死んだはずの世子嬪は、すべてを知った夫に狂おしいほど愛される




「……最後に」


 瑞奈が、一歩前に出る。周囲を取り囲む兵たちが、何事かと色めき立ち、剣を構える。

 だが彼女は、誰にも目を向けず――ただ、燃えるような蒼穹を見上げた。


「最後に、一つだけ。願いをお聞き届けください……天に、真実を問わせてください」


その瞬間、周囲の空気が一変した。
熱風が止み、真空のような静寂が静蓮閣を支配する。


「私が国を呪う者か……それとも」


彼女は、悲しいほどに美しく微笑んだ。


「ただ、この国を……この地に生きる人々を愛していただけの者か」


 瑞奈は、静かに舞い始めた。それは、もはや人間が踊るものではなかった。魂を削り、神に捧げる純粋な祈りだった。

 一歩、大地を踏みしめる。足裏の傷から血が滲む。だがその血は、乾いた土に落ちた瞬間に真珠のような淡い光を放ち、大地へと吸い込まれていく。指先が空をなぞれば、その軌跡に雪のような白い光が残った。