光希は、ハギモリマリアの言葉を信じたくないと思いながらも、史苑に迷惑がかかる? という脅しの内容がいくつも突き刺さっていくのを感じていた。
「俺がそばにいたら、迷惑なのか?」
ハギモリマリアが、にたあっと笑った。
『ええ。そうよ。大学にも行けなくなるわよ』
そんな……。
まさか、そんなことがあっていいはずがない。
ハギモリマリアが怖いとかそんな事どうだってよかった。
それにこのままここにいたら、一色とショウゴによって喫煙の罪も着せられそうだし。
ふふ、と思わず笑いがこぼれた。
「分かった」
気づけばそう言っていた。
ハギモリマリアは首を少しだけ傾けた後、じりじりと光希の方へ這いずって来た。
モゴモゴと何かを言っている。自身の喉を掻きむしり何か訴えていたが、光希はスマホを床に置いた。
彼女は床に爪を立ててさらにこちらへ近づいて来た。
「ふ、藤崎くん……」
一色が膝を抱えて泣いている。光希はそれをぼんやりと見ていた。
「大丈夫だよ。だって、彼女はもうこの世にいないんだ。何もできやしない……」
光希はそう呟いていた。
その時、光希のスマホが振動し始めた。ちらりと見ると史苑から電話がかかっている。
早く出ないと先輩が心配をする。
そう思うのに手が動かなかった。
電話はいつまでも鳴り続けていた。
ハギモリマリアは、光希の膝へと手を伸ばしてくる。一色は白目をむいて失神してしまい。
光希は目を閉じた。
冷たい体が自分の背中をよじ登ってくるのを感じながら、もう逃げられない、と思った。
「先輩……」
呟いて、光希も意識を飛ばした。
それから目を覚ました時、光希は真っ暗な天井を見ていた。
寝返りを打とうとして体が動かない事に気づいた。
金縛り。
違う。目を凝らすと、史苑の腕にがっちりと抱かれているようだった。
ドキッとしたが、体が冷たくて指先は氷のように感じた。
「先輩……」
声を出すと、史苑がふっと目を覚ました。
「あ」
眠りが浅かったのか、史苑がパッと目を開けた。
「光希っ。大丈夫?」
「はい……」
声が掠れている。力がうまく入らない。
「一色の部屋で二人とも意識を失っていたんだけど、医務室の先生に診てもらったら異常はなくて眠っているだけだからって。でも、俺は特別に一緒にいさせて欲しいって頼んだんだ」
「ありがとうございます……」
心が冷え切っていて、ドキドキしなかった。
大好きな人が目の前にいるのに、どうして? と光希は思った。
「何かあった? 一色の部屋にスマホがあったけど」
「先輩、見たんですか?」
「え? 何を?」
そうか。
ハギモリマリアとのやりとりは全部、光希のスマホだった。
史苑が黙って人のスマホを見るとは思えなかった。
ハギモリマリアとのやりとりを史苑は知らないのだ。
「先輩……」
本当のことを言ってしまえばいい。
別れたくないけど、このままだと先輩に迷惑をかけてしまう。
光希が口を開こうとしたら、舌がびりっと痺れた。声が出ない。
「どうした? どこか痛い?」
そうだ。ショウゴに右の肩辺りを殴られたんだった。
光希は肩の痛みも覚えたが、一瞬にして先程考えた内容を忘れてしまった。
何を言おうとしたのだろう。
「もう寝よう。とにかく寝て嫌なことは忘れるんだよ」
史苑が、光希を抱き寄せた。
はい、と光希は頷いたが体が冷たくて震えが止まらなかった。
足の指先も手の指先も氷みたいだった。
史苑は目を閉じて静かに寝息を立てている。
どうしよう。
どうしたらいいのか。
何を焦っているのか、それすら分からなかった。
ハギモリマリアとの会話の内容を忘れかけている。
史苑と怜に何か大事な話があったはずなのに。
光希は、史苑にしがみついたまま目だけ閉じた。
「俺がそばにいたら、迷惑なのか?」
ハギモリマリアが、にたあっと笑った。
『ええ。そうよ。大学にも行けなくなるわよ』
そんな……。
まさか、そんなことがあっていいはずがない。
ハギモリマリアが怖いとかそんな事どうだってよかった。
それにこのままここにいたら、一色とショウゴによって喫煙の罪も着せられそうだし。
ふふ、と思わず笑いがこぼれた。
「分かった」
気づけばそう言っていた。
ハギモリマリアは首を少しだけ傾けた後、じりじりと光希の方へ這いずって来た。
モゴモゴと何かを言っている。自身の喉を掻きむしり何か訴えていたが、光希はスマホを床に置いた。
彼女は床に爪を立ててさらにこちらへ近づいて来た。
「ふ、藤崎くん……」
一色が膝を抱えて泣いている。光希はそれをぼんやりと見ていた。
「大丈夫だよ。だって、彼女はもうこの世にいないんだ。何もできやしない……」
光希はそう呟いていた。
その時、光希のスマホが振動し始めた。ちらりと見ると史苑から電話がかかっている。
早く出ないと先輩が心配をする。
そう思うのに手が動かなかった。
電話はいつまでも鳴り続けていた。
ハギモリマリアは、光希の膝へと手を伸ばしてくる。一色は白目をむいて失神してしまい。
光希は目を閉じた。
冷たい体が自分の背中をよじ登ってくるのを感じながら、もう逃げられない、と思った。
「先輩……」
呟いて、光希も意識を飛ばした。
それから目を覚ました時、光希は真っ暗な天井を見ていた。
寝返りを打とうとして体が動かない事に気づいた。
金縛り。
違う。目を凝らすと、史苑の腕にがっちりと抱かれているようだった。
ドキッとしたが、体が冷たくて指先は氷のように感じた。
「先輩……」
声を出すと、史苑がふっと目を覚ました。
「あ」
眠りが浅かったのか、史苑がパッと目を開けた。
「光希っ。大丈夫?」
「はい……」
声が掠れている。力がうまく入らない。
「一色の部屋で二人とも意識を失っていたんだけど、医務室の先生に診てもらったら異常はなくて眠っているだけだからって。でも、俺は特別に一緒にいさせて欲しいって頼んだんだ」
「ありがとうございます……」
心が冷え切っていて、ドキドキしなかった。
大好きな人が目の前にいるのに、どうして? と光希は思った。
「何かあった? 一色の部屋にスマホがあったけど」
「先輩、見たんですか?」
「え? 何を?」
そうか。
ハギモリマリアとのやりとりは全部、光希のスマホだった。
史苑が黙って人のスマホを見るとは思えなかった。
ハギモリマリアとのやりとりを史苑は知らないのだ。
「先輩……」
本当のことを言ってしまえばいい。
別れたくないけど、このままだと先輩に迷惑をかけてしまう。
光希が口を開こうとしたら、舌がびりっと痺れた。声が出ない。
「どうした? どこか痛い?」
そうだ。ショウゴに右の肩辺りを殴られたんだった。
光希は肩の痛みも覚えたが、一瞬にして先程考えた内容を忘れてしまった。
何を言おうとしたのだろう。
「もう寝よう。とにかく寝て嫌なことは忘れるんだよ」
史苑が、光希を抱き寄せた。
はい、と光希は頷いたが体が冷たくて震えが止まらなかった。
足の指先も手の指先も氷みたいだった。
史苑は目を閉じて静かに寝息を立てている。
どうしよう。
どうしたらいいのか。
何を焦っているのか、それすら分からなかった。
ハギモリマリアとの会話の内容を忘れかけている。
史苑と怜に何か大事な話があったはずなのに。
光希は、史苑にしがみついたまま目だけ閉じた。

