青春はスクリーンの手前に

「俺のじいちゃんさ、昔からずっとビデオカメラ回してる人で」

 少しだけ歩く速度が落ちる。

「子供の頃、よく家で一緒に映画も観てたけどさ。
 俺と一緒に寝転んで観てんだよ。あの人」

「えっ」

 驚いて柊くんを見ると、彼は短く笑った。

「まぁ、俺にとってはただの“映画好きのホームビデオじいさん”みたいな?」
 と、ありもしない顎ひげを撫でるような仕草をしてみせた。

「ふ…。なにそれ」
 柊くんらしい表現に、小さく笑う。

「だから、映画に憧れとかあんま無くて」
 
「遊びでやってたい」

 少し間を置いてそう言った彼の横顔が、なぜか引っかかった。

「…そっか」

 ぽつりと相槌をした私に、柊くんは僅かにトーンを上げた。

「前から思ってたけど。
 楠木さんって俺にじいちゃんのこと聞いてこないよね」

 突然の指摘に、また歩くリズムが崩れる。

「え?あ、いや…べつに、気を遣ったとかじゃなくて。柊保監督の作品は映画ノートでも分析してたからそれ以上に聞くこともないっていうか、私が接しているのは柊くんっていうか…」
 と、早口で喋り出した私を彼はいつものように笑った。

「何。照れた時もスイッチ入んの?」
「…知らないよ」

 雲が晴れて、太陽が見え隠れする。
 そんな空を見上げて目を細めた。

「戻りますか」

 同じように見上げていた柊くんが言った。
 そのまま私を見下ろし、目を細める。

「…うん」

 その表情に、なぜか目を逸らしたくなった。