食後に史苑の部屋に集まり、光希のスマホでハギモリマリアと接触を試みた。
前に送ったメールの後からぷっつりと連絡が途絶えたままだ。怜に頼まれて光希が文章を送ってみた。
なるべく簡潔に。
「Mさんへ あなたはどこにいるのですか? こんな感じでいいですかね」
光希が怜に言うと、彼はこくっと頷いた。
「ハギモリマリアさんから、全然連絡がなかったけど何かあったのでしょうか」
「彼女には時間の感覚なんてないはずだから、光希くんにメールをする必要もなかったのかもね」
「もし、スマホの人物が特定できたらどうするんですか?」
「え?」
怜と史苑が同時に光希を見た。
「その人物次第だけど、どちらに転んでもただでは済まされないってことだよ」
「え……」
いつもは穏やかな史苑が少し怒っているように見えた。
「俺はすごく嫌な予感がするんだ。怜も同じ意見だよ」
「うん。できるだけ早くスマホの人物を知りたいよね」
「危険はないですか?」
「それは分からないな」
史苑は腕を組んで考えた。
「ショウゴだっけ。ショウゴとしか分からないけど、トイレを壊して何とも思っていない生徒だっているんだ。表面だけでは何を考えているか分からないからね」
「彼も帰省しないって言っていたね、確か」
怜の問いかけに光希は頷いた。
「はい。夜の点呼には必ずいます。前に話かけられて」
「なんて?」
「特に何も。元気ですか? っていう挨拶程度で、彼はこっちに彼女がいるらしくて、それで帰省しないとか言っていました」
「……ふーん。どうやって外の女の子と出会うんだろうね」
「出会い系? スポーツしてそうだったし、うちの学校という名前だけでもしかしたらモテたりするのかな」
怜と史苑の話題が少しだけショウゴに移る。光希は、ショウゴにはあまりいい印象を持っていなかった。彼は話をする時、ニヤニヤした視線が居心地の悪さを感じさせる。でも、彼をよく知りもしないのに悪口を言うのはよくないと思い直した。
その時、光希のスマホにメールが入った。
「あ、きた!」
怜が嬉しそうに言った。
「ねえ、メールを開いてもいい?」
「いいですよ」
光希は承諾するとパスコードを解除して怜に渡した。怜はSMSを開く。
『藤崎寮長へ 私は今四階にいる。霊道が壊れてから、ずっとスマホと繋がっている。スマホがいろんなところへ移動しているの』
わけの分からない返事で光希はゾッとした。
「どう意味でしょうか」
「……。知りたくないけど、なんか不快だよね」
史苑が大きくため息をついた。
「スマホで隠し撮りをしてるんじゃないかな」
「……え?」
「僕もそう思う。やっぱりストーカーの件よりもそれで商売をしている方が濃厚みたいだね」
怜の言葉を聞くと背筋がゾッとした。そんな事をする生徒が本当にこの寮にいるのだろうか。
「やっぱり突き止めた方がいいね」
「うん」
怜はメールに返信をした。
『君に会いたい。指示された場所に行くから教えて欲しい』
メールを送るとすぐに返事があった。光希はドキドキした。
『分かっているのは四階であること。この少年は自撮りをしているわ。自分の写真を売って小遣い稼ぎをしているみたいよ。この子が藤崎寮長ではないのは確かね』
「会うのが怖くなってくる……」
光希の言葉に史苑が苦笑した。
「普通の反応だよね。自撮りかあ。そんなに自信があるのかな、と冗談はさておき。光希、四階に残っている生徒は何人いるのかな」
「あ……」
そうか。これはチャンスなんだ。帰省していない生徒の数は普段よりも少ない。抜き打ちでスマホを二台持っている生徒を調べればいいのだろうか。
「どうやって調べるんですか?」
「簡単じゃない?」
怜が言った。
「だって、そこにはハギモリマリアさんがいるんでしょ?」
「あ、そうか……」
「ハギモリマリアさんの姿は視えていないようだけど、実際光希くんと史苑は姿を見たんだよね。何か条件が重なれば視えるようになるんじゃないかな」
「何が条件なんだろう……」
「降霊術とか……」
怜が浮き浮きと言う。
「いや、おかしいだろ、それ」
史苑がツッコミを入れる。光希は、ハギモリマリアと遭遇した時の事を思い出そうとした。
「史苑先輩、六階でハギモリマリアさんに遭遇した時、薄暗かったですよね」
「天井の明かりが消えかかっていたよね。偶然だったのか、それともハギモリマリアの仕業だったのか……」
「三階で甲斐が目撃した時も廊下の明かりはまだついていなかったんじゃないでしょうか。夕方だったから」
「明るさか」
怜と史苑、光希は顔を見合わせた。
「ブレーカー落としてみる?」

