その好きは隠しておいてね


 食堂の空いている席で三人は食事をしながら、甲斐の観た映画の話から、気づけばハギモリマリアの使用しているスマホの話題へと移っていた。
 史苑はこのスマホの存在をかなり気にしているようだった。光希も自分が関わっている事なのだから、もっと深刻に考えるべきなのに、史苑と両想いだった事ばかり考えてしまっていた。

「光希はどう思う?」
「へ?」

 甲斐に話を振られて上の空だった光希は全然、話を聞いていなかった。そこへトレーを持った怜が現れて、甲斐の隣へ座った。

「なんの話しているの?」
「怜先輩こんにちは」

 光希と甲斐が挨拶をする。怜も食事を始めると、史苑が説明を始めた。光希も今度は、その話を最初から聞き始めた。

「俺のスマホからハギモリマリアに連絡を取って、スマホの持ち主の部屋を教えてもらうのが一番じゃないかって話」
「ああ」

 怜がご飯を咀嚼してごくんと飲み込んだ。

「それね。うん、そうだね」
「史苑先輩のスマホからでいいんですか?」
「いいに決まってるだろ」
「でも、もし教えてくれる気になっても、交換条件を言ってきそうだけどね。霊道を探せとか」

 史苑の言葉の後に、怜が今夜のおかずのハンバーグを箸で切り分けながら言った。

「霊道が繋がる前に、スマホの持ち主を特定しなきゃいけない」

 史苑が真剣に答える。光希は感動した。史苑が本気で心配してくれているのだと思った。

「迷惑かけてしまって、すみません」
「何言ってるんだよ。光希は被害者だろ」
「俺にもできることがあるのなら手伝うよ」

 すでに夕食を食べ終えた甲斐がお茶を飲みながら言った。

「ゴールデンウイークまでには解決したいよね」

 怜がぼそりと言う。みんな勉強やテストで忙しいのだ。この問題にずっと取り組んではいられない。

「俺も協力します」
「じゃあ、みんなお風呂を済ませたら史苑の部屋で作戦会議でもしようか」

 一人まだ食事を終えていない怜がちょっと楽しそうに言った。



 お風呂をすませて明日の準備を整えた後、光希と甲斐が史苑の部屋に行くと、すでに怜はのんびりと過ごしていた。

「いらっしゃい」
「お邪魔します」

 光希は史苑の隣に座った。
 ワンルームほどの部屋に男四人は狭く感じたが、光希は史苑をより一層近くに感じてドキドキした。

「じゃあ、今からハギモリマリアにメールを送るよ」

 史苑が言って、自分のスマホからSMSでメールを送った。内容は、Mさんはどこにいますか? というシンプルな内容だ。ハギモリマリアは、史苑の事を知らないので、差出人不明のメールになっているはずだ。
 スマホで霊と会話ができるなんて、まるで現代版こっくりさんみたいだなと思った。
 返事が来るのを待つ。

「あー、頼むよ。ハギモリマリアさん、答えてくれー」

 甲斐が祈るように言った。しかし、返事は全く来ない。

「やっぱりダメかな」

 怜が呟いて光希を見た。

「光希くんのスマホからなら反応があるかも。史苑、いい?」

 怜が史苑に許可を取る。史苑は、ふうっと息を吐いた。

「光希、いいか?」

 甲斐もこちらを見てくる。光希はこくこくと頷いた。

「もちろんです」

 すぐに自分のスマホを取り出した。

「今度は僕が送ってもいい?」
「お願いします」

 怜が、光希のスマホを受け取ると文章を入力しようとして手を止めた。メールを打つ前に時間の確認をしている。

「ハギモリマリアさんからくるメールの時間帯を見て」

 最初のメールは夜だったが、最後のメールは午前中とバラバラで、メールを送ってくるタイミングの予測ができない。

「そもそもスマホに電源が入っているのかすら分からない。なにせ相手は幽霊だからね。僕たちの常識はもう通用しないかもしれないけど」

 ぶつぶつ言いながらもメールを送った。さっきとは少し違った文面だった。

『Mさんへ 一度あなたに会いたいです』

 こちらもシンプルな内容だ。怜はメールを送ると光希に言った。

「このスマホがどこにあるのかを聞いて、もし、持ち主がこのメールを読んでいたらまずいからね。下手な文章は書かないようにした方がいい」
「こちらの動きがばれたらスマホを隠されるかもしれないからね」

 史苑も用意周到だ。光希は勝手にメールを送らなくてよかったと思った。自分は意外と短絡的思考なのかもしれない。気をつけなきゃと思う。
 その時、コンコンと部屋をノックする音がした。
 史苑が立ってドアを開けると、寮の班長とリーダーの少年が立っていた。