――卒業後、進路が決まらなかった私は、彼氏ができ、妊娠、友達との連絡も遮断されて、結婚をし、出産。育児の日々。一日、一日が必死であった――。
――――――――
――数日雨であり、久しぶりに晴。一人、散歩に出かけ、桜の花びらが、風に、舞う。桜の木に、話しかけた。十分やったよね。左手に、花びらが舞い降りた。
公園から戻り、家に向かう。街の風景も変わった、左右を見渡し、道路も広くなった。ビルも変わった。
私は五〇歳になり、実家に一人で住んでいる。お茶を入れ、押し入れを開け、一冊を取り出す。あれから、三十四年経った。今、思うと、あっという間に過ぎて行った。
高校の卒業アルバムをめくり、あの日に戻って来た、感じがした。二人でとった写真は無い。
彼は卒業アルバムの中だけ。
私は、やるべきことは、やった。子供も幸せになり、孫は、かわいい。お世話をしなくて良いから、気が向いたら、会いに行けば良い。
一人、ソファーで卒業アルバムをめくりながら、使うことが無かった、指定席を買う為のオレンジカード、使用済みのテレフォンカード。
一ページをめくり、彼の写真を指でなぞり、文化祭のブレイクダンス、ライブの写真、最後の厚手には、中途半端な、斜めに書かれた、『い』『こ』の文字……。
ゆっくりと瞳を閉じて、お茶に手を伸ばした……。途中で書き辞めたのではなかった。寄せ書き……電話ゲームでの、逆かさに二文字を言い合った。『い』『こ』は、『恋』クスっと笑いながら、瞳の奥が、熱くなった。
あの時、二文字を言葉に出来ていたら、私は……。
アルバムを閉じて、スマートフォンを見つめる。黒電話を思い出す。名前で検索するが、ネット上には出てこない。あの時の甘い香りは、今も覚えている。ロリータレンピカは、ネットで売っている。少し形が変わったみたいだ。
左手の桜の花びらを、取り、思い出す、キャベツの千切りで、指を切る事は、ありえない。料理は得意。
カラオケボックス、今の時代、電車のコンテナを改良したカラオケ等、無いのだろう。
私が歌った、一緒に歌った、天城越え。あの時、彼に想いは、伝わって、いたのだろうか……。誰にも言えない三年間の思い出、卒業式を思い出した、笑いをとった、ゆく年くる年から始まった、言葉……。
トランプは、一からはじまり、一三枚、ジョーカーをまぜて、三六五日、一年を現すのだったね。卒業式の言葉、大晦日を迎えて、私に言ったのね、一からやり直そう……。
お茶を置いたと同時に、すっと、頬に何かが、零れて行った。言葉のなぞなぞは、相変わらずだなと、微笑みながら――。
三年間伝えられなかった、たった二文字。今の幸せがあるのは、伝える事が出来なかった、言葉や想いの経験があってこそ、子供に言葉で伝える重要性を教えることができ、成長していった。子供も、私も。
お茶を一口。ゆっくりと、瞳を閉じる。
あの人は、今どこで、何をしているのだろう……。
もしも、神様が、一つだけ、願いを聞いてくださるので、あれば、
あの日に帰って、一を選択……。
たった二文字の香りと重さ
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――数日雨であり、久しぶりに晴。一人、散歩に出かけ、桜の花びらが、風に、舞う。桜の木に、話しかけた。十分やったよね。左手に、花びらが舞い降りた。
公園から戻り、家に向かう。街の風景も変わった、左右を見渡し、道路も広くなった。ビルも変わった。
私は五〇歳になり、実家に一人で住んでいる。お茶を入れ、押し入れを開け、一冊を取り出す。あれから、三十四年経った。今、思うと、あっという間に過ぎて行った。
高校の卒業アルバムをめくり、あの日に戻って来た、感じがした。二人でとった写真は無い。
彼は卒業アルバムの中だけ。
私は、やるべきことは、やった。子供も幸せになり、孫は、かわいい。お世話をしなくて良いから、気が向いたら、会いに行けば良い。
一人、ソファーで卒業アルバムをめくりながら、使うことが無かった、指定席を買う為のオレンジカード、使用済みのテレフォンカード。
一ページをめくり、彼の写真を指でなぞり、文化祭のブレイクダンス、ライブの写真、最後の厚手には、中途半端な、斜めに書かれた、『い』『こ』の文字……。
ゆっくりと瞳を閉じて、お茶に手を伸ばした……。途中で書き辞めたのではなかった。寄せ書き……電話ゲームでの、逆かさに二文字を言い合った。『い』『こ』は、『恋』クスっと笑いながら、瞳の奥が、熱くなった。
あの時、二文字を言葉に出来ていたら、私は……。
アルバムを閉じて、スマートフォンを見つめる。黒電話を思い出す。名前で検索するが、ネット上には出てこない。あの時の甘い香りは、今も覚えている。ロリータレンピカは、ネットで売っている。少し形が変わったみたいだ。
左手の桜の花びらを、取り、思い出す、キャベツの千切りで、指を切る事は、ありえない。料理は得意。
カラオケボックス、今の時代、電車のコンテナを改良したカラオケ等、無いのだろう。
私が歌った、一緒に歌った、天城越え。あの時、彼に想いは、伝わって、いたのだろうか……。誰にも言えない三年間の思い出、卒業式を思い出した、笑いをとった、ゆく年くる年から始まった、言葉……。
トランプは、一からはじまり、一三枚、ジョーカーをまぜて、三六五日、一年を現すのだったね。卒業式の言葉、大晦日を迎えて、私に言ったのね、一からやり直そう……。
お茶を置いたと同時に、すっと、頬に何かが、零れて行った。言葉のなぞなぞは、相変わらずだなと、微笑みながら――。
三年間伝えられなかった、たった二文字。今の幸せがあるのは、伝える事が出来なかった、言葉や想いの経験があってこそ、子供に言葉で伝える重要性を教えることができ、成長していった。子供も、私も。
お茶を一口。ゆっくりと、瞳を閉じる。
あの人は、今どこで、何をしているのだろう……。
もしも、神様が、一つだけ、願いを聞いてくださるので、あれば、
あの日に帰って、一を選択……。
たった二文字の香りと重さ
