3つの契約を課したのはあなたですよね?


 案内されるがままに通された謁見の間には、すでにたくさんの人が集まっていた。

 まっすぐに伸びたワインレッドのカーペット。
 その両脇には、鎧で武装した獣人騎士達がずらりと並び、前方にも国の重鎮であろう人物達が顔をそろえている。

 これだけの人がいるにもかかわらず、ひどく静かだった。
 なんというか…‥静まり返っている、というより、何かを“見極めようとしている”ような、緊張感を感じる。

 その中心に立つ男。
 長い銀の髪。鋭い金の瞳。
 ただ立っているだけなのに、威圧感がすごい。

 ウルバリス王国の国王、ルシアン・ロウド・ウルバリス。
 私より7歳年上の、御年25歳の若き国王。
 前王妃であるお母上はルシアン様が子どもの頃に病気で亡くなり、お父上である前国王陛下も8年前に病で亡くしたルシアン様は、17歳という若さで国王になり、この獣人の国を治め続けている。

 ……なるほど、確かに“王”ね。
 威圧感だけなら、これまで会った誰よりも上だ。
 けれど────。

「……クリスティ・アルシェイル・マルボロか」
 その声は、ただただひどく凍り付いていた。

「はい。此度は──」
「形式的な挨拶は不要だ」

 そうぴしゃりと言葉を遮られる。
 思ってもみなかった露骨な拒絶に思わずぱちぱちと瞬きする。

 これはまた、随分と……想像以上に分かりやすいわね。
 町の人達以上に、はっきりとした拒絶。
 むしろここまで来ると清々しいくらいだわ。

 そしてそれ以上に気になるのが────。

「陛下」
 突然入り込んできた柔らかな声が、その張りつめたような空気を変えた。
「リリィ……」
 夫となるルシアン様の隣に立つ、一人の女性。

 淡い金色の髪に、ぱっちりとした瞳の愛らしい顔立ち。
 だけど見た目に反してこの娘──かなり、強い。
 ”何が”という明確には言葉にできないけれど、直感がそう告げている。

「そのような言い方では、クリスティ様が驚かれてしまいますよ?」
「構わない。愛しいリリィとの今後の為なんだからな」
 迷いなく”愛しいリリィ”言い切ったそれに、嫌な予感が広がる。

 あぁ、まさか……この人は……。

 そしてルシアン様は、冷たい瞳で私を見下ろした。

「お前には最初に理解してもらう必要がある」
 抑揚のない声。
 その瞳はまるで、虫けらでも見ているかのよう。
 とてもじゃないけれど。自分の妻に向けるような目ではない。

「俺には番がいる」

 そうか、やぱり……。そういうこと、か。
 すとん、と、一瞬で腑に落ちた。

 隣にいる女性。
 あれが────。

「彼女が私の……」

ルシアン様の────。

「リリィだ」


 ──────────番。