いもちもちした凛人のほっぺたみたいなアイスが姿を見せた。二人でシェアするに最適なアイスだろう。
「うん!美味しい!」
ピックを突き刺してアイスを口いっぱい頬張った凛人は日に日に可愛さを増している。
「てか、ピック1本か…」
「爪楊枝とかあるか…?」
「口開けて?」
「ん?」
「口、開けて」
正直に開けると、ピックに刺したアイスを口に放り込まれる。ふわふわしていて、程よい冷気が口を包み込む。まるで雲を食べている感覚だ。雲を食べたことはないけれど。
「美味いな」
「でしょ」
「俗に言うシェアハピって言うやつだな」
「それ、チョコとかじゃなかったっけ?」
「今、幸せな気分じゃないのか?」
「…ううん。凄く幸せ!」
ちゃっかり間接キスしていることを昔の俺が知ったら、もう何しでかすか今の脳でも予測出来ない。今日の冬はなんだか昔を思い出す。あの時もそういえば冬の時期で、雪が降っていた日だったか。
そう思っていると、俺はある一つの可能性を凛人にぶつけてみたくなった。
「なぁ、凛人」
「うん?」
既にアイスは食べ終わり、クエスチョンマークを頭に浮かべて俺を見つめる。
「あの時さ…」
「俺の事、殺してたらどうなってたと思う?」
暖房を出すエアコンの音が車内に響き渡る。凛人は少し真剣な顔立ちになって話を始める。
「殺してたら…」
「今頃修は、僕の作った棺の中だね」
「そんなの作ってたのか?」
「うん。昔ああやって決めたときに棺は捨てた」
「で、死んだ修にキスして一緒に寝るかも」
「地下室でずーっと…」
「穏やかに、もう一つの楽園を楽しんでたと思うよ」
「…昔の俺はそれでも良かったって思ってた」
「修は、僕に殺されることすら予測してたんだ」
「ああ、もし殺されたときは」
「凛人の顔見て、微笑む」
「どんなに血が溢れていたとしても」
「仏のような微笑みを浮かべる手筈だったよ」
「ほんと、修は僕の事好きなんだね」
「ははっ」
自然と零れた笑みを浮かべながら、凛人のほっぺたを繊細に触る。食べたアイスと全く同じだ。
「凛人の事好きじゃなかったら」
「俺、多分自殺してるよ」
「あの退屈がずーっと続いていたら」
「死に興味が湧いて死んでたと思う」
「そんな未来にならなくて心底良かった」
頬が動いて、愛らしくも美しいそんな笑顔を見せた。俺の目線は紅い唇にしか向かなかった。
俺の脳がGOサインを出して、凛人の顔を引き寄せてそのまま口づけを交わした。
凍った心も、未来もなくなってしまうように、その唇は暖かった。
雪が降った今日。俺は凛人を助手席に乗せ、軽自動車で道路を走っていた。遊園地の帰りにコンビニで買い物をしてから帰ろうと凛人が提案して、それに俺が乗った形だ。
こなれた手つきでコンビニに駐車する。元々運転のセンスはあったが、駐車だけは完璧にできていなかった昔はもう存在しないものだ。
「着いたぞ。凛人」
「うん…ありがと」
寝ぼけ眼の凛人が見れるなんて、昔の俺が知ったらきっとオーバーヒートで燃え上がっているだろう。
コンビニは相変わらず24時間営業をしていて、こんな夜間にふらっと訪れても許される場所。軽快な入店音が鳴って、気だるげな店員がボソボソ声で「いらっしゃいませ」という言葉が聞こえた。きっと凛人には聞こえていない。
凛人はお菓子やら、サラダ、おにぎりなどを手に取ってかごに入れる。
ふと、俺の目にとまったのは冷気を放ったアイスケースだった。中にはアイスが沢山入っている。限定品や濃厚系のアイスが並んでいる。こんな真冬の時期にアイスは合わない。というのは昔で、今となっては温かい場所で食べるアイスがかなり需要が高いみたいだ。ミーハーだと思われたくはないが、この2個入り大福アイスを凛人とシェアしたいという欲求は抑えられない。
「袋は要りますか?」
「お願いします」
「お会計2568円です」
瞬時にピッタリの額を現金で払う。凛人がかごに入れていた商品の値段は余裕で把握済みだ。
「…ちょうどお預かりします」
若干引いた顔をした気だるげな店員はまたしてもボソボソ声で対応する。
「レシートのお返しです」
「ありがとうございました」
さっさと帰れみたいな圧を感じたので、大人しく温かいコンビニを後にする。
雪が降り注いで、ほんの少し積もったコンクリートの地面を足早に車へ向かう。
「雪、すごいね」
「そうだね」
「君と凄く合っているよ」
「…ありがと」
「……言われ慣れた?」
「全然!」
「夜道を明るく照らしてくれそうな笑顔」
「…初めて言われたなぁ」
その後の照れ顔もまた可愛くて、日々の疲れなんて嘘のように消えていく。もはや一種の薬なのではないだろうか?
「あ…そうだ」
レジ袋を漁って、例のアイスを取り出し、凛人に見せる。
「食べよ」
「そういえば食べたことなかったね。それ」
蓋を開けると、白いもちもちした凛人のほっぺたみたいなアイスが姿を見せた。二人でシェアするに最適なアイスだろう。
「うん!美味しい!」
ピックを突き刺してアイスを口いっぱい頬張った凛人は日に日に可愛さを増している。
「てか、ピック1本か…」
「爪楊枝とかあるか…?」
「口開けて?」
「ん?」
「口、開けて」
正直に開けると、ピックに刺したアイスを口に放り込まれる。ふわふわしていて、程よい冷気が口を包み込む。まるで雲を食べている感覚だ。雲を食べたことはないけれど。
「美味いな」
「でしょ」
「俗に言うシェアハピって言うやつだな」
「それ、チョコとかじゃなかったっけ?」
「今、幸せな気分じゃないのか?」
「…ううん。凄く幸せ!」
ちゃっかり間接キスしていることを昔の俺が知ったら、もう何しでかすか今の脳でも予測出来ない。今日の冬はなんだか昔を思い出す。あの時もそういえば冬の時期で、雪が降っていた日だったか。
そう思っていると、俺はある一つの可能性を凛人にぶつけてみたくなった。
「なぁ、凛人」
「うん?」
既にアイスは食べ終わり、クエスチョンマークを頭に浮かべて俺を見つめる。
「あの時さ…」
「俺の事、殺してたらどうなってたと思う?」
暖房を出すエアコンの音が車内に響き渡る。凛人は少し真剣な顔立ちになって話を始める。
「殺してたら…」
「今頃修は、僕の作った棺の中だね」
「そんなの作ってたのか?」
「うん。昔ああやって決めたときに棺は捨てた」
「で、死んだ修にキスして一緒に寝るかも」
「地下室でずーっと…」
「穏やかに、もう一つの楽園を楽しんでたと思うよ」
「…昔の俺はそれでも良かったって思ってた」
「修は、僕に殺されることすら予測してたんだ」
「ああ、もし殺されたときは」
「凛人の顔見て、微笑む」
「どんなに血が溢れていたとしても」
「仏のような微笑みを浮かべる手筈だったよ」
「ほんと、修は僕の事好きなんだね」
「ははっ」
自然と零れた笑みを浮かべながら、凛人のほっぺたを繊細に触る。食べたアイスと全く同じだ。
「凛人の事好きじゃなかったら」
「俺、多分自殺してるよ」
「あの退屈がずーっと続いていたら」
「死に興味が湧いて死んでたと思う」
「そんな未来にならなくて心底良かった」
頬が動いて、愛らしくも美しいそんな笑顔を見せた。俺の目線は紅い唇にしか向かなかった。
俺の脳がGOサインを出して、凛人の顔を引き寄せてそのまま口づけを交わした。
凍った心も、未来もなくなってしまうように、その唇は暖かった。
