「優しい嘘で、私は振られた」

 放課後。

 いつもの帰り道。

 並んで歩く、この時間も、少しずつ当たり前になってきた。

「……ねぇ」

 私が口を開く。

「なに」

「もしさ」

 少しだけ、空を見る。

「また変な未来になったら、どうする?」

 自分でも、変な質問だと思う。

 でも。

 聞きたかった。

「……ならないだろ」

 あっさり返される。

「なんで」

「だって」

 少しだけこっちを見る。

「今、ちゃんと話してるし」

 その一言に、少しだけ胸が揺れる。

「前は」

「それができてなかったんだろ」

 ……確かに。

「だから変な未来になった」

「でも今は違う」

 はっきりと。

「逃げないって決めたし」

「お前も、ちゃんと言うって言ったし」

 その言葉に、自然と頷く。

「……うん」

「じゃあ大丈夫だろ」

 シンプル。

 でも。

 すごく、納得できた。

「……そっか」

 小さく笑う。

 未来を変える方法なんて、きっと難しくない。

 ただ。

 ちゃんと向き合うこと。

 それだけでよかった。

 そのとき。

 ふと、違和感。

「……あれ」

「なに」

「なんか、見覚えある」

 立ち止まる。

 目の前。

 ――屋上へ続く階段。

 あのとき。

 未来で告白した場所。

「……行く?」

 彼が、軽く言う。

「……え」

「確認したいんだろ」

 少しだけ笑う。

「同じことになるか」

 ――っ。

「……いい」

 すぐに首を振る。

「もういい」

 あの未来に、縛られなくていい。

「今で分かる」

 小さく言う。

「もう違うって」

 彼が、少しだけ目を細める。

「……そっか」

 でも。

「……でもさ」

 少しだけ、いたずらっぽく言う。

「一回くらい行ってもいいんじゃね?」

「なんで」

「記念」

「……意味分かんない」

 思わず笑ってしまう。

 結局。

 二人で、屋上に上がった。

 夕焼け。

 あのときと、同じ景色。

「……」

 少しだけ、緊張する。

「なに」

「……なんでもない」

 でも。

 もう怖くない。

 あのときとは、違うから。

「……ねぇ」

「なに」

「もう一回言っていい?」

 自分でも、少し驚く。

「いいけど」

 軽く返される。

 でも。

 ちゃんと、こっちを見てる。

「……好き」

 今度は、はっきり。

 逃げずに。

 沈黙。

 でも。

「……知ってる」

 少しだけ笑う。

「俺も」

 同じ言葉。

 同じ場所。

 でも。

 結果は、全然違う。

 笑われない。

 否定されない。

 ちゃんと、届いてる。

「……変わったね」

 小さく呟く。

「なにが」

「未来」

 少しだけ笑う。

「変えたんだろ」

 彼が言う。

「お前が」

 その一言に、胸が熱くなる。

 ――違う。

「一人じゃないよ」

 小さく言う。

「一緒に変えた」

 少しの沈黙。

 そのあと。

「……そっか」

 小さく笑う。

 夕焼けが、少しずつ沈んでいく。

 でも。

 もう、怖くない。

 どんな未来でも。

 ちゃんと話して。

 ちゃんと向き合えば。

 きっと、また選び直せる。

 手を伸ばす。

 今度は、迷わず。

 彼の手を、掴む。

 ぎゅっと。

 離さないように。

「……帰るか」

「うん」

 二人で歩き出す。

 同じ道。

 でも。

 これはもう、過去の続きじゃない。

 ――自分たちで選んだ未来。