中学二年生の夏休み明け。ちょうど中学校生活の半ばに差し掛かったところ。
そんな微妙なタイミングで、私のクラスに転校生が来た。その話題で持ちきりな教室内だったけど、私からしたら余計な要素がひとつ無駄に増えるだけ、なんていう認識だ。
「はじめまして、転校生です!」
独特な入りから自己紹介を始めた転校生の名前は、秋岡奏多と言うらしい。
身長は高めで目鼻立ちも整っている。また無造作に流れる重めの前髪が、こんな田舎には不釣り合いだと感じてしまうほど、良い意味で浮いていた。
ただ、浮いていた理由として最もだと思うのは髪型や全体の雰囲気ではなく、その綺麗な顔を覆う眼帯だ。眼帯の辺りをよく見てみると、青黒く変色した肌が見え隠れしていた。
「東京から来ました! 親の転勤で引っ越すことが多いけど、多分卒業まではこの学校にいられると思うので、みんなよろしく!」
物怖じしない口調と、快活な笑顔で、男女問わずに新しいクラスメイトからの印象はすこぶる良いみたいだった。
その勢いのまま、目立ちすぎる眼帯に少し触れると。
「あー、この眼帯気になりますよね。うん、わかる。まあ軽い怪我というか事故というか、良いものを見た代償というか……」
なんて誰に聞かれるでもなく話し始め、続けた。
「みんなびっくりしないでね?」
そう前置きして、眼帯を外すと。
――なにあのアザ"!?
――都会では喧嘩が日常だったりして。
――前の学校でいじめに遭ってたのかな。
――いやいや、虐待なのかも。
なんて、ヒソヒソと話す声が錯綜して教室内を賑やかした。
眼帯をしていても少し見えていたところから察してはいたけど、それは、痛々しすぎるほどの大アザを右眼に貼り付けていた。
そしてそれは、夏休みのある夜の日に、私が原因でできたものだった。
「安心してね、いじめとか虐待とか、そういう意図した傷じゃないから。なんというか、空から俺の目元に星が降ってきたんだよ。びっくりだよね」
あははっ、と心底面白そうに笑う彼を見たみんなも、それに釣られて「星が降ってきてアザ作ってるとか意味わからねー」なんて教室の至る所に笑みが溢れていた。
そんな教室内を満足そうに見回しながら、担任に言われた自分の席を探している彼と目が合う。
――あ。
「あー !!」
私の心の中と、彼の驚きと。反応は一致していた。
私のことを、傷をつけた犯人だと暴露してくるか、なんて最悪のケースを想定しつつ身構えていると、わざとか天然かはわからないけど、アザのある側の眼をちょこんと瞑って、世界一痛々しいウィンクを見せてきた。
――この男、ものすごく苦手だ。
それが、私、春木瑚子が、彼、秋岡奏多に抱いた第一印象だった。
そんな悪い印象だったこともあって、なるべく関わる機会を断とうと決意していたのだけど、それは早々に砕け、その上、第一印象なんてあてにならないのだと知ることになる。
そんな微妙なタイミングで、私のクラスに転校生が来た。その話題で持ちきりな教室内だったけど、私からしたら余計な要素がひとつ無駄に増えるだけ、なんていう認識だ。
「はじめまして、転校生です!」
独特な入りから自己紹介を始めた転校生の名前は、秋岡奏多と言うらしい。
身長は高めで目鼻立ちも整っている。また無造作に流れる重めの前髪が、こんな田舎には不釣り合いだと感じてしまうほど、良い意味で浮いていた。
ただ、浮いていた理由として最もだと思うのは髪型や全体の雰囲気ではなく、その綺麗な顔を覆う眼帯だ。眼帯の辺りをよく見てみると、青黒く変色した肌が見え隠れしていた。
「東京から来ました! 親の転勤で引っ越すことが多いけど、多分卒業まではこの学校にいられると思うので、みんなよろしく!」
物怖じしない口調と、快活な笑顔で、男女問わずに新しいクラスメイトからの印象はすこぶる良いみたいだった。
その勢いのまま、目立ちすぎる眼帯に少し触れると。
「あー、この眼帯気になりますよね。うん、わかる。まあ軽い怪我というか事故というか、良いものを見た代償というか……」
なんて誰に聞かれるでもなく話し始め、続けた。
「みんなびっくりしないでね?」
そう前置きして、眼帯を外すと。
――なにあのアザ"!?
――都会では喧嘩が日常だったりして。
――前の学校でいじめに遭ってたのかな。
――いやいや、虐待なのかも。
なんて、ヒソヒソと話す声が錯綜して教室内を賑やかした。
眼帯をしていても少し見えていたところから察してはいたけど、それは、痛々しすぎるほどの大アザを右眼に貼り付けていた。
そしてそれは、夏休みのある夜の日に、私が原因でできたものだった。
「安心してね、いじめとか虐待とか、そういう意図した傷じゃないから。なんというか、空から俺の目元に星が降ってきたんだよ。びっくりだよね」
あははっ、と心底面白そうに笑う彼を見たみんなも、それに釣られて「星が降ってきてアザ作ってるとか意味わからねー」なんて教室の至る所に笑みが溢れていた。
そんな教室内を満足そうに見回しながら、担任に言われた自分の席を探している彼と目が合う。
――あ。
「あー !!」
私の心の中と、彼の驚きと。反応は一致していた。
私のことを、傷をつけた犯人だと暴露してくるか、なんて最悪のケースを想定しつつ身構えていると、わざとか天然かはわからないけど、アザのある側の眼をちょこんと瞑って、世界一痛々しいウィンクを見せてきた。
――この男、ものすごく苦手だ。
それが、私、春木瑚子が、彼、秋岡奏多に抱いた第一印象だった。
そんな悪い印象だったこともあって、なるべく関わる機会を断とうと決意していたのだけど、それは早々に砕け、その上、第一印象なんてあてにならないのだと知ることになる。



