君が忘れた物語

 あの日から唐突に連絡は途絶え、それ以降一度たりとも会うことは叶わなかった。

 【奏多、元気にしてる?】

 【進路、東京の大学に決めたよ。また会えるといいな】

 【高校を卒業しました。奏多もきっと同じ時期だよね。お互いにおめでとうだね】

 【今日街を出ます。生まれ育った街、奏多と出会った街。寂しい気持ちはあるけどね。今度は奏多と一緒に帰ってきたいな】

 最初のうちは、毎日メッセージを送っていた。けれど、いつになっても返事はなく、一方的だと感じるようになってからは頻度を抑えた。特に大事なことだと思う内容だけを残すように、既読はつかずとも送り続けていた。

 そんな奏多の姿を追うように、私は今、奏多の暮らす街にいる。

 奏多の実家の住所は教えてもらってないけど、暮らしている最寄駅の名前は聞いていたので、安直にも私はそこに住むことにした。奏多を探すのが、上京した一番の目的なのだから。

 もっとも、高校卒業後にこの街に滞在しているかはわからないけど。

 でも、もしも同じ街にいたら、同じ生活圏にいたら。日々を過ごす中で再会できるかもしれない。

 もしかしたら奏多は私に冷めていて、鬱陶しく感じたから連絡を絶ったのかもしれない。

 私のしている行動は、ストーカーまがいのことで、奏多に気持ち悪いと感じられてしまうことかもしれない。

 でも、少しでも私を想う気持ちが残っているなら、またひとりでなにかを抱え込んでひとりになることを選んでいるのだとしたら、私はもう一度会って、話がしたい。

 そのためだけに、ここに来た。

 そう思って東京に住み始めて、気づけば一年が経過していた。

 これまで一度たりとも、奏多の姿を見ることはない。