それから、次の日に行われた卒業式を最後に、悠有くんが今現在どうしているのか知る由もない。
卒業式当日は悠有くんと直接的な会話はしなかった。
本当はちょっとだけ、できたらと思っていたけどできなかったのだ。
しなくても、ただ見守る形でいられるだけで十分だったとも思っていた。
中学校生活が呆気なく終わってしまったけれど、そのときの私は満足していたと思う。
私は、悠有くんのことを気になって視線で追い。なにか接点があると嬉しくて、ないと落ち込んで。
胸の鼓動が高なって、小さなことでも馬鹿みたいに浮かれていたけど、当時の私はこれが恋なんだってちゃんと気付けなかった。
今までにない感覚がするってなんとなく自身で感じ取っていたけど明確に知り得なかったのだ。
中学生だった頃の日々を懐かしむように思い出すようになって、ようやく初めて恋だと気がついた。
気がつくのが遅すぎだなって、あまりにも今更すぎる。
あの頃ちゃんと自覚を持っていればなにか変われたのだろうか。それとも、変わらずあのままだったのか誰も知ることができない。
悠有くんは私の初恋であり、青春と呼べる全盛期。
私と彼はただのクラスメイトでしかなく、私だけの一方的で、告白することはなかった。
でも、私の心の中でほのかに残り続ける淡い記憶であり、大切な思い出だ。
君にもし、久しぶりに会う機会があるのなら、大人になった今だったら言えるかもしれない。
――こんな私に恋を教えてくれてありがとう、と。
もしかしたら、それを伝えたくて、心のどこかにある未練がふとした瞬間、夢として嘘の世界線で笑いかける君を見てしまうのかな。
たくさんの花が満開に咲き誇り、薄い桃色の花びらが舞う春を告げる木のようにときめいて。
風に揺られ徐々に花弁が落ちていくように、別れが近づいて。
一瞬にしてすぐに散ってしまうが如く、呆気なくも儚い日々。
戻ることないあの日々を一言で表すとしたら、それは『桜が散るような淡い恋』だった。
〈完〉



