俺以外を見るのは許さないから

「塩原、この間つけられてたってのは、本当だったんだろ?」
 電話をかけて第一声でその台詞を吐くと、塩原が息を飲むのが分かった。
「なんで……」
「勘だ。今からそっちに行く」
「駄目だよ」
「行くからな」
 塩原が拒もうとするのを無視して、俺は電話を一方的に切り、真介に頷いた。
「行こう」
「ああ」
 俺は真介と共に、塩原の自宅に向かった。
「でも、見つけ出すってどうやって?」
「簡単だ。奴は今でも塩原の近くで見張っているに違いないから、お前が近づけばすぐに出てくるはずだ」
「危険じゃないのか?」
「それも承知の上だろ?」
 真介は愉しげに笑う。
 俺はそれに勇気づけられ、頷いた。
「そうだな。ビビってられないな」
 自分の両頬を叩き、気を引き締めたところで、塩原の自宅付近に辿り着いた。
 すると、電柱の影にどこか見覚えのある男が立っているのが分かった。
「あれは」
 誰だったか?
 俺が記憶を手繰り寄せようとした時、真介が走り出す。
「え、おい!」
 俺も後に続いて走るが、真介には追いつけず、目の前で真介がその男に蹴りを入れるのを見守るしかなかった。
「っ……!に、しやが……!?」
 その男は髪色を派手に染めていて、いかにも柄が悪そうな風貌をしていたが、真介を目にした途端にざっと顔を蒼くする。
「?」
 一瞬疑問が生じたが、真介が男を取り押さえるのを見て、その見事な手捌きに吹き飛んだ。
「こっちは平気だから、塩原のとこに行ってやれ」
 顎で示されて、俺は一つ頷くと、塩原の自宅のインターホンを押そうとし、本人が既に外に出ていることに気がついて動きを止める。
「あ、塩原」
「……」
「塩原、もう大丈夫だから」
 俺が安心させるように笑うと、塩原は予想を裏切る態度に出た。
「帰って」
「え……?」
「帰って!もう、私に関わらないで」
 睨み付けるようにそう言うと、塩原は自宅に戻っていき、ドアを思い切り閉めた。
 俺は呆然とした後に、慌てて外から呼びかける。
「塩原?塩原!どうしたんだよ!何でなのか言ってくれ!」
 だが、いくら呼びかけても、塩原が出てくることはなかった。