−1659881318話 題:木の葉隠れ
「修って、目良いの?」
そう尋ねるのは、穢れなど一切なく白くて、一際目立つ紅い唇がさらに美しさを増している凛人だった。
「いや、右目0.03左目0.02だ」
俺は知恵を増やす内に目が悪くなってしまった。寝る間も惜しんでいたから当然のことだろう。
「じゃあ、コンタクトしてるんだ」
「…母親が眼鏡を気に入らないみたいでな」
「へぇ……」
「なら、たまにコンタクトして寝てたときあったくない?」
「うん?あぁ。あれは途中で外してたよ」
「えっいつ?」
「凛人が気づかないうちに〜」
「………そっかぁ」
「…あっ。で、何でなの?」
「それは……」
***
小学3年生の時だったか。このあたりからかなり目が悪くなっていて、俺がまだ無神経だった頃でもある。コンタクトをつける時間が惜しいので、着脱が簡単な眼鏡を買ってほしいと頼んだが、母は断った。
「修は、眼鏡よりコンタクトのほうがいいと思うよ?」
「何で?」
「……眼鏡をかけると、賢くなれないんだよ〜」
「…嘘つき。そんなデータどこにも書いてないもん」
「うーん…。眼鏡をかけると印象って凄く変わるの」
「私は、今の眼鏡をかけてない修のほうが可愛くて大好きなんだよ〜」
「…そうなの?」
「うん。お母さん恥ずかしくて、嘘ついちゃった」
「私もまだまだお母さんができてない」
「修はこういう誰かが喜ぶ素直な気持ちは」
「伝えてもいいからね」
温かい抱擁を受けて、幼かった僕の脳にはこの記憶が焼きついた。
***
「っていう」
「ふーん。結局理由はお母さんの言葉ってこと」
「僕は眼鏡でもコンタクトでもしてなくても修のこと大好きだよ?」
「してなかったら凛人の可愛い姿も内面も見れなくなるよ」
この温かい瞬間を俺は徹底的に焼きつけ、味わった。この記憶はずっと味がするガムだろう。
***
「はぁ…」
修にはあんなこといったけど、本当は全然違う理由。勿論、修が眼鏡かけてようがコンタクトしてようが愛すつもりだけど。どうしても駄目な理由がある。
離婚した夫が眼鏡をかけていたから。私の夫は、賢くて、残忍だった。
付き合って間もない頃は私が聞きたくもない、変な勉強の話ばかり聞かされて別れたくても、賢い彼に丸め込まれてグダグダ付き合っていた。そしてある日、嫌がる私を彼は無理やり犯し、子供を授かった。中絶など私は考えなかった、この子は何も悪くないから。そうして産まれたのが修。修が産まれてから夫は別人のように穏やかになり、修に勉強を教えていた。そんな対応に私は酷く嫌悪感を覚え、家の全財産を持ち修を連れて遠いこの場所へ引っ越してきた。
でも、修は彼の賢さを持ちながら、圧倒的な才能を授かっていた。修はまさしく天才だった。そんな修をあの人みたいにはしたくない。だから辛くても修には愛を注ぎ続けるのが私の母親としての使命。
「……自己中なお母さんでごめん……」
「美奈子さん?なんか言った?」
「…なんでもない!ない!」
「ほら、仕事戻るよ!」
暗いところは見せないように。
「修って、目良いの?」
そう尋ねるのは、穢れなど一切なく白くて、一際目立つ紅い唇がさらに美しさを増している凛人だった。
「いや、右目0.03左目0.02だ」
俺は知恵を増やす内に目が悪くなってしまった。寝る間も惜しんでいたから当然のことだろう。
「じゃあ、コンタクトしてるんだ」
「…母親が眼鏡を気に入らないみたいでな」
「へぇ……」
「なら、たまにコンタクトして寝てたときあったくない?」
「うん?あぁ。あれは途中で外してたよ」
「えっいつ?」
「凛人が気づかないうちに〜」
「………そっかぁ」
「…あっ。で、何でなの?」
「それは……」
***
小学3年生の時だったか。このあたりからかなり目が悪くなっていて、俺がまだ無神経だった頃でもある。コンタクトをつける時間が惜しいので、着脱が簡単な眼鏡を買ってほしいと頼んだが、母は断った。
「修は、眼鏡よりコンタクトのほうがいいと思うよ?」
「何で?」
「……眼鏡をかけると、賢くなれないんだよ〜」
「…嘘つき。そんなデータどこにも書いてないもん」
「うーん…。眼鏡をかけると印象って凄く変わるの」
「私は、今の眼鏡をかけてない修のほうが可愛くて大好きなんだよ〜」
「…そうなの?」
「うん。お母さん恥ずかしくて、嘘ついちゃった」
「私もまだまだお母さんができてない」
「修はこういう誰かが喜ぶ素直な気持ちは」
「伝えてもいいからね」
温かい抱擁を受けて、幼かった僕の脳にはこの記憶が焼きついた。
***
「っていう」
「ふーん。結局理由はお母さんの言葉ってこと」
「僕は眼鏡でもコンタクトでもしてなくても修のこと大好きだよ?」
「してなかったら凛人の可愛い姿も内面も見れなくなるよ」
この温かい瞬間を俺は徹底的に焼きつけ、味わった。この記憶はずっと味がするガムだろう。
***
「はぁ…」
修にはあんなこといったけど、本当は全然違う理由。勿論、修が眼鏡かけてようがコンタクトしてようが愛すつもりだけど。どうしても駄目な理由がある。
離婚した夫が眼鏡をかけていたから。私の夫は、賢くて、残忍だった。
付き合って間もない頃は私が聞きたくもない、変な勉強の話ばかり聞かされて別れたくても、賢い彼に丸め込まれてグダグダ付き合っていた。そしてある日、嫌がる私を彼は無理やり犯し、子供を授かった。中絶など私は考えなかった、この子は何も悪くないから。そうして産まれたのが修。修が産まれてから夫は別人のように穏やかになり、修に勉強を教えていた。そんな対応に私は酷く嫌悪感を覚え、家の全財産を持ち修を連れて遠いこの場所へ引っ越してきた。
でも、修は彼の賢さを持ちながら、圧倒的な才能を授かっていた。修はまさしく天才だった。そんな修をあの人みたいにはしたくない。だから辛くても修には愛を注ぎ続けるのが私の母親としての使命。
「……自己中なお母さんでごめん……」
「美奈子さん?なんか言った?」
「…なんでもない!ない!」
「ほら、仕事戻るよ!」
暗いところは見せないように。
