−2463987話 題:命の読書
著:路野えりこ(みちのえりこ) タイトル:知恵の愛
この世界は黒の世界と白の世界に分けられ、互いに世界の均衡を保っていた。お互いの事をあまり知らずに。
そこに一人の黒く聡明で優しい騎士が、白く美しい姫君に恋をしてしまった。
「あぁ、貴女はなんと美しい」
「その美しさに私には届かないのでしょうか」
「それとも、届かないからこそ」
「ただ唯一の美しさなのですか?」
騎士は姫君に思いを馳せ、今日もまた黒の国王を守るため尽力するのであった。
一方、白の姫君も黒の騎士に恋をしていた。
「貴方は勇敢で聡明で、格好良くて」
「優しいお方で」
「あぁ、私が黒の世界に産まれていたなら」
「貴方と過ごせていたのに」
「貴方には届かないのです」
二人は互いの恋に、当たり前に気づいておらず両者は悩んだ。太陽が落ち、月が出るまで。
「「いつか、貴方に届くまで」」
二人の想いは重なっていたのでした。勿論、気づかずに。
***
ある日、黒の騎士は国王に白の世界の姫君の守衛を命じられた。まるで神様が仕組んだような、運命的な展開。黒の騎士は喜んで任務を引き受けた。
その任務は白の姫君が頼んだこととは知らずに。
「白の姫君、貴女様の守衛に参りました」
「…初めまして、黒の騎士さん」
「私、命を賭して貴女をお守りすることをここに誓います」
「ダメよ!」
白の姫君は、命を賭けようとする黒の騎士を止めた。白の姫君は命を賭けてほしくない。
「…命を賭しては駄目、生きて、私を守って」
「仰せのままに」
それから、訪れる灰色の異分子による敵襲を黒の騎士は決死の思いで白の姫君を守った。大切な姫君を守るために黒の騎士は姫君の言葉を反芻し、任務を果たす。
ボロボロになって帰還する黒の騎士を姫君は慈しみ、毎晩治療に勤しんでいた。
「あなたが怪我をすると、私も怪我をした気持ちになるのです」
「それでも、懸命に生きていてくれる」
「貴女は、私の英雄です」
「…私には勿体ないお言葉です」
「いいえ、貴方に相応しいお言葉ですよ?」
「姫君の言葉はちゃんと受け取るのが、騎士の役目なのですよ」
「分かりました。その言葉がより似合う私を目指します」
「いつの日か、貴方が幸せになれますように」
祈りを捧げた白の姫君は自室へと戻り、深い夢の海に落ちた。
***
ある日から、白の姫君は体調が優れなかった。咳を出し、酷い熱にうなされ、黒の騎士は白の姫君のことを心配するあまり、戦いで大怪我を負ってしまった。
二人は苦しんだ。心も体も痛むのだ。
月が出た日に黒の騎士は、白の姫君の部屋へと向かい、側についたのであった。
「貴女の苦しみを、私が全て引き受けたい」
「貴女を苦しませたくない」
「私は、苦しむ人を助ける為に」
「騎士を志したというのに」
姫の手を握り、黒の騎士はまたしても思いを馳せた。
苦しみに耐え抜く日々の中、白の姫君は灰色の呪いを受けてしまったことが分かったのだ。灰色の呪いは白を蝕み、黒を飲み込む。心を石に変えてしまう最悪の呪いでした。
「白の姫君、貴女を守ることが」
「私、騎士の誇りです」
黒の騎士は、古代書に記されていた儀式を行い、呪いから白の姫君を解放した。
「あぁ、ありがとう」
「生きて、私を守ってくれて」
「…申し訳ありません」
「私は灰色の呪いを消したのではありません」
「私に呪いを移したのです」
白の姫君はその言葉を受け入れられない。悲しみ、呪いを戻そうとしますが既に古代書は焼かれ儀式は誰も分からないものとなったのだ。
それでも白の姫君はありとあらゆる医者に黒の騎士を診てもらったが、誰一人として、助けられると言わなかった。
***
殆どを灰色に飲み込まれてしまった黒の騎士に白の姫君は自身の思いを告げる。
「私は、貴方の勇敢で聡明で格好良くて」
「優しい部分に、心を奪われました」
「庭園を歩いていた時の、貴方の姿をみて」
「黒の世界に優しい人はいないと思っていた」
「馬鹿な私はもういません」
「貴方が消えてしまうなんて考えたくない」
「ねぇ、なぜ呪いを移したの?」
黒の騎士はゆっくりと口を開き、白の姫君と同じ気持ちを告げる。
「…貴女の、姿を…見て」
「動物を、慈しんで…騎士の、私…を」
「優しく、看病…してくれ、て」
「私、も…庭園から…見え、た」
「美しい、笑、顔の…貴女の…姿に、」
「私、も心…奪われました」
白の姫君は言葉を聞いて、黒の騎士と同じ気持ちの事を知って涙が溢れ落ちた。
その涙の雫は灰色を吸って濁ってしまうだけで変わらなかった。
「…貴女、の名前は…」
「ミュリア。ミュリア・ライドシア」
「貴方は…なんと言うの?」
「グレアド…マガスディモス」
「…黒の世界の、言、葉で」
「…知恵の、愛、です」
灰色に飲まれ、グレアドの心は石に変わってしまった。ミュリアは涙が枯れるまで部屋で泣いているのでした。
***
「既視感だなぁ」
凛人からもらったこの小説を3日以内に読み切り、そう思った。凛人は、俺に身を挺して守ってほしいと思っているのだろうか。
「それでも、いいよ」
「むしろ、それが正解なのかもね」
明日の感想を俺は長文で考える。
著:路野えりこ(みちのえりこ) タイトル:知恵の愛
この世界は黒の世界と白の世界に分けられ、互いに世界の均衡を保っていた。お互いの事をあまり知らずに。
そこに一人の黒く聡明で優しい騎士が、白く美しい姫君に恋をしてしまった。
「あぁ、貴女はなんと美しい」
「その美しさに私には届かないのでしょうか」
「それとも、届かないからこそ」
「ただ唯一の美しさなのですか?」
騎士は姫君に思いを馳せ、今日もまた黒の国王を守るため尽力するのであった。
一方、白の姫君も黒の騎士に恋をしていた。
「貴方は勇敢で聡明で、格好良くて」
「優しいお方で」
「あぁ、私が黒の世界に産まれていたなら」
「貴方と過ごせていたのに」
「貴方には届かないのです」
二人は互いの恋に、当たり前に気づいておらず両者は悩んだ。太陽が落ち、月が出るまで。
「「いつか、貴方に届くまで」」
二人の想いは重なっていたのでした。勿論、気づかずに。
***
ある日、黒の騎士は国王に白の世界の姫君の守衛を命じられた。まるで神様が仕組んだような、運命的な展開。黒の騎士は喜んで任務を引き受けた。
その任務は白の姫君が頼んだこととは知らずに。
「白の姫君、貴女様の守衛に参りました」
「…初めまして、黒の騎士さん」
「私、命を賭して貴女をお守りすることをここに誓います」
「ダメよ!」
白の姫君は、命を賭けようとする黒の騎士を止めた。白の姫君は命を賭けてほしくない。
「…命を賭しては駄目、生きて、私を守って」
「仰せのままに」
それから、訪れる灰色の異分子による敵襲を黒の騎士は決死の思いで白の姫君を守った。大切な姫君を守るために黒の騎士は姫君の言葉を反芻し、任務を果たす。
ボロボロになって帰還する黒の騎士を姫君は慈しみ、毎晩治療に勤しんでいた。
「あなたが怪我をすると、私も怪我をした気持ちになるのです」
「それでも、懸命に生きていてくれる」
「貴女は、私の英雄です」
「…私には勿体ないお言葉です」
「いいえ、貴方に相応しいお言葉ですよ?」
「姫君の言葉はちゃんと受け取るのが、騎士の役目なのですよ」
「分かりました。その言葉がより似合う私を目指します」
「いつの日か、貴方が幸せになれますように」
祈りを捧げた白の姫君は自室へと戻り、深い夢の海に落ちた。
***
ある日から、白の姫君は体調が優れなかった。咳を出し、酷い熱にうなされ、黒の騎士は白の姫君のことを心配するあまり、戦いで大怪我を負ってしまった。
二人は苦しんだ。心も体も痛むのだ。
月が出た日に黒の騎士は、白の姫君の部屋へと向かい、側についたのであった。
「貴女の苦しみを、私が全て引き受けたい」
「貴女を苦しませたくない」
「私は、苦しむ人を助ける為に」
「騎士を志したというのに」
姫の手を握り、黒の騎士はまたしても思いを馳せた。
苦しみに耐え抜く日々の中、白の姫君は灰色の呪いを受けてしまったことが分かったのだ。灰色の呪いは白を蝕み、黒を飲み込む。心を石に変えてしまう最悪の呪いでした。
「白の姫君、貴女を守ることが」
「私、騎士の誇りです」
黒の騎士は、古代書に記されていた儀式を行い、呪いから白の姫君を解放した。
「あぁ、ありがとう」
「生きて、私を守ってくれて」
「…申し訳ありません」
「私は灰色の呪いを消したのではありません」
「私に呪いを移したのです」
白の姫君はその言葉を受け入れられない。悲しみ、呪いを戻そうとしますが既に古代書は焼かれ儀式は誰も分からないものとなったのだ。
それでも白の姫君はありとあらゆる医者に黒の騎士を診てもらったが、誰一人として、助けられると言わなかった。
***
殆どを灰色に飲み込まれてしまった黒の騎士に白の姫君は自身の思いを告げる。
「私は、貴方の勇敢で聡明で格好良くて」
「優しい部分に、心を奪われました」
「庭園を歩いていた時の、貴方の姿をみて」
「黒の世界に優しい人はいないと思っていた」
「馬鹿な私はもういません」
「貴方が消えてしまうなんて考えたくない」
「ねぇ、なぜ呪いを移したの?」
黒の騎士はゆっくりと口を開き、白の姫君と同じ気持ちを告げる。
「…貴女の、姿を…見て」
「動物を、慈しんで…騎士の、私…を」
「優しく、看病…してくれ、て」
「私、も…庭園から…見え、た」
「美しい、笑、顔の…貴女の…姿に、」
「私、も心…奪われました」
白の姫君は言葉を聞いて、黒の騎士と同じ気持ちの事を知って涙が溢れ落ちた。
その涙の雫は灰色を吸って濁ってしまうだけで変わらなかった。
「…貴女、の名前は…」
「ミュリア。ミュリア・ライドシア」
「貴方は…なんと言うの?」
「グレアド…マガスディモス」
「…黒の世界の、言、葉で」
「…知恵の、愛、です」
灰色に飲まれ、グレアドの心は石に変わってしまった。ミュリアは涙が枯れるまで部屋で泣いているのでした。
***
「既視感だなぁ」
凛人からもらったこの小説を3日以内に読み切り、そう思った。凛人は、俺に身を挺して守ってほしいと思っているのだろうか。
「それでも、いいよ」
「むしろ、それが正解なのかもね」
明日の感想を俺は長文で考える。
