死んだはずの世子嬪は、すべてを知った夫に狂おしいほど愛される




 潤の短く、拒絶に満ちた命令が下った。
 やがて奥の間から、荒々しく兵士たちに腕を掴まれ、一人の女が引きずり出されてきた。


「……っ……」


 その姿が視界に入った瞬間、潤の喉がかすかに鳴った。
 それは彼が三年間呪いの元凶として忌み嫌い、想像の中で肥大させてきた醜い妖女の姿ではなかった。

 あまりにも細すぎる、折れそうな体。
 婚礼の夜から一度も新調されることのなかった、擦り切れ、無残に破れた白いチョゴリ。

 なぜだか、血が滲んでいる裸足に乱れた黒髪。

 ――しかし。
その凄惨な姿の中で、ただ一つだけ、周囲の醜悪さを撥ね退けるものがあった。
 泥の中に沈んでもなお濁ることのない、吸い込まれるほどに澄みきった、瑞奈の瞳だ。



(……なぜだ)


 ユンの胸の奥が、鋭い棘で刺されたように軋む。


(なぜ、今まさに殺されようとしているのに、そんな目ができるのだ)


 その瞳には、自分を陥れた者への憎悪も、死への恐怖も、呪いの昏い光も宿っていない。
 ただ――静かな、すべてを包み込むような諦念と、深い慈愛だけがあった。