ディリート うその世界で それでも僕達は生きていた


いよいよ明日なんだ〜。

そう思うと、緊張で手が汗ばんできた。
律が本当に幽霊なのかそうじゃないのか、明日にはわかっちゃうってことなんだよ。

しかも友達のふりをして律のお母さんと会う。そんなテレビドラマのシーンみたいなこと僕に出来るのかなあ。

「一応連絡とか・・・しといたほうがいいんじゃないの?」
「いや大丈夫だよ。友達がよく遊びに来てたから。
オープンな性格の人だから逆に電話する方が何で…?って思われるよ」
「そうなんだー。ならいいんだけど」

わざわざ家までやってきた僕のことを律のお母さんはきっと快く出迎えてくれるだろう。

そわそわしている僕を見て律が笑ってる。

「ねぇ、まだ時間もあるし〜、家にいてもいろんな事を考えて緊張しちゃうからどっか出かけない?」
「そうだなぁ。結構緊張してるみたいだもんな。
気晴らしに出かけるか」

どこに行くとかは特に決めずにアパートを出た。

10分ほど歩いたところで、はっとひらめいた。
「この近くに神社があったよね。そこにお参りに行かない?
お寺ではさすがになんだから(笑
たとえ真実を知ったとしても、僕たちのこれからが上手くいきますようにって」

「ははははは、それいいかもな」


巫女さんがお守りを売っている、地元では有名な大きな神社がある。

僕達は鳥居の前で一礼した。
一歩中に入ると、空気が違う気がするのはなんでなんだろう?

夕方というにはまだ早い時間
境内には思った以上に参拝客がいた。
みんなそれぞれの思いを胸にお参りに来ているんだろうなぁ。
社務所で、巫女さんが何かの受付をしているようで、忙しく動き回っているのが見えた。

僕たちは、拝殿に向かった。
お賽銭を入れて手を叩く。
たとえどんな結果だったとしても、ずっと僕達が一緒にいれますように・・。

お辞儀をして僕達はその場を後にした。

「 明日に備えてお守りでも買おうかなあ〜」
お守りがずらっと並べられた台を眺めていた時、
『おみくじ一回300円』と書かれた紙が目に入った。

可愛らしい陶器製の鳥のお守りが付いたおみくじが大きな箱いっぱいに詰められている。
好きなものを1つ選べるらしい。
僕と律はそれをひいてみることにした。
おみくじの横に木箱が置かれていて、そこにお金を入れるらしい。
僕は律の分も合わせて600円を入れた。

さぁ、おみくじを引こう!

僕は箱の中に手を入れて、軽くかき混ぜながら1つを選んだ。
律は箱の中に手を入れた瞬間、迷わずに1つを選んでいた。
僕の選んだおみくじには、淡い赤色の紐のついた鳥のお守りが入っていた。
「ねぇ見て、僕のお守りは赤っぽい紐がついてるよ。羽のところは薄茶色だね。」
「律のは?」
「えーと、俺のは〜黄色だ。羽の部分はオレンジかな」
「おみくじには何が書いてあるかなあ…」

透明の袋から小さく折りたたまれたおみくじを取り出して広げてみる。
僕は、中吉。
願い事…心配多くして、その功少なし急ぐな
待ち人…来るとも遅し

マジでぇ??

「ねえ、律はなんて書いてあった?」
「俺はー、吉だね」
願い事…他人の助けにより願い叶う
待ち人…早く来ず訪れあり

だって…

「はははは、どっちもどっちか。でもこの鳥のお守り可愛いなぁ」

僕はおみくじを財布の中にいれた。
1年間財布の中に入れて持ち歩くといいって聞いた事があったから。
お守りはとりあえずカバンの中にしまっておこう。
何処に付けるかは後でゆっくり考えるとして…。

「律はお守りを何処につけるの?」
「そうだなぁ。どこがいいだろう」
律も鳥のお守りが気に入ったみたいで、ずっと眺めている
「このお守りってモチーフは鳥それともと鳩?」
「ほんとだ。鳩にも見えるね」
「四温、悪いけど、俺のおみくじとお守りも預かっといてくれる?」
「いいよ」
「じゃあ宜しく」
僕は律から受け取ったおみくじとお守りを財布の中にしまった。

「そろそろ行こうか?」
「そうだね。」
僕達は一礼して神社を後にした。

「そういえば、ジュンと一緒に神社横の川を見に行ったって言ってたの覚えてる?」
「あぁ覚えてるよ」
「もしかしてそれってここの事?」
「いや、ここじゃない。もっと小さな神社だったから」
「小さな神社?」
「そう、確かあっちの方だったよ」
指差した方を見ようとした時、ある事に気がついた。

律の指が透けてる

えっ?なんで?
僕は気がつかない振りをして律が指差した方に目をやった。
指先をもう一度確認してみる。
あっ、戻ってる。
僕の見間違いじゃない。絶対に透けていた。
指が透けて向こうの景色が見えていたから。

何か異変が起きている?
なんだろう・・・・
でも直ぐに元に戻ってたからなぁ。
電波が悪いだけだったのかな?
側に高い建物なんてあったっけ?
何処かで不具合が起きてるとか…
他に何か原因があるとしたら

まさか、成仏しかけてるとか?


「シオン…おい…四温、聞いてる?」
「えっ?なに」
「ぼんやりしてどうしたの」
「ごめん、ごめん、何だった?」
「いや、別に大した事じゃないから」
「そっか」
「明日の事が心配なの?それとも他に何か気になる事でもあった?」
「いや、そー言う訳じゃないんだけど〜。ねえ、律」
「何?」
「小指、繋いでもいい?」
「小指?」
律がポカーンって顔してる。
「小指だよ、指切りげんまんみたいな」
律の小指に僕の小指を絡ませた。
「今日はなんだかこーやって帰りたい気分なんだぁ」
「そうなんだ、手を繋ぐんじゃないんだな」
「うん」
律の存在は弱くてほどけやすい。
小指だけでもつながっていられる安心感が欲しいのかもしれない。
離れそうだけど、まだ離れていない。僕たちは、きっとこの境界線上で生きている。

「本当は暑いから手をつなぐのが嫌だったんだろう」
「違うよ。なんでそうなるんだよ」
「じゃあ本当のこと言ってみろよ」
「絶対言わないよ」
「はい、四温の負け」
「そんなこと言ってないで、ジュースでも飲む練習してみる?」
「して…」
「して…?」
「してみない」
「なんだよ、それーーー。僕アイス買って帰ろー」
「あーっ、俺も飲むマネくらいしてみようかなぁ」

ずっとこうして話してたいな。