青春はスクリーンの手前に

 翌日のロケハンは、学校の南側を歩くことになった。

 昨日とは打って変わって、どんよりとした曇り空。
 昼過ぎまで降っていた雨のおかげで道路も濡れている。

「水たまりの反射とか使ったら綺麗そう」
 昨日は思っても口に出せなかったこと。
 それが今日は言えた。

「あー。
 未来に戻るか迷ってるところとかね」

 柊くんがそこから発想を飛ばしてまた次のシーンに繋がっていく。
 その連鎖がすごく面白くて、ゲームみたいに会話が続いた。

「あのね、中盤のタイムパラドックス直後のシーン。カメラのアングルで全然印象変わると思って」
 私は柊くんの腕を引っ張って自分の背後に立たせた。

「ほら見て、例えばこのアングル」

 両手で四角くフレームを作って、ここから少し離れた場所にある校舎をその中に収める。

「これだと、どこか遠くから来た感じが出る。
 でも、真下からのアングルだと中から出てきた感じになると思わない?」

 柊くんは、背中を丸め、私の作ったフレームを覗く。

「ハハ、確かに」

 私は、距離の近さを急に自覚し顔を逸らした。
 すぐに手提げ鞄から映画ノートを取り出す。

「あと…実は昨日、家でルーズリーフのメモ清書したんだ」
「え、マジ」

 すぐに伸びてきた柊くんの右手に思わず半身になる。

「あの、色々書き足したりしてて…私の好みとか、色付けされちゃってるから」
「いいよ保険かけなくて。早く見せて」

 見せる覚悟は決めてきたはずなのに。

「……」

 私はギュッとノートを抱きしめる。

「…さすがに見る権利あると思うんだけど」

 少し圧のある言い方に、手の力を緩めた。

「そ、そうですね…」
 ノートを渡すと、軽く笑われた。

「最後のページだけだから!他のページは見ないで」
 面倒くさそうな「はいはい」という返事がくる。
 器用に最後のページを一発で開くと私を一瞥した。

「ひと晩で書いたの?」
「…うん」
「へぇ」

 柊くんは私からノートに視線を戻し、真剣な顔で中身を読み込み始めた。