死んだはずの世子嬪は、すべてを知った夫に狂おしいほど愛される



「……嘘だ。瑞奈、目を開けろ!」


 腕の中の体が、急速に冷えていく。その細い腕には、金大監たちが拷問や不当な扱いでつけたであろう、無数の痣が浮かび上がっていた。


(……私は、こんなにも脆い彼女を……三年間……)
(守るべき彼女を、私は自ら殺したのか……!)


「なぜだ……なぜ、何も言わなかった!」


 潤の声が、後悔で震える。答えは、返らない。
 ただ、瑞奈は――雨に濡れた顔で、誰に向けたのかわからないがかすかに微笑んだ。


「……雨……良かった……最期に、白蓮の巫女としてのお役目を……果たせて、良かっ……」



 その瞳が、雪が溶けるようにゆっくりと閉じていく。
 その時。激しい雨に打たれ、瑞奈が命を捧げた池の水面に、何かが浮上した。

 証拠として隠滅されるはずだった、呪いの木札。潤は瑞奈を横にしてからそれに近づく。
 掴み取り、裏返した瞬間……そこには、金大監の隠された家紋が、くっきりと刻まれていた。