死んだはずの世子嬪は、すべてを知った夫に狂おしいほど愛される




 潤は瑞奈の手をとり、指先のわずかな汚れを自分の清潔な布で丁寧に拭い去る。


「……瑞奈。あの日以来、お前の体調はどうだ? どこか、削られるような感覚はないか?」


 潤の瞳に、一瞬だけ宿る深い不安。彼は今でも、瑞奈がその聖なる力を使って自分の前から消えてしまうのではないかという恐怖を、心の奥底に飼っていた。


「大丈夫です。今は……あなたが注いでくださる愛が、私の命を潤してくれていますから」


 瑞奈が潤の胸にそっと頭を預けると、潤は安堵したように彼女の髪に顔を埋めた。
 あの白金と翡翠の簪が、陽光を反射してキラリと揺れる。


「……瑞奈。今夜は、月が綺麗だそうだ。二人で池のほとりを歩こう。どうだろうか?」

「えぇ、もちろんです。楽しみにしています」


 瑞奈はそう答えると、潤に微笑んだ。



                    【完】