その好きは隠しておいてね


 朝の点呼は、各階の巡回リーダーが行っている。
 もし、点呼の時に何かあったら、寮父と自分に連絡が来る。夜の点呼も同様だ。
 点呼は時間厳守で、全員必ずその場にいなくてはならない。

 二人は三階ロビーに向かった。
 ロビーにはソファと机、テレビもあり憩いの場にもなっている。奥には共同の洗面所トイレが設置されていた。
 二人が急ぐと三階の生徒たちが並んで、点呼リーダーがチェックするのを待っていた。
 光希は生徒たちの顔を見ながら、誰一人欠けていないことを見て安堵すると、一体誰があのメールを書いたのだろう、と思った。
 あのメールの意図も全く見当がつかなかった。無事に点呼が終わるとすぐに甲斐が言った。

「ご飯、食べに行こうぜ」

 食堂には多くの学生が集まっていた。
 バイキング形式になっていて、ご飯とみそ汁、ウインナーなどおかずも選べる。
 トレーに食事を乗せて空いている席を探すと、すでに朝食を摂っていた史苑が手を振って手招きした。

「ここだよ、光希」
「おはようございます。先輩」
「今朝まで一緒だったじゃないか」

 余計なことを、と思いながらも周りの視線を感じるとちょっとだけ優越感に浸った。何せ、この史苑という男はとんでもなくイケメンなのだ。
 声も良ければ顔もいつまでも見ていられる。甲斐も史苑には一目置いていて、わざわざ隣に座ろうとした。

「ダメだよ、甲斐。俺の横は光希だけなんだからね」
「今朝まで一緒だったんでしょ。隣に座るくらいはいいじゃないですか」

 甲斐も史苑の冗談に付き合うような言い方をした。光希は息をつくと、史苑の隣に座って朝食を食べ始めた。
 史苑がわざと光希の方へ身を寄せて、内緒話をするように囁いた。

「それで? メールって何? 詳しい話を聞かせてよ」

 光希はできるだけ平然とした態度で小さく頷いた。

「先輩、自由時間の時にお話ししますので、今は無理です」

 食堂ではスマホは持ち込み禁止となっている。実家暮らしの生徒と違って、寮生は24時間使えるわけではなかった。
 そうだ。スマホを使える時間帯はある程度、絞れる。気づけば謎のメールのことを考えていた。

「分かった。じゃあ、この後、俺の部屋に来て」
「はい」

 約束をすると史苑は立ち上がり、自分の相部屋の三春怜(みはる れい)と一緒に食堂を出て行った。
 怜は一年の頃から史苑と同じ部屋であった。怜は唯一、史苑と光希の関係を知っている。史苑は、怜に対してかなり信頼を置いていると思われた。
 怜は全体的にほっそりしていて、切れ長の目で色白の美形だった。怜を見た時、光希も見とれてしまったほどで、彼に恋人のフリを頼めばいいんじゃないですか、と言ったことがある。すると、史苑はこう答えた。
 俺の趣味じゃない。
 俺の趣味じゃないって、何? と思ったが言わないでおいた。しかし、その答えは今でもずっと引っかかっている。