――ねえ桜、縫物をするところを見せて。 伽羅が強く香って、早鐘を打つ心の音が身体の中に響いて、針を刺す手元が覚束なかった。背中に覆いかぶさるように後ろから布を押さえていたひとは、ああ、と小さく声を上げて、身体を少し横にずらした。風が通り、伽羅が空に散り、はあ、と大きく息を吐く。横から、愉快そうな笑い声が聞こえた。 穏やかな声と、伽羅の匂い。すぐそばで明朗に笑う、美しい公達。それはまるで、ものがたりの中に迷い込んだかのような景色だった。