「瑞奈。……お前が舞ったあの夜、私は天が裂けるのを見た。雨が降ったのは、お前の祈りが龍神に届いたから……だが、それだけではないのだろう? お前の体があれほどまでに冷え切っていた理由は、白龍の巫女ではないか?」
潤の真剣な問いに、瑞奈は静かに視線を落とした。その指先が、シーツの端を頼りなげに掴む。
「……はい。我が白蓮の一族に伝わる、真の継承です」
彼女は、自身の白く透き通るような肌を見つめながら一族に伝わる禁忌の歴史を静かに語り始めた。
「遥か昔のことです。この瑞京国が建国される前、この地は未曾有の干ばつに見舞われました。草木も人も枯れ果てる死の大地でした。龍神様は人々の傲慢さに怒り、天の門を閉ざしてしまわれたのです」
瑞奈の声は、遠い神話の記憶をたどるように静まり返った寝所に響く。
「その時、我が一族の先祖である一人の巫女が自らの命をすべて捧げ龍神様の怒りを鎮めました。彼女の血は大地に染み込み、そこから枯れることのない清らかな水が湧き出て、国を救ったのです。龍神様はその犠牲を哀れみ、一族の娘に『雨と命を司る力』を授けました。……けれど、それは祝福であると同時に、残酷な呪いでもあったのです」
瑞奈は、自分を握りしめる潤の手に力を込めた。
「その力は、清らかな心を持つ娘の『生命力』そのものを触媒とします。……祈れば祈るほど、舞えば舞うほど、使い手の命は内側から削られていく。白蓮一族が没落を装い、歴史の陰に隠れたのは、力を恐れたからではありません。王家を支えるための『使い捨ての生贄』として、利用される運命を避けるためでした」



