真介と俺は無事に合格し、大学の入学式を迎えた。
俺は希望だけを胸にホールに入ったところで、背後から聞き覚えのある声に呼び止められる。
「あれ?真介?」
振り向いた俺は、心臓が握り込まれるような感覚を抱いた。
「か……影、鷹……」
「久しぶりだな。元気だったか?」
影鷹は何事もなかったかのようにして、俺に近づいてくる。
「元気……というか……」
「何だよ、よそよそしいな。入学式の後、一緒に飯でも行こうぜ。話したいこともあるし。な?」
腕を肩に回してくると、影鷹は囁いた。
「あの時のこと黙っていてやったから、俺と付き合ってくれるよな?」
「っ……」
影鷹の手が俺の下腹に触れ、ぐるりと円を描く。
ぞわりと鳥肌が立ち、振り払おうとした時、誰かが影鷹の体を引き離してくれた。
「真介……」
俺は救世主の正体にほっとして、笑みを向ける。
影鷹は真介を睨み付けると、舌打ちしながら立ち去った。
「ありがと」
「あいつも入学したのか。厄介だな」
影鷹が立ち去った方向を見据える真介の目は、射殺しそうなほど鋭い。
「式、始まりそう。ほら、行こう」
俺は真介の意識を逸らすべく、腕を掴む。
そうしなければいけない気がした。
俺は俺で影鷹のことが気がかりではあったが、流石に専攻までは違うだろうし、学内の生徒は多いため今は気にしないように努めることにした。
式を無事に終えると、サークルの勧誘が始まり、俺は後でじっくり選ぼうとチラシを受け取って回る。
「あ、どうもありがとうございます。考えときます」
一つ一つにそう笑顔で応えていると、横にいた真介がボソリと言った。
「マメだな」
「まあな、最初が肝心だから」
「あんまり愛想振り撒くと、後が怖いぞ」
「え?」
意味を問おうとした時、唐突に真介が俺の肩に手を回し、引き寄せてきた。
突然だからというのもあったが、その瞬間に風に乗って漂ったムスクの香りに、勝手に心が騒ぐ。
俺、何で男相手に。
なんとか動揺を鎮めようとしているうちに、真介が囁く。
「向こう、見えるか?あいつがこっちを見てる」
言われて顔を上げれば、人垣の向こうに影鷹の姿が見えた。
こちらをじっとりと見つめている目に、俺は嫌な汗が浮かぶ。
「とにかく、できるだけくっついて歩け」
「え?なん……」
理由を問う前に、真介は強引に俺の手を掴むと、恋人同士がするように握る。
「ちょっと……」
「いいから。この方が欺けるだろ」
「欺けるって、え?」
「だから、俺と付き合ってると思わせたらいい」
「付き合ってる、て、俺と真介が?」
俺は動揺のあまり、大きい声を上げてしまう。
「しっ、気づかれた。近づいてくる」
真介の言う通り、離れた距離にいた影鷹がどんどん近づいてくるのが分かった。
この後は門から出て帰るだけなのに、反対方向に歩いてくることで、はっきりとその目的が見える。
「走るぞ」
「えっ、ちょっと……!」
俺は真介と手を繋いだまま、門の方へと走り抜けた。
背中に影鷹の視線が張り付いているような気味の悪さを感じながら。
俺は希望だけを胸にホールに入ったところで、背後から聞き覚えのある声に呼び止められる。
「あれ?真介?」
振り向いた俺は、心臓が握り込まれるような感覚を抱いた。
「か……影、鷹……」
「久しぶりだな。元気だったか?」
影鷹は何事もなかったかのようにして、俺に近づいてくる。
「元気……というか……」
「何だよ、よそよそしいな。入学式の後、一緒に飯でも行こうぜ。話したいこともあるし。な?」
腕を肩に回してくると、影鷹は囁いた。
「あの時のこと黙っていてやったから、俺と付き合ってくれるよな?」
「っ……」
影鷹の手が俺の下腹に触れ、ぐるりと円を描く。
ぞわりと鳥肌が立ち、振り払おうとした時、誰かが影鷹の体を引き離してくれた。
「真介……」
俺は救世主の正体にほっとして、笑みを向ける。
影鷹は真介を睨み付けると、舌打ちしながら立ち去った。
「ありがと」
「あいつも入学したのか。厄介だな」
影鷹が立ち去った方向を見据える真介の目は、射殺しそうなほど鋭い。
「式、始まりそう。ほら、行こう」
俺は真介の意識を逸らすべく、腕を掴む。
そうしなければいけない気がした。
俺は俺で影鷹のことが気がかりではあったが、流石に専攻までは違うだろうし、学内の生徒は多いため今は気にしないように努めることにした。
式を無事に終えると、サークルの勧誘が始まり、俺は後でじっくり選ぼうとチラシを受け取って回る。
「あ、どうもありがとうございます。考えときます」
一つ一つにそう笑顔で応えていると、横にいた真介がボソリと言った。
「マメだな」
「まあな、最初が肝心だから」
「あんまり愛想振り撒くと、後が怖いぞ」
「え?」
意味を問おうとした時、唐突に真介が俺の肩に手を回し、引き寄せてきた。
突然だからというのもあったが、その瞬間に風に乗って漂ったムスクの香りに、勝手に心が騒ぐ。
俺、何で男相手に。
なんとか動揺を鎮めようとしているうちに、真介が囁く。
「向こう、見えるか?あいつがこっちを見てる」
言われて顔を上げれば、人垣の向こうに影鷹の姿が見えた。
こちらをじっとりと見つめている目に、俺は嫌な汗が浮かぶ。
「とにかく、できるだけくっついて歩け」
「え?なん……」
理由を問う前に、真介は強引に俺の手を掴むと、恋人同士がするように握る。
「ちょっと……」
「いいから。この方が欺けるだろ」
「欺けるって、え?」
「だから、俺と付き合ってると思わせたらいい」
「付き合ってる、て、俺と真介が?」
俺は動揺のあまり、大きい声を上げてしまう。
「しっ、気づかれた。近づいてくる」
真介の言う通り、離れた距離にいた影鷹がどんどん近づいてくるのが分かった。
この後は門から出て帰るだけなのに、反対方向に歩いてくることで、はっきりとその目的が見える。
「走るぞ」
「えっ、ちょっと……!」
俺は真介と手を繋いだまま、門の方へと走り抜けた。
背中に影鷹の視線が張り付いているような気味の悪さを感じながら。


