「そう……。だから……そうなのね」
雨脚が強まり、完璧に施されていたメイクが落ちるのも厭わずに塩原はそう言うと、なぜか可哀想なものを見るような目で俺を見る。
「赤池君。後悔、しないようにね」
「え?塩原、どういう……」
塩原は俺の言葉には答えずに、スマートフォンを操作しながら歩き去った。
俺はどうしてか分からないが、塩原の言葉の意味を知ってはいけない気がして、追いかけることもできなかった。
「凌平」
塩原の後ろ姿をぼんやりと眺め続けていると、向こう側から一人の男が走り寄ってきて塩原に傘を差してあげるのが見えた。
「凌平」
俺は遠くに歩いていく二人の背を見つめる。
未練があるわけではないはずだが、終わり方が良くなかっただけに、もっといい方法があったんじゃないかと、考えて……ーー。
「凌平!」
真介の声にびくりとして振り向くと、濡れそぼった髪をそのままに、真介が顔を近づけてくる。
あ。キス、される。
そう思ったのに、俺は身動きが取れなかった。
真介が俺の顎を掴み、睨むような目つきで俺に口付けてくる。
なんて目で、してくるんだよ。
俺は笑いたくなったが、次に真介が放った台詞で笑いは吹き飛ばされた。
「見るなよ。俺以外を、見るな」
好きだとか、愛してるとか言われるよりも、殺されそうな目で言われる方が背筋が震えるなんて、俺もどうかしている。
唇を解かれ、抱き寄せようとしてきた真介の胸を押した。
「凌平」
「行くぞ。講義、始まる」
俺はそのまま踵を返して大学の方へと歩き始める。
真介は、なかなか後を追ってこようとはしなかった。
雨脚が強まり、完璧に施されていたメイクが落ちるのも厭わずに塩原はそう言うと、なぜか可哀想なものを見るような目で俺を見る。
「赤池君。後悔、しないようにね」
「え?塩原、どういう……」
塩原は俺の言葉には答えずに、スマートフォンを操作しながら歩き去った。
俺はどうしてか分からないが、塩原の言葉の意味を知ってはいけない気がして、追いかけることもできなかった。
「凌平」
塩原の後ろ姿をぼんやりと眺め続けていると、向こう側から一人の男が走り寄ってきて塩原に傘を差してあげるのが見えた。
「凌平」
俺は遠くに歩いていく二人の背を見つめる。
未練があるわけではないはずだが、終わり方が良くなかっただけに、もっといい方法があったんじゃないかと、考えて……ーー。
「凌平!」
真介の声にびくりとして振り向くと、濡れそぼった髪をそのままに、真介が顔を近づけてくる。
あ。キス、される。
そう思ったのに、俺は身動きが取れなかった。
真介が俺の顎を掴み、睨むような目つきで俺に口付けてくる。
なんて目で、してくるんだよ。
俺は笑いたくなったが、次に真介が放った台詞で笑いは吹き飛ばされた。
「見るなよ。俺以外を、見るな」
好きだとか、愛してるとか言われるよりも、殺されそうな目で言われる方が背筋が震えるなんて、俺もどうかしている。
唇を解かれ、抱き寄せようとしてきた真介の胸を押した。
「凌平」
「行くぞ。講義、始まる」
俺はそのまま踵を返して大学の方へと歩き始める。
真介は、なかなか後を追ってこようとはしなかった。


