死んだはずの世子嬪は、すべてを知った夫に狂おしいほど愛される




 王宮の最奥――灯りを落とした寝所の中で、瑞奈はまた浅い眠りの中にいた。

 規則正しくはない呼吸、まだ完全には戻らない体温。その傍らで、ユンは片時も離れず座り続けていた。

 指先で、そっと彼女の頬に触れる。


「……こんなにも、軽いのか」


 思わず呟きが零れる。触れた肌は驚くほど柔らかく、そしてあまりにも儚い。

 少し力を入れただけで、消えてしまいそうで――怖かった。


「……すまない」


 横たわる彼女の手の甲に、熱い唇を落とす。それは謝罪であり、愛の告白であり、一生をかけた誓いでもあった。


「……ん……」


 微かな声とともに、瑞奈の瞳が再び開く。ぼんやりとした視線が、やがて目の前の潤を捉えた。


「……世子、様……?」

「起こしてしまったか」


 潤は、反射的に手を引こうとした。だが、その手を瑞奈が弱々しく、けれど必死に握り返した。


「……行かないで……ください……」


 掠れた、震える声。その一言に、潤の呼吸が止まりそうだった。彼女の瞳には、まだ深い孤独の影が残っている。

 まるで、これが幸せな夢で、目覚めればまた一人きりの冷たい離宮に引き戻されるのではないかと怯えているように。