*
駅前は朝から賑わっていた。
色とりどりの花輪が並ぶカフェの前には、若い女の子たちの行列ができている。その横を通り過ぎながら、馴染みの本屋へ向かった。
大通りの角に店を構えるやなせ書房が目に入ると、無意識にそっと胸元に手を置いていた。
手のひらに触れるのは、伊坂さんから送られてきたネックレスだ。あれから、毎日つけている。
やなせ書房は、伊坂さんと出会った本屋だった。
最初の出会いは、入り口ですれ違っただけだった。なんとなく視線を感じて振り返ったら、彼が私を見ていた。
その時はちょっと首をひねってその場を離れた。お話やの客だろうかと思ったが、どうにも思い出せなかったのだ。
翌週、注文していた本を取りにやなせ書房へ行くと、レジに伊坂さんが並んでいた。彼の後ろに並ぶと、店員が常連客の私に気付いて、声をかけてくれた。
『日高さん、ちょっと待っててくださいね』
そのとき、伊坂さんが私を振り返った。
やっぱりお話やの客なんだろうか。話しかけようかと迷っているうちに、店員に呼ばれた。
店員が『こちらの本ですね。ご確認お願いします』とカウンターに本を置いた。スタープリンセスの改訂版だった。その本と私を交互に見た伊坂さんは、会計を終えるとレジから少し離れて立っていた。
私を待ってるのかもしれない。そう思って、本を受け取った後、伊坂さんへ歩み寄った。すると、彼は気まずそうな笑みを浮かべた。
『失礼ですけど、私に何か?』
すごく勇気がいったけど、私から話しかけた。伊坂さんの優しそうな雰囲気が、私の背中を押したのかもしれない。
『あ、ええーっと、どこかでお会いしたことあるかな、とか思って』
伊坂さんはたどたどしくそう言った。
男性慣れしていない私にとって、彼の態度はホッとできるものだった。彼も女性慣れしていないように思えたのだ。
『私もそう思ってたんです』
『あなたも? 奇遇だな』
『でも、どこでお会いしたのか思い出せなくて。もし、うちのお客さまだったら、ほんとに失礼なんですけど……』
『お店をやられてるんですか?』
伊坂さんはちょっと驚いたように言った。
お話やの客じゃないかもしれない。だとしたら、どこで会ったのだろう。不安が頭をもたげながらも答えた。
『八福寺商店街で雑貨店を』
『八福寺商店街……そうでしたか。俺もよく行くから、じゃあ、もしかしたらそこで』
『かもしれませんね。……あっ、ごめんなさい。ご用でなければ大丈夫なんです。いきなり声かけたりしてごめんなさい』
何を話してるんだろう、とハッとして、頭を下げた。逃げ出すように離れたら、彼に呼び止められた。
『やなせ書房には、よく?』
『そうですね』
『月曜日に?』
伊坂さんに出会ったこの二回は、月曜日だった。
『お店の定休日なので』
『俺も月曜日によく来ます。またお見かけしたら、声かけますね』
その日はそれで別れた。
翌週、特に用事はなかったが、やなせ書房へ出かけた。伊坂さんはいた。私を見つけると、声をかけてくれた。
先週購入した本って、昔に発売されてた本じゃなかったでしたっけ? と問われ、スタープリンセスの話になった。
彼と同世代だということがわかり、名前を伝え合うぐらいには仲良くなった。そして帰り際、カフェへ誘われた。
『ここからちょっと離れてるんですけど、デパートに新しくオープンしたカフェがあるんです。よかったら、一緒に行きませんか?』
『カフェ・ド・シュシュですよね。たしか、去年の5月にオープンした』
『去年だったかな。全然新しくないですね』
恥じるように顔を赤らめた伊坂さんは、とても好青年に見えた。だから私も、彼の誘いを受けることにした。
『去年でも、じゅうぶん新しいです。月曜日か木曜日なら、いつでも』
そう言うと、伊坂さんは十二日の木曜日にしましょうと言った。月曜日は病院の予約があるからということだった。
『どこか具合でも?』
失礼かなと思いながら尋ねると、彼は『ただの検診です』と笑った。
それが、彼との最後の会話だった。
また会える。そう思っていたのに、その機会は二度と来なかった。
ぎゅっと胸元を握りしめたとき、目の前に人影が現れた。
ハッとする。伊坂さんかも。そんな風に思って顔を上げると、見知った青年が微笑んでいた。久保さんだった。
「やっぱりお話やさんでしたか。今日はお店、休みですか?」
久保さんはにこやかに話しかけてくる。
「ちょっと用事があって、お店は姉に。久保さんこそ、お店は?」
「そこのカフェが気になって、ちょっとだけ閉めてきました」
久保さんは行列のできているカフェを指差す。
「混んでますよね。すごく待つかもしれませんよ」
とてもすぐには入店できそうにない。お店をちょっとだけ閉めてきた久保さんには、ハードルが高そうに見える。
「ですね。やっぱり人気ですね、カフェ・ド・シュシュは」
「え? シュシュ?」
「知りませんでしたか? そこのカフェ、カフェ・ド・シュシュの姉妹店で、リリーカフェっていうんですよ。シュシュは先日、お話やさんが中をのぞいてた……」
久保さんはそう言いかけて、気まずそうに口をつぐんだ。のぞくだなんて、いやらしい響きが私を傷つけたとでも思ったのだろう。
「のぞいてましたね、私」
くすっと笑ったら、久保さんは安堵した表情を見せる。
「入ります?」
「え?」
「シュシュと同じメニューはないかもしれないですけど」
「……あ、いえ。入りたくてのぞいてたわけじゃないので」
じゃあ、なんでのぞいていたのか。と言わないばかりに、久保さんは奇妙な顔をする。
「どなたかと、待ち合わせでも?」
久保さんが探るように尋ねてくる。
どう答えたものか。と悩んでいると、彼の視線が私の首もとへ落ちた。
「お話やさん、ネックレスされるんですね」
ブラウスの隙間から見えるチェーンを目ざとく見つけたようだ。細かいことを見ている人なのだと思ったが、すぐに職業柄だろうと思い直した。
「……いただきものなんです。普段はあまりアクセサリーはつけなくて」
自分で購入したと言おうか迷ったが、正直に答えた。嘘をついたらついたで、久保さんのお店で買わなくて申し訳ないと、謝ることになりそうだと思ったのだ。
「あ、いや、意外だとかそういうつもりはなくて。……なんか、失礼な言い方したな、俺」
久保さんは後ろ頭に手を置いた。
「あんまりおしゃれしてない自覚はありますから」
「そういうつもりでは。どんなネックレスなんですか?」
話をそらすように彼は尋ねた。
「実は……、星の形のネックレスなんです。ちょっと若い子向けみたいで、私に似合うかわからないんですけど」
胸元からネックレスを引っ張り出す。すると、久保さんの指がそっと伸びてきて、ネックレスのスターに触れた。
どきっとした。彼は普段からお客さんの胸元を見慣れているのかもしれない。だけど、私は違う。大きく息を吸って吐いたら胸が上下して、彼の指に触れてしまうのではないかと、ますますどきどきした。
「若い子向けだなんて、全然。よくお似合いです」
「ありがとうございます」
少し後ろに下がって、久保さんから離れる。彼も何か察して、すぐに手を引っ込めた。
「好きな男性からのプレゼントですか?」
「……ち、違います」
あわてて否定したものの、顔は真っ赤だろう。恋に恋する夢見がちな年頃はとうに過ぎたのに、簡単に動揺してしまって、恥ずかしくてたまらなかった。
「そうなんですね」
否定したことをあっさり認めたのか、私の態度から察して、好きな人がいるんですね、と言ったのか、どちらとも取れるような声音で彼はそう言った。
「お友だちからいただいたんです」
苦しまぎれに言うと、久保さんを見上げた。私の胸はどきりと跳ねた。やや冷めたような表情で、彼は私を見つめていたのだ。
「ほんとに、違うんです」
どうして念を押してしまったのか。
伊坂さんは優しい人で、好感も持てた。だから、カフェのお誘いも受けたし、ネックレスのプレゼントも純粋にうれしかった。
しかし、久保さんの前では、そんな潔白な気持ちにもやましさがあるように思われたくなかった。
「その彼は、否定されたくないかもしれないですよ」
きっぱりと答えた彼の表情は、思いがけず、固かった。
「男性がプレゼントするなんて、そういうことです」
ネックレスのスターに、射抜くような視線を向けられ、とっさに手のひらの中に隠した。
違う。伊坂さんと私の関係を誤解されたくない。今度ははっきりとそう思った。
「彼とは何回か偶然にお会いしただけで、これもただのお詫びで……。彼の気持ちを否定してるわけじゃありません。でも、彼が言わないことを勝手に解釈して、都合良く受け取るなんて、それこそ彼に失礼だと思います」
伊坂さんが私を好きになるわけない。
地味で、美人でもない私のどこにも、男性の気を惹く魅力なんてない。
じっとうつむく私を、久保さんがどんな目で見てるのかわからなかった。むきになったりして、ほんとに私はだめな女だろう。
「日高さんはほんとに優しいですよね」
なぜ、優しいなんて言えるのか。驚いて顔を上げた。彼はあきれ顔だった。
「おそらく、彼は喜んでますよ。でもなんか、ほんとに……」
久保さんはどことなく皮肉げに笑った。
「いや、日高さんがいい人すぎて驚いたっていうか。偶然出会ったなんて言うけど、偶然って、簡単に作り出せるんですよ」
ぽかんとする私を見て、彼はますます声を立てて笑う。こんなにも快活に笑う人だったのかと、思わずその笑顔に見惚れてしまった。
駅前は朝から賑わっていた。
色とりどりの花輪が並ぶカフェの前には、若い女の子たちの行列ができている。その横を通り過ぎながら、馴染みの本屋へ向かった。
大通りの角に店を構えるやなせ書房が目に入ると、無意識にそっと胸元に手を置いていた。
手のひらに触れるのは、伊坂さんから送られてきたネックレスだ。あれから、毎日つけている。
やなせ書房は、伊坂さんと出会った本屋だった。
最初の出会いは、入り口ですれ違っただけだった。なんとなく視線を感じて振り返ったら、彼が私を見ていた。
その時はちょっと首をひねってその場を離れた。お話やの客だろうかと思ったが、どうにも思い出せなかったのだ。
翌週、注文していた本を取りにやなせ書房へ行くと、レジに伊坂さんが並んでいた。彼の後ろに並ぶと、店員が常連客の私に気付いて、声をかけてくれた。
『日高さん、ちょっと待っててくださいね』
そのとき、伊坂さんが私を振り返った。
やっぱりお話やの客なんだろうか。話しかけようかと迷っているうちに、店員に呼ばれた。
店員が『こちらの本ですね。ご確認お願いします』とカウンターに本を置いた。スタープリンセスの改訂版だった。その本と私を交互に見た伊坂さんは、会計を終えるとレジから少し離れて立っていた。
私を待ってるのかもしれない。そう思って、本を受け取った後、伊坂さんへ歩み寄った。すると、彼は気まずそうな笑みを浮かべた。
『失礼ですけど、私に何か?』
すごく勇気がいったけど、私から話しかけた。伊坂さんの優しそうな雰囲気が、私の背中を押したのかもしれない。
『あ、ええーっと、どこかでお会いしたことあるかな、とか思って』
伊坂さんはたどたどしくそう言った。
男性慣れしていない私にとって、彼の態度はホッとできるものだった。彼も女性慣れしていないように思えたのだ。
『私もそう思ってたんです』
『あなたも? 奇遇だな』
『でも、どこでお会いしたのか思い出せなくて。もし、うちのお客さまだったら、ほんとに失礼なんですけど……』
『お店をやられてるんですか?』
伊坂さんはちょっと驚いたように言った。
お話やの客じゃないかもしれない。だとしたら、どこで会ったのだろう。不安が頭をもたげながらも答えた。
『八福寺商店街で雑貨店を』
『八福寺商店街……そうでしたか。俺もよく行くから、じゃあ、もしかしたらそこで』
『かもしれませんね。……あっ、ごめんなさい。ご用でなければ大丈夫なんです。いきなり声かけたりしてごめんなさい』
何を話してるんだろう、とハッとして、頭を下げた。逃げ出すように離れたら、彼に呼び止められた。
『やなせ書房には、よく?』
『そうですね』
『月曜日に?』
伊坂さんに出会ったこの二回は、月曜日だった。
『お店の定休日なので』
『俺も月曜日によく来ます。またお見かけしたら、声かけますね』
その日はそれで別れた。
翌週、特に用事はなかったが、やなせ書房へ出かけた。伊坂さんはいた。私を見つけると、声をかけてくれた。
先週購入した本って、昔に発売されてた本じゃなかったでしたっけ? と問われ、スタープリンセスの話になった。
彼と同世代だということがわかり、名前を伝え合うぐらいには仲良くなった。そして帰り際、カフェへ誘われた。
『ここからちょっと離れてるんですけど、デパートに新しくオープンしたカフェがあるんです。よかったら、一緒に行きませんか?』
『カフェ・ド・シュシュですよね。たしか、去年の5月にオープンした』
『去年だったかな。全然新しくないですね』
恥じるように顔を赤らめた伊坂さんは、とても好青年に見えた。だから私も、彼の誘いを受けることにした。
『去年でも、じゅうぶん新しいです。月曜日か木曜日なら、いつでも』
そう言うと、伊坂さんは十二日の木曜日にしましょうと言った。月曜日は病院の予約があるからということだった。
『どこか具合でも?』
失礼かなと思いながら尋ねると、彼は『ただの検診です』と笑った。
それが、彼との最後の会話だった。
また会える。そう思っていたのに、その機会は二度と来なかった。
ぎゅっと胸元を握りしめたとき、目の前に人影が現れた。
ハッとする。伊坂さんかも。そんな風に思って顔を上げると、見知った青年が微笑んでいた。久保さんだった。
「やっぱりお話やさんでしたか。今日はお店、休みですか?」
久保さんはにこやかに話しかけてくる。
「ちょっと用事があって、お店は姉に。久保さんこそ、お店は?」
「そこのカフェが気になって、ちょっとだけ閉めてきました」
久保さんは行列のできているカフェを指差す。
「混んでますよね。すごく待つかもしれませんよ」
とてもすぐには入店できそうにない。お店をちょっとだけ閉めてきた久保さんには、ハードルが高そうに見える。
「ですね。やっぱり人気ですね、カフェ・ド・シュシュは」
「え? シュシュ?」
「知りませんでしたか? そこのカフェ、カフェ・ド・シュシュの姉妹店で、リリーカフェっていうんですよ。シュシュは先日、お話やさんが中をのぞいてた……」
久保さんはそう言いかけて、気まずそうに口をつぐんだ。のぞくだなんて、いやらしい響きが私を傷つけたとでも思ったのだろう。
「のぞいてましたね、私」
くすっと笑ったら、久保さんは安堵した表情を見せる。
「入ります?」
「え?」
「シュシュと同じメニューはないかもしれないですけど」
「……あ、いえ。入りたくてのぞいてたわけじゃないので」
じゃあ、なんでのぞいていたのか。と言わないばかりに、久保さんは奇妙な顔をする。
「どなたかと、待ち合わせでも?」
久保さんが探るように尋ねてくる。
どう答えたものか。と悩んでいると、彼の視線が私の首もとへ落ちた。
「お話やさん、ネックレスされるんですね」
ブラウスの隙間から見えるチェーンを目ざとく見つけたようだ。細かいことを見ている人なのだと思ったが、すぐに職業柄だろうと思い直した。
「……いただきものなんです。普段はあまりアクセサリーはつけなくて」
自分で購入したと言おうか迷ったが、正直に答えた。嘘をついたらついたで、久保さんのお店で買わなくて申し訳ないと、謝ることになりそうだと思ったのだ。
「あ、いや、意外だとかそういうつもりはなくて。……なんか、失礼な言い方したな、俺」
久保さんは後ろ頭に手を置いた。
「あんまりおしゃれしてない自覚はありますから」
「そういうつもりでは。どんなネックレスなんですか?」
話をそらすように彼は尋ねた。
「実は……、星の形のネックレスなんです。ちょっと若い子向けみたいで、私に似合うかわからないんですけど」
胸元からネックレスを引っ張り出す。すると、久保さんの指がそっと伸びてきて、ネックレスのスターに触れた。
どきっとした。彼は普段からお客さんの胸元を見慣れているのかもしれない。だけど、私は違う。大きく息を吸って吐いたら胸が上下して、彼の指に触れてしまうのではないかと、ますますどきどきした。
「若い子向けだなんて、全然。よくお似合いです」
「ありがとうございます」
少し後ろに下がって、久保さんから離れる。彼も何か察して、すぐに手を引っ込めた。
「好きな男性からのプレゼントですか?」
「……ち、違います」
あわてて否定したものの、顔は真っ赤だろう。恋に恋する夢見がちな年頃はとうに過ぎたのに、簡単に動揺してしまって、恥ずかしくてたまらなかった。
「そうなんですね」
否定したことをあっさり認めたのか、私の態度から察して、好きな人がいるんですね、と言ったのか、どちらとも取れるような声音で彼はそう言った。
「お友だちからいただいたんです」
苦しまぎれに言うと、久保さんを見上げた。私の胸はどきりと跳ねた。やや冷めたような表情で、彼は私を見つめていたのだ。
「ほんとに、違うんです」
どうして念を押してしまったのか。
伊坂さんは優しい人で、好感も持てた。だから、カフェのお誘いも受けたし、ネックレスのプレゼントも純粋にうれしかった。
しかし、久保さんの前では、そんな潔白な気持ちにもやましさがあるように思われたくなかった。
「その彼は、否定されたくないかもしれないですよ」
きっぱりと答えた彼の表情は、思いがけず、固かった。
「男性がプレゼントするなんて、そういうことです」
ネックレスのスターに、射抜くような視線を向けられ、とっさに手のひらの中に隠した。
違う。伊坂さんと私の関係を誤解されたくない。今度ははっきりとそう思った。
「彼とは何回か偶然にお会いしただけで、これもただのお詫びで……。彼の気持ちを否定してるわけじゃありません。でも、彼が言わないことを勝手に解釈して、都合良く受け取るなんて、それこそ彼に失礼だと思います」
伊坂さんが私を好きになるわけない。
地味で、美人でもない私のどこにも、男性の気を惹く魅力なんてない。
じっとうつむく私を、久保さんがどんな目で見てるのかわからなかった。むきになったりして、ほんとに私はだめな女だろう。
「日高さんはほんとに優しいですよね」
なぜ、優しいなんて言えるのか。驚いて顔を上げた。彼はあきれ顔だった。
「おそらく、彼は喜んでますよ。でもなんか、ほんとに……」
久保さんはどことなく皮肉げに笑った。
「いや、日高さんがいい人すぎて驚いたっていうか。偶然出会ったなんて言うけど、偶然って、簡単に作り出せるんですよ」
ぽかんとする私を見て、彼はますます声を立てて笑う。こんなにも快活に笑う人だったのかと、思わずその笑顔に見惚れてしまった。
