『俺、頑張りたいって思うことを見つけたんだ』
通話越しに奏多は生き生きとした声でそう言った。高校二年生の後半、もう進路を考え始める時期なのだと、私の心を少し焦らせる。少し会わないうちに奏多は新たな目標を見つけて先に行ってしまう。こういう感覚を痛感するときこそ、この物理的な距離が歯痒くなる。
「なになに、気になる」
『まだ内緒。いつか胸張って言えるようになるから、その時にあらためて聞いてほしい』
ただでさえ目の前のことに真っ直ぐな奏多だけど、そんな人が明確な目標なんて見つけ
てしまったら、それは鬼に金棒だと思う。きっと叶えるし成功するだろうから、私が一番近くでそんな奏多の姿を見ていたいと、当然のように思った。
『瑚子は? 進路どうするとか、考えてるの?』
話の流れとして、ごく自然に私にその質問が飛んでくる。
私のなりたい姿は、そんな成功している奏多を隣で眺めている自分、なのだろうか。
違う、と思った。
奏多の隣にいるのは大前提だ。ただ、それは奏多に頼って生きていくのではない。今は女性も働いて、ひとりでも生きていける時代だ。だからこそ、ひとりでも生きていけるけど、その上で一緒にいることを選びたい、その考え方がしっくりときた。むしろ、やりたいことを思う存分やろうとする奏多を支えられるくらいになっておきたいな、なんて考えが一番の目標にすら思える。
「私も、高校卒業したら上京しようかと思ってるよ。奏多のそばにいたいし、きっとこの街よりもずっと広い世界だろうから、本当の意味でやりたいことが見つかる気がする」
『それいいね。何かあれば俺が支えるよ』
だから東京においで。一緒にいよう。そう続く言葉を容易に想像できた。
「ふふ、私が奏多を支えられるくらいになるのが、今の目標かな」
言ってくれるなー! なんてスマホ越しに笑い合う。でも本当にそう思っている。きっとやりたいことに真っ直ぐな奏多を私は好きになったから、その真っ直ぐさを守れるように、私が支えられるくらいの力をつけたいと。
『じゃあさ、来月会うためのバスはもう予約しちゃってるからあれだけど、その次とか、こっち来てみる?』
奏多の提案の響きは、甘美な意味へと変換して私の耳に届く。
こっちとはつまり、東京のことだ。人が多くて、音も情報も錯綜している場所。あまりいい影響はないからと、頑なに奏多はこっちに来てくれていたけど、そんな奏多から提案してくれたことが嬉しかった。
奏多とひとつになった日以来、私の症状に対して過度に敏感になることをやめてくれたのだ。だからこそ、今は私自身のことを尊重してくれる。
「うん……っ!! 行きたい!!」
『それならまず、ご両親から許可をもらわないとな』
ただでさえ満ち足りている心の中に、未来の楽しみが増えていくなんて、昔の自分には考えられないようなことだった。
強いて言えば、昔には戻りたくないだとか、失いたくないものが増えているだとか、そういった、幸せを実感するまでは知ることのなかった怖さこそあれど、私は今の時間が大切で大好きだ。自分自身や、ずっと私のことを振り回してきたこの症状のことすら、認められてきている。
本当に、奏多の存在の大きさを痛感する。
「また次会えるのが楽しみだねっ」
画面の向こうでは『待ってろよー! 超特急で会いに行くからなー! バスで片道十時間だけど!』なんてわざとらしく言ってくる奏多の声が愛おしくてたまらなくなって、そのままスマホを胸に抱く。
早く会いたいな。早く来月の会う日にならないかな。
そんなことを本気で考えてしまうほど。
なにも心配することなく明日は来て、その次の日も巡ってきて、そうして日を巡りながら会える日を指折り数えていく。
そんな楽しみを待ち焦がれている時間すら楽しくって、それを共有できる奏多がいることが本当に幸せで。
通話越しに奏多は生き生きとした声でそう言った。高校二年生の後半、もう進路を考え始める時期なのだと、私の心を少し焦らせる。少し会わないうちに奏多は新たな目標を見つけて先に行ってしまう。こういう感覚を痛感するときこそ、この物理的な距離が歯痒くなる。
「なになに、気になる」
『まだ内緒。いつか胸張って言えるようになるから、その時にあらためて聞いてほしい』
ただでさえ目の前のことに真っ直ぐな奏多だけど、そんな人が明確な目標なんて見つけ
てしまったら、それは鬼に金棒だと思う。きっと叶えるし成功するだろうから、私が一番近くでそんな奏多の姿を見ていたいと、当然のように思った。
『瑚子は? 進路どうするとか、考えてるの?』
話の流れとして、ごく自然に私にその質問が飛んでくる。
私のなりたい姿は、そんな成功している奏多を隣で眺めている自分、なのだろうか。
違う、と思った。
奏多の隣にいるのは大前提だ。ただ、それは奏多に頼って生きていくのではない。今は女性も働いて、ひとりでも生きていける時代だ。だからこそ、ひとりでも生きていけるけど、その上で一緒にいることを選びたい、その考え方がしっくりときた。むしろ、やりたいことを思う存分やろうとする奏多を支えられるくらいになっておきたいな、なんて考えが一番の目標にすら思える。
「私も、高校卒業したら上京しようかと思ってるよ。奏多のそばにいたいし、きっとこの街よりもずっと広い世界だろうから、本当の意味でやりたいことが見つかる気がする」
『それいいね。何かあれば俺が支えるよ』
だから東京においで。一緒にいよう。そう続く言葉を容易に想像できた。
「ふふ、私が奏多を支えられるくらいになるのが、今の目標かな」
言ってくれるなー! なんてスマホ越しに笑い合う。でも本当にそう思っている。きっとやりたいことに真っ直ぐな奏多を私は好きになったから、その真っ直ぐさを守れるように、私が支えられるくらいの力をつけたいと。
『じゃあさ、来月会うためのバスはもう予約しちゃってるからあれだけど、その次とか、こっち来てみる?』
奏多の提案の響きは、甘美な意味へと変換して私の耳に届く。
こっちとはつまり、東京のことだ。人が多くて、音も情報も錯綜している場所。あまりいい影響はないからと、頑なに奏多はこっちに来てくれていたけど、そんな奏多から提案してくれたことが嬉しかった。
奏多とひとつになった日以来、私の症状に対して過度に敏感になることをやめてくれたのだ。だからこそ、今は私自身のことを尊重してくれる。
「うん……っ!! 行きたい!!」
『それならまず、ご両親から許可をもらわないとな』
ただでさえ満ち足りている心の中に、未来の楽しみが増えていくなんて、昔の自分には考えられないようなことだった。
強いて言えば、昔には戻りたくないだとか、失いたくないものが増えているだとか、そういった、幸せを実感するまでは知ることのなかった怖さこそあれど、私は今の時間が大切で大好きだ。自分自身や、ずっと私のことを振り回してきたこの症状のことすら、認められてきている。
本当に、奏多の存在の大きさを痛感する。
「また次会えるのが楽しみだねっ」
画面の向こうでは『待ってろよー! 超特急で会いに行くからなー! バスで片道十時間だけど!』なんてわざとらしく言ってくる奏多の声が愛おしくてたまらなくなって、そのままスマホを胸に抱く。
早く会いたいな。早く来月の会う日にならないかな。
そんなことを本気で考えてしまうほど。
なにも心配することなく明日は来て、その次の日も巡ってきて、そうして日を巡りながら会える日を指折り数えていく。
そんな楽しみを待ち焦がれている時間すら楽しくって、それを共有できる奏多がいることが本当に幸せで。



