ドアが開くなり、壱太の声が先に飛び込んできた。
「おつかれー。うわ、もう来てたんだ」
「早いですね」
続いて入ってきた司は、部屋の奥を見た瞬間、わずかに眉をひそめた。ソファに座る朔也と、その膝の上に置かれた風呂敷包みを見て、だいたい察したらしい。
「……また何か持ってきたんですか」
「話が早いな」
朔也が気楽に返す。
「褒めてません」
司は即答して、いつもの位置に荷物を置いた。壱太はその横で、興味を隠しきれない顔のまま風呂敷を見つめている。
「え、なになに。今回なんなの?」
「鏡だってよ」
昂夜が先に答える。
「しかも、見たやつがおかしくなる類」
「うわ、分かりやすく嫌だな」
壱太はそう言いながらも、少しだけ身を乗り出した。
「で、まだ開けてないの?」
「昂夜がうるさいから」
「うるさくて結構だ」
低く返す。
司はそのやり取りを聞き流しながら、朔也をまっすぐ見た。
「今回はどういう経路ですか」
「バイト先の常連のじいさん経由。遺品整理で出てきたやつ」
「嫌な予感しかしませんね」
「何人か死んでる家らしい」
朔也がさらりと言うと、壱太の顔がわずかに引きつった。
「それ、さらっと言う内容じゃなくない?」
「でもそういうのでしょ、呪物って」
朔也の返答はあまりにも軽い。
その温度差に、昂夜はまた小さく息を吐いた。
「とりあえず」
司が口を開く。
「開けるなら、撮る前に状況だけ確認します。カメラ越しにどう映るか、光の反射がどれくらい出るか、余計なものが映らないか」
「仕事だなあ」
壱太が感心したように言う。
「そこなんだ」
「そこです」
司はきっぱり返した。
「鏡ならなおさらです。変な映り込みがあると、後から面倒になるでしょう」
その言葉に、昂夜は一瞬だけ視線を落とした。 変な映り込み。 それが起きなかったとしても、別の“面倒”が起きる気がしてならない。
「じゃ、準備してからね」
壱太が空気を変えるみたいに手を叩く。
「いきなり配信じゃなくて、まず中身確認して、ヤバかったらやめる。これならいいでしょ?」
「……確認だけだぞ」
昂夜は念を押す。
「異常があったらそこで終わり」
「はいはい」
返事をしたのは朔也だったが、どこまで本気で聞いているのか分からない。
司は既に機材の位置を確認し始めている。ライトの角度、カメラの高さ、反射の入り方。普段より少しだけ慎重に見えるのは、やはり“鏡”という題材のせいだろう。
「壱太、そこ立たないでください。映り込みます」
「え、もう?」
「準備です」
「はーい」
壱太が素直にどく。
その横で、朔也はようやく風呂敷をテーブルの上に置いた。
畳んだ布越しにも、中の輪郭ははっきりしている。丸みのない、平たい重さ。
昂夜はそれを見つめたまま、無意識に喉を鳴らした。
「……開けるぞ」
朔也が言う。
誰も返事をしなかった。
その沈黙を承知の上で、朔也は布の結び目に指をかけた。するりと解かれた風呂敷が、テーブルの上に広がっていく。
中から現れたのは、黒みがかった古い手鏡だった。
縁に華美な装飾はない。けれど、ひと目で古いものだと分かる落ち着いた鈍さがある。表面はガラス特有の澄んだ反射ではなく、わずかに曇った金属光沢を帯びていた。
「……鏡っていうより」
壱太がぽつりと言う。
「金属板?」
「銅鏡、ですかね」
司が少し身をかがめる。
まだ触れずに、角度を変えて観察している。
「表面はかなり磨かれてますけど、現代の鏡みたいな反射じゃない」
昂夜も視線を落とした。
鏡面には、うっすらと輪郭のぼやけた自分の顔が映っている。はっきりしていないのに、見えているのは分かる。光の加減で背後の部屋も少しだけ映り込んでいた。
それだけだ。
少なくとも今は。
「裏、見てもいいか」
昂夜が言うと、朔也はあっさり鏡を持ち上げた。
裏面には細かな文様が刻まれていた。鶴と松らしき模様。端の方には、名前にも見える小さな刻印がある。
「作ったやつの名前かもな」
朔也が言う。
「……ちゃんとした品なんだろうな」
昂夜は低く返した。
呪いのために最初から作られたものというより、元はただの骨董に近い。それが余計に気味が悪い。
「見た感じ、普通だねえ」
壱太が少しだけ安心したように笑う。
「もっとこう、いかにもヤバそうなの想像してた」
「そういう油断が一番嫌なんですよ」
司がぼそりと返す。
そのまま、仕事の流れで自然に鏡へ手を伸ばした。
「ちょっと確認します」
「おい」
昂夜が止めるより早く、司は鏡を受け取っていた。
両手に収まった銅鏡は、見た目より重そうだった。司は少しだけ眉を動かす。
「……重いですね」
そして、そのまま覗き込む。
ほんの数秒。
いや、数秒より少し長かったかもしれない。
「どうだ」
昂夜の問いに、司は鏡面を見たまま答えた。
「特に……変わったものは映ってません」
声はいつも通りだ。
けれど、目が鏡から離れない。
「司?」
壱太が首をかしげる。
そこでようやく、司ははっとしたように瞬きをして、鏡を少し離した。
「すみません」
小さく咳払いをする。
「ちょっと見づらくて、角度を確認していました」
「何か映ってた?」
「いえ」
司は首を横に振る。
「ただ、表面が曇っているせいで、自分の顔が少し遅れて見える気がして」
「遅れて?」
壱太が反応する。
「なにそれ、嫌だな」
「気のせいでしょう」
司はすぐに言い直した。
「表面の研磨の問題です。古いものですし」
そう言って鏡をテーブルに戻す。
だがその手つきが、ほんのわずかに慎重すぎる気がした。
昂夜はそれを見逃さなかった。
「……本当に何もなかったか」
「はい」
司は短く答える。
「少なくとも、見える範囲では」
その返事に、また少しだけ部屋が静かになる。
朔也だけが、相変わらず気にした様子もなく鏡を眺めていた。
「じゃあ撮る?」
壱太が明るく言う。
「今の感じならいけそうじゃない?」
「配信はやめろ」
昂夜がすぐに言う。
「録画だけにしとけ」
「えー」
「今回はそうしろ」
少し強めの声になる。
壱太は「はいはい」と肩をすくめたが、完全には納得していない顔だった。
「……でもさ」
そこで朔也が、鏡をもう一度持ち上げる。
「むしろ生っぽい方が面白くね?」
「面白さで決めるな」
昂夜の声は低い。
「今の時点で、もう十分嫌な感じしてる」
「俺はしてないけど」
朔也は鏡面をちらと見る。
本当に平然としていた。
「普通の鏡じゃん」
「普通の鏡で、人が何人も死ぬかよ」
「死んだかもしれないってだけだろ」
軽く言い返されて、昂夜は奥歯を噛む。
そのときだった。
司が、ほんの小さく目元を押さえた。
「……司?」
壱太が先に気付く。
「大丈夫?」
「え」
司はすぐ手を下ろした。
「いや、少し目が疲れただけです」
「ほんとか?」
昂夜が問う。
「本当です」
言い切る。
だが、その目はさっきよりわずかに焦点が合いにくそうだった。
気のせいかもしれない。 まだ、そう言える程度の違和感。
それでも昂夜の胸の奥で、小さな棘がもう一つ増えた気がした。
「……今日はここまでにしろ」
低く言う。
「配信はやめろ。撮るにしても録画だけにしとけ」
「なんで」
朔也が不満そうに眉を上げる。
「今の、司も変だっただろ」
「変ってほどじゃないです」
司が先に口を挟んだ。
少しだけ早口だったが、声はいつも通りに整っている。
「目が疲れただけです。照明もありますし」
「でも」
「昂夜さん」
司ははっきり言う。
「気になるなら、なおさら記録は残した方がいいです。何も起きなければそれでいい。起きたなら、後で見返せる」
その言葉に、昂夜は一瞬詰まる。
正論だった。
「ほら」
朔也が軽く笑う。
「司もそう言ってる」
「お前が勝ち誇るな」
低く返す。
壱太は二人の顔を見比べてから、小さく手を上げた。
「じゃあさ、生でやるなら本当に短くしようよ」
「壱太」
「いや、だってさ」
壱太は少しだけ真面目な顔になる。
「配信の方が、見てる側の反応もその場で分かるじゃん。変なコメントが出るなら、それもすぐ拾えるし」
その発想は、いかにも壱太らしい。
昂夜は黙った。
嫌な感じはある。 止めたい気持ちもある。 けれど、確かに“その場の反応”は見たい。
「……十秒だけだ」
ようやく言う。
「鏡面を見せるのは一瞬。嫌なら見ないようにって先に言う」
「お、決まり?」
朔也が口元を緩める。
「決まってねぇよ」
「ほぼ決まったじゃん」
「……司、本当にいけるのか」
最後に確認するように問う。
司は一度だけ瞬きをしてから、頷いた。
「大丈夫です」
少し間を置いて、続ける。
「やるなら、ちゃんと撮ります」
その返答で、流れは決まった。
部屋の空気が、少しだけ動く。
壱太が「じゃあ準備しよっか」と明るく声を上げ、司はすぐに機材の位置を調整し始める。朔也は満足したようにソファに深く座り直し、鏡をテーブルの中央へ置いた。
昂夜だけが、すぐには動かなかった。
曖昧に光る鏡面を見る。
まだ何も起きていない。 そう思おうとするほど、嫌な予感だけが強くなっていく。
「おつかれー。うわ、もう来てたんだ」
「早いですね」
続いて入ってきた司は、部屋の奥を見た瞬間、わずかに眉をひそめた。ソファに座る朔也と、その膝の上に置かれた風呂敷包みを見て、だいたい察したらしい。
「……また何か持ってきたんですか」
「話が早いな」
朔也が気楽に返す。
「褒めてません」
司は即答して、いつもの位置に荷物を置いた。壱太はその横で、興味を隠しきれない顔のまま風呂敷を見つめている。
「え、なになに。今回なんなの?」
「鏡だってよ」
昂夜が先に答える。
「しかも、見たやつがおかしくなる類」
「うわ、分かりやすく嫌だな」
壱太はそう言いながらも、少しだけ身を乗り出した。
「で、まだ開けてないの?」
「昂夜がうるさいから」
「うるさくて結構だ」
低く返す。
司はそのやり取りを聞き流しながら、朔也をまっすぐ見た。
「今回はどういう経路ですか」
「バイト先の常連のじいさん経由。遺品整理で出てきたやつ」
「嫌な予感しかしませんね」
「何人か死んでる家らしい」
朔也がさらりと言うと、壱太の顔がわずかに引きつった。
「それ、さらっと言う内容じゃなくない?」
「でもそういうのでしょ、呪物って」
朔也の返答はあまりにも軽い。
その温度差に、昂夜はまた小さく息を吐いた。
「とりあえず」
司が口を開く。
「開けるなら、撮る前に状況だけ確認します。カメラ越しにどう映るか、光の反射がどれくらい出るか、余計なものが映らないか」
「仕事だなあ」
壱太が感心したように言う。
「そこなんだ」
「そこです」
司はきっぱり返した。
「鏡ならなおさらです。変な映り込みがあると、後から面倒になるでしょう」
その言葉に、昂夜は一瞬だけ視線を落とした。 変な映り込み。 それが起きなかったとしても、別の“面倒”が起きる気がしてならない。
「じゃ、準備してからね」
壱太が空気を変えるみたいに手を叩く。
「いきなり配信じゃなくて、まず中身確認して、ヤバかったらやめる。これならいいでしょ?」
「……確認だけだぞ」
昂夜は念を押す。
「異常があったらそこで終わり」
「はいはい」
返事をしたのは朔也だったが、どこまで本気で聞いているのか分からない。
司は既に機材の位置を確認し始めている。ライトの角度、カメラの高さ、反射の入り方。普段より少しだけ慎重に見えるのは、やはり“鏡”という題材のせいだろう。
「壱太、そこ立たないでください。映り込みます」
「え、もう?」
「準備です」
「はーい」
壱太が素直にどく。
その横で、朔也はようやく風呂敷をテーブルの上に置いた。
畳んだ布越しにも、中の輪郭ははっきりしている。丸みのない、平たい重さ。
昂夜はそれを見つめたまま、無意識に喉を鳴らした。
「……開けるぞ」
朔也が言う。
誰も返事をしなかった。
その沈黙を承知の上で、朔也は布の結び目に指をかけた。するりと解かれた風呂敷が、テーブルの上に広がっていく。
中から現れたのは、黒みがかった古い手鏡だった。
縁に華美な装飾はない。けれど、ひと目で古いものだと分かる落ち着いた鈍さがある。表面はガラス特有の澄んだ反射ではなく、わずかに曇った金属光沢を帯びていた。
「……鏡っていうより」
壱太がぽつりと言う。
「金属板?」
「銅鏡、ですかね」
司が少し身をかがめる。
まだ触れずに、角度を変えて観察している。
「表面はかなり磨かれてますけど、現代の鏡みたいな反射じゃない」
昂夜も視線を落とした。
鏡面には、うっすらと輪郭のぼやけた自分の顔が映っている。はっきりしていないのに、見えているのは分かる。光の加減で背後の部屋も少しだけ映り込んでいた。
それだけだ。
少なくとも今は。
「裏、見てもいいか」
昂夜が言うと、朔也はあっさり鏡を持ち上げた。
裏面には細かな文様が刻まれていた。鶴と松らしき模様。端の方には、名前にも見える小さな刻印がある。
「作ったやつの名前かもな」
朔也が言う。
「……ちゃんとした品なんだろうな」
昂夜は低く返した。
呪いのために最初から作られたものというより、元はただの骨董に近い。それが余計に気味が悪い。
「見た感じ、普通だねえ」
壱太が少しだけ安心したように笑う。
「もっとこう、いかにもヤバそうなの想像してた」
「そういう油断が一番嫌なんですよ」
司がぼそりと返す。
そのまま、仕事の流れで自然に鏡へ手を伸ばした。
「ちょっと確認します」
「おい」
昂夜が止めるより早く、司は鏡を受け取っていた。
両手に収まった銅鏡は、見た目より重そうだった。司は少しだけ眉を動かす。
「……重いですね」
そして、そのまま覗き込む。
ほんの数秒。
いや、数秒より少し長かったかもしれない。
「どうだ」
昂夜の問いに、司は鏡面を見たまま答えた。
「特に……変わったものは映ってません」
声はいつも通りだ。
けれど、目が鏡から離れない。
「司?」
壱太が首をかしげる。
そこでようやく、司ははっとしたように瞬きをして、鏡を少し離した。
「すみません」
小さく咳払いをする。
「ちょっと見づらくて、角度を確認していました」
「何か映ってた?」
「いえ」
司は首を横に振る。
「ただ、表面が曇っているせいで、自分の顔が少し遅れて見える気がして」
「遅れて?」
壱太が反応する。
「なにそれ、嫌だな」
「気のせいでしょう」
司はすぐに言い直した。
「表面の研磨の問題です。古いものですし」
そう言って鏡をテーブルに戻す。
だがその手つきが、ほんのわずかに慎重すぎる気がした。
昂夜はそれを見逃さなかった。
「……本当に何もなかったか」
「はい」
司は短く答える。
「少なくとも、見える範囲では」
その返事に、また少しだけ部屋が静かになる。
朔也だけが、相変わらず気にした様子もなく鏡を眺めていた。
「じゃあ撮る?」
壱太が明るく言う。
「今の感じならいけそうじゃない?」
「配信はやめろ」
昂夜がすぐに言う。
「録画だけにしとけ」
「えー」
「今回はそうしろ」
少し強めの声になる。
壱太は「はいはい」と肩をすくめたが、完全には納得していない顔だった。
「……でもさ」
そこで朔也が、鏡をもう一度持ち上げる。
「むしろ生っぽい方が面白くね?」
「面白さで決めるな」
昂夜の声は低い。
「今の時点で、もう十分嫌な感じしてる」
「俺はしてないけど」
朔也は鏡面をちらと見る。
本当に平然としていた。
「普通の鏡じゃん」
「普通の鏡で、人が何人も死ぬかよ」
「死んだかもしれないってだけだろ」
軽く言い返されて、昂夜は奥歯を噛む。
そのときだった。
司が、ほんの小さく目元を押さえた。
「……司?」
壱太が先に気付く。
「大丈夫?」
「え」
司はすぐ手を下ろした。
「いや、少し目が疲れただけです」
「ほんとか?」
昂夜が問う。
「本当です」
言い切る。
だが、その目はさっきよりわずかに焦点が合いにくそうだった。
気のせいかもしれない。 まだ、そう言える程度の違和感。
それでも昂夜の胸の奥で、小さな棘がもう一つ増えた気がした。
「……今日はここまでにしろ」
低く言う。
「配信はやめろ。撮るにしても録画だけにしとけ」
「なんで」
朔也が不満そうに眉を上げる。
「今の、司も変だっただろ」
「変ってほどじゃないです」
司が先に口を挟んだ。
少しだけ早口だったが、声はいつも通りに整っている。
「目が疲れただけです。照明もありますし」
「でも」
「昂夜さん」
司ははっきり言う。
「気になるなら、なおさら記録は残した方がいいです。何も起きなければそれでいい。起きたなら、後で見返せる」
その言葉に、昂夜は一瞬詰まる。
正論だった。
「ほら」
朔也が軽く笑う。
「司もそう言ってる」
「お前が勝ち誇るな」
低く返す。
壱太は二人の顔を見比べてから、小さく手を上げた。
「じゃあさ、生でやるなら本当に短くしようよ」
「壱太」
「いや、だってさ」
壱太は少しだけ真面目な顔になる。
「配信の方が、見てる側の反応もその場で分かるじゃん。変なコメントが出るなら、それもすぐ拾えるし」
その発想は、いかにも壱太らしい。
昂夜は黙った。
嫌な感じはある。 止めたい気持ちもある。 けれど、確かに“その場の反応”は見たい。
「……十秒だけだ」
ようやく言う。
「鏡面を見せるのは一瞬。嫌なら見ないようにって先に言う」
「お、決まり?」
朔也が口元を緩める。
「決まってねぇよ」
「ほぼ決まったじゃん」
「……司、本当にいけるのか」
最後に確認するように問う。
司は一度だけ瞬きをしてから、頷いた。
「大丈夫です」
少し間を置いて、続ける。
「やるなら、ちゃんと撮ります」
その返答で、流れは決まった。
部屋の空気が、少しだけ動く。
壱太が「じゃあ準備しよっか」と明るく声を上げ、司はすぐに機材の位置を調整し始める。朔也は満足したようにソファに深く座り直し、鏡をテーブルの中央へ置いた。
昂夜だけが、すぐには動かなかった。
曖昧に光る鏡面を見る。
まだ何も起きていない。 そう思おうとするほど、嫌な予感だけが強くなっていく。
