彼女が舞う場所だけが、この呪われ、荒れ果てた王宮の中で、唯一の清らかな神域であるかのように錯覚させる。
だが、ユンはすぐに強く首を振った。
(騙されるな。あれは幻惑だ。母上を奪い、私を、この国を嘲弄する妖女の術に違いない……!)
彼は怒りを押し殺すように踵を返し、闇の中へと消えていった。
その去り際、彼が乱暴に踏みにじった名もなき野花が、瑞奈の祈りの光を受けて、一瞬だけ鮮やかな色彩を取り戻したことに、彼はまだ気づいていなかった。
――そして、瑞奈自身もまだ知らなかった。
自分の削り取った命が、やがてこの国と、自分を拒絶した夫の運命を根底から変えていくことになるのを。



