死んだはずの世子嬪は、すべてを知った夫に狂おしいほど愛される



 それは、瑞奈が死の淵から奇跡的に意識を取り戻してから数日が過ぎた。
 そして吸い込まれるような穏やかな月夜のことだった。

 潤は、山積する公務の合間を縫っては、片時も瑞奈の傍を離れようとしなかった。彼は、侍女に任せるべき細かな世話さえも自ら買って出た。
 薬を人肌に冷まして飲ませ、粥を匙ですくって運びまるで嵐の中で羽を折った小さな小鳥を慈しむように接していた。





「潤様、もう私は大丈夫ですわ。こうして座ることも、少しなら歩くこともできます」


 この人に嫁いでからこんな優しく接されたことがなく戸惑うも、なぜか少しだけ嫁ぐ数ヶ月前に……大妃様が亡くなる前に会いに来てくれたことがあった。とても優しく笑いかけてくださったことを覚えている。

 布団の上に座り直した瑞奈は思い出してふふっと笑っていると何を笑っているんだと言うかのように甲斐甲斐しく世話を焼く夫に笑みが溢れた。
 少し困ったように、けれど幸せそうに潤は微笑んだ。
 瑞奈は頬の赤みはまだ薄いが、その瞳にはかつての透明な生気が戻っていた。潤は、彼女の華奢な肩に自身の重厚な御衣をそっとかけ、その隣に腰を下ろした。


「ダメだ。医官がお前の気はまだ、長年の渇きでひび割れた大地のようなものだと言っていた。私が、この手で慈しみの水を注ぎ続けなければ、また枯れてしまうのではないかと恐ろしいのだ」

「ですが……潤様の御執務がおありなのでは?」

「問題ない。春坊から執務のものは端雨に宮に運ばせた。だから大丈夫だ」



 彼は瑞奈の細い手をとり、壊れ物を扱うように指先一本一本に唇を寄せる。