死んだはずの世子嬪は、すべてを知った夫に狂おしいほど愛される




「……ここにいる。お前が望むなら、私はもう一生、どこへも行かない」


 潤は彼女の体を慎重に支え、抱き起こした。腕の中に収まった彼女はあまりにも小さく、潤の胸に顔を埋める形になる。吐息が重なり、互いの鼓動が伝わるほどの距離だった。


「……潤、と呼べ。世子様ではなく」

「……潤様、と呼んでもよろしいのですか?」

「ああ、もちろんだ」

「潤、さま」


 瑞奈はぎこちない、けれど甘やかな響き。


「もう一度、呼んでくれ」


 潤は抗いようのない衝動に突き動かされ、彼女の頬に手を添えた。


「……潤様」

 瑞奈の呼ぶ声に、潤は彼女をさらに強く抱きしめた。


「……手放さない。もう二度と、お前を暗闇には返さない」


 それは、愛という名の執着に近いほど強い誓いだった。瑞奈は、夫の広い胸に身を預け、ようやく本当の安らぎの中で目を閉じた。

 失われた三年間を埋めるように、二人の新しい時間が、夜明けとともに静かに芽吹き始めていた。