深淵の幼なじみ(決して行ってはいけない廃別荘)

「え?」

至は、今いる荒れ果てた廃別荘にそぐわない間抜けな声を出す。

本当に、理解しがたかったから。

葵が告げた真実で、出来た緊迫した雰囲気も飛んだ。

「えっ…」

至にすぐ分かって貰えたと思いこんでた葵も、直立不動で戸惑う。

しかし…

「あっ、えーっとそうだなぁ…残留思念っていうのは…もっと至に分かり易く噛み砕いて言うと…」

葵は、右手を口元に当てて下を見て、余りオカルトに理解力の無い至の為に優しく真剣に悩む。

するとクスっと、至が笑う。

葵は、怪訝そうに視線を至に向けた。

「あっ…いや…ゴメン…葵って、やっぱクールに見えて優しいなぁって…3年ぶりに会ったけど変わってなくて、俺ちょっと安心した…」

至がニコニコすると、葵は、何だかバツが悪そうに、まるで照れているように視線を横に向けた。

しかし、至には分からん事だらけだし、葵には、さっきは僚の真似をしていたのか?他にも聞きたい事が山のようにあったので…

兎に角、本当に女性達がこの建物にいるなら先に助ける事にして…

葵とは、後でゆっくり一緒に話しをしようと思った。

「よく、分かんないけど、女の人達、ここにいるんだよな?」

至は、ミシッと足音をさせ一歩前へ出た。

しかし…

そこを、又葵が至の左腕を持って止めた。

「ちょっと…待ちやがれ!」

その葵らしからぬ言い方に、至は変な予感に戦慄して、恐る恐る振り返った。

そして、至のそれは正しかった。

葵は一変、又、僚のような目付き、表情になっていた。

「おっ…お前って、今もしかして僚?」

至が呟くと、僚のような葵はニッと笑った。

「よく分かってんじゃん!さっすが至!」

葵の体が、至を抱き締めた。

強く…

「やっぱ、お前だけは…お前だけは、俺達が分かるな…わかってくれるな…」

「俺…達?」

至は体を離し、葵のような僚の顔を見た。

「そう…俺達だ…」

僚は、死んだはずだ…

もう、葵しかいないはずだ…

至は、言ってる事が又訳が分からなくて…

真実かどうかも分からなくて…

ぼーっと見続ける。

そこに、僚のような葵が突然呟き、目の前の広い階段下を指さした。

「至…おばちゃん達を助けに行くのはいいが…その前に、あの階段の前に女がいるの分かってないだろ?」

「女?」

階段の前には、誰もいない。

ただ、上の方の窓から光が差して、その光に埃の細かい粒子が舞っているのしか見えない。

「何?女なんて…見えないよ…もっ、もう止めろよ…そんな事言うの…本当に俺ダメだから」

「それがいるんだよ。黄色のワンピースを着てる」

だが、何度見ても、至るには見えない。

そして、少しヤケになってしまい聞いてみた。

「じゃ、その幽霊、幾つ位の人?かわいい?美人?」

それを聞き葵のような僚は、何を思ったのか?チラっと至を冷めた目で見た。

「お前、そこが気になるわけ?」

「おっ、おお…」

至が引き気味に答えると、僚のような葵は、又ニッと笑った。

「そうだな…若くて、すんげー美人」

「えっ?えっ?本当に?そんなに美人?そんなに?」

単純な至は思わずめちゃくちゃ食いつくと、僚のような葵は不機嫌そうになり言った。

「なら…見てみるか?その美人…」

「え?」

「見せてやるよ…お前に…」

僚のような葵は、あの黒紫色の渦模様のある左手を、今度は至の頭上にポンと置いた。

すると…

至の目の前に…

愛らしい黄色のワンピースを着た、サラサラのキレイな長い黒髪の…

顔から全身、ガイ骨の女がいた。