死んだはずの世子嬪は、すべてを知った夫に狂おしいほど愛される




「やめろ……もういい、やめるんだ!」


 潤の叫びとともに、天に異変が起きた。

 青一色だったはずの空に、どこからともなく墨を流したような黒雲が渦を巻き始めたのだ。

 風がうなりを上げ、地響きのような雷鳴が轟く。


「な、なんだこれは……!? 妖術か!」
「いや、これは……!」


 民が、重臣たちが、怯え、ざわめき始める。
 金大監の顔が初めて恐怖に歪んだ。


「幻術だ! 惑わされるな! あの女を、今すぐ斬れ!」


 兵が動こうとした。
 だが、瑞奈の周囲に展開された目に見えぬ「気」の壁が、彼らを拒絶する。