その日は、一日心が浮き立っていた。ぼっちだった俺が、家に友達を呼ぶなんて、奇跡みたいだ。それとも、これは夢なんだろうか。夢なら覚めるな、と願う。
家に帰ってすぐに、母さんに報告すると、「任せといて」と、笑顔で言ってくれた。
そして当日。俺は、朝のまだ早い時間に目が覚めて、それから寝られなくなった。スマホの電源を入れて、待ち受け画像を見た。四人で撮った写真。笑いが込み上げてくるのを、どうにも出来なかった。
その時、ふと思い出した。最初に撮ったあの写真。陽平とツーショットになってた、あの写真はどうしたんだろう。陽平のスマホに保存されているんだろうか。あの時は「却下」と言ってしまったけど、ちょっと欲しいかも。
そんなことを考えて、自分は何故その写真を欲しがっているんだろうと疑問に思った。よくわからない。でも、欲しい。最近、自分の気持ちがわからないことばかりだ。
告白されたからか。でも、その前から俺は変だったのかもしれない。ちょっとしたことに、過剰反応してなかったか。
ますます頭の中が興奮状態になって、眠りから遠くなっていった。俺は起き出し、窓のそばに立った。このカーテンを握り締めて泣いたのが、随分前のような気がする。でも、ほんのこの前なんだよな。陽平たちと知り合って、まだ一ヶ月弱。それが、まず信じられない。
そうだ。アイツを撃退した話、してなかったと思い出した。今日会ったら、言わなきゃと心に決めた。自然に手を握り締めていた。
約束の時間になって、三人が揃ってうちに来た。三人の笑顔の挨拶を受けて、何だか緊張した。部屋に先導すると、椅子に座ってもらった。陽平は二度目だからか、寛いだ様子だ。つっちーと山ちゃんは、部屋を見回している。俺も人の家に行ったらやっちゃうな、と思って小さく笑った。
部屋に入ってきた母さんは、満面の笑みで、
「いらっしゃい。来てくれて嬉しいわ」
「お邪魔してます」
三人の声が、きれいに揃った。さすが、音楽が得意な三人……って、それは関係ないか。
「今日は、ゆっくりしていってね。もうすぐお昼ご飯出来上がるけど、まずコーヒーでもいかが?」
母さんが訊くと、陽平が挙手して、「いただきます!」と、勢いよく言った。山ちゃんとつっちーも賛同した。母さんは、ふふふ、と笑って部屋を出ていった。
四人だけになって俺は、緊張が戻ってきてしまった。俺がここの主だ。俺がこの場を何とかしなきゃ。そんな思いで口を開こうとしたら、
「この家ってさ、何かホッとしない?」
陽平が、微笑みながらそう言った。去年はどんよりとした空気の、いたたまれない場所だったのに、そんな風に思ってもらえるところになったかと思うと、感慨深かった。
「わかる。上手く説明は出来ないけど、この空気感、かな」
山ちゃんが、小首を傾げた。その表情は、とても穏やかなものだった。リラックスしてくれているのがわかる。つっちーも頷き、
「慎也。いいとこに住んでるんだね。俺も、ここ好きだな」
三人に絶賛されて、何だか気恥ずかしい。俺はどうすればいいんだろう。そうだ。話を変えよう、と思いついた。俺は陽平の腕を引くと、
「陽平にだまされたってわかったあの日、一人で歩いてたら例のアイツが現れてさ。俺、苛ついてたから全然怖いと思いもしないで、平気で言い返して。で、撃退しちゃったんだ。褒めて?」
ニコッと笑ってお願いしてみると、陽平は、
「撃退? 慎也、すごいじゃん」
言うと同時に、俺の頭を撫で始めた。子供扱いされてると思うけど、これ、嫌いじゃない。むしろ、嬉しい。
「褒められるって、気分がいいな。知らなかった」
本当は、知らないわけじゃないけど、随分久し振りの感覚だ。
「慎也。可愛いぞ」
言いながら、撫で続ける陽平。その笑顔に鼓動が速まった。また変な反応してる、と自分を笑いたくなった。考えたくないけど、これはもしかして……。
嫌いな人にこんなことされて、嬉しいわけがない。好きな友達にされたから、ともまた違う。答えは一つなんじゃないか?
「違う」
気が付いたら、声に出して言ってしまっていた。三人が俺を凝視してくる。当然だ。突然そんなことを言われたら、普通に驚く。
「慎也。可愛いって言ったことに対して、『違う』?」
陽平に訊かれて、首をブンブン振った。
「ごめん。えっと……独り言」
「独り言? ま、いいか。可愛いのは、違わないからな。それは否定するなよ?」
またそんな難しいことを。俺は、自分が可愛いなんて少しも思ってないのに。返事に困っていると、つっちーが拍手して、
「美しいな。陽平の愛情」
「そうだろ?」
「でもさ、陽平。それを慎也が求めているかは別だからね」
つっちー、バッサリ言ったな。感心してしまう。でも俺、もしかしたら求めているのかも。まだ、はっきりとはしない。でも、何だかもう否定するのが難しくなっている。
その時、母さんが入ってきて、「コーヒー入ったわよ」と言った。
家に帰ってすぐに、母さんに報告すると、「任せといて」と、笑顔で言ってくれた。
そして当日。俺は、朝のまだ早い時間に目が覚めて、それから寝られなくなった。スマホの電源を入れて、待ち受け画像を見た。四人で撮った写真。笑いが込み上げてくるのを、どうにも出来なかった。
その時、ふと思い出した。最初に撮ったあの写真。陽平とツーショットになってた、あの写真はどうしたんだろう。陽平のスマホに保存されているんだろうか。あの時は「却下」と言ってしまったけど、ちょっと欲しいかも。
そんなことを考えて、自分は何故その写真を欲しがっているんだろうと疑問に思った。よくわからない。でも、欲しい。最近、自分の気持ちがわからないことばかりだ。
告白されたからか。でも、その前から俺は変だったのかもしれない。ちょっとしたことに、過剰反応してなかったか。
ますます頭の中が興奮状態になって、眠りから遠くなっていった。俺は起き出し、窓のそばに立った。このカーテンを握り締めて泣いたのが、随分前のような気がする。でも、ほんのこの前なんだよな。陽平たちと知り合って、まだ一ヶ月弱。それが、まず信じられない。
そうだ。アイツを撃退した話、してなかったと思い出した。今日会ったら、言わなきゃと心に決めた。自然に手を握り締めていた。
約束の時間になって、三人が揃ってうちに来た。三人の笑顔の挨拶を受けて、何だか緊張した。部屋に先導すると、椅子に座ってもらった。陽平は二度目だからか、寛いだ様子だ。つっちーと山ちゃんは、部屋を見回している。俺も人の家に行ったらやっちゃうな、と思って小さく笑った。
部屋に入ってきた母さんは、満面の笑みで、
「いらっしゃい。来てくれて嬉しいわ」
「お邪魔してます」
三人の声が、きれいに揃った。さすが、音楽が得意な三人……って、それは関係ないか。
「今日は、ゆっくりしていってね。もうすぐお昼ご飯出来上がるけど、まずコーヒーでもいかが?」
母さんが訊くと、陽平が挙手して、「いただきます!」と、勢いよく言った。山ちゃんとつっちーも賛同した。母さんは、ふふふ、と笑って部屋を出ていった。
四人だけになって俺は、緊張が戻ってきてしまった。俺がここの主だ。俺がこの場を何とかしなきゃ。そんな思いで口を開こうとしたら、
「この家ってさ、何かホッとしない?」
陽平が、微笑みながらそう言った。去年はどんよりとした空気の、いたたまれない場所だったのに、そんな風に思ってもらえるところになったかと思うと、感慨深かった。
「わかる。上手く説明は出来ないけど、この空気感、かな」
山ちゃんが、小首を傾げた。その表情は、とても穏やかなものだった。リラックスしてくれているのがわかる。つっちーも頷き、
「慎也。いいとこに住んでるんだね。俺も、ここ好きだな」
三人に絶賛されて、何だか気恥ずかしい。俺はどうすればいいんだろう。そうだ。話を変えよう、と思いついた。俺は陽平の腕を引くと、
「陽平にだまされたってわかったあの日、一人で歩いてたら例のアイツが現れてさ。俺、苛ついてたから全然怖いと思いもしないで、平気で言い返して。で、撃退しちゃったんだ。褒めて?」
ニコッと笑ってお願いしてみると、陽平は、
「撃退? 慎也、すごいじゃん」
言うと同時に、俺の頭を撫で始めた。子供扱いされてると思うけど、これ、嫌いじゃない。むしろ、嬉しい。
「褒められるって、気分がいいな。知らなかった」
本当は、知らないわけじゃないけど、随分久し振りの感覚だ。
「慎也。可愛いぞ」
言いながら、撫で続ける陽平。その笑顔に鼓動が速まった。また変な反応してる、と自分を笑いたくなった。考えたくないけど、これはもしかして……。
嫌いな人にこんなことされて、嬉しいわけがない。好きな友達にされたから、ともまた違う。答えは一つなんじゃないか?
「違う」
気が付いたら、声に出して言ってしまっていた。三人が俺を凝視してくる。当然だ。突然そんなことを言われたら、普通に驚く。
「慎也。可愛いって言ったことに対して、『違う』?」
陽平に訊かれて、首をブンブン振った。
「ごめん。えっと……独り言」
「独り言? ま、いいか。可愛いのは、違わないからな。それは否定するなよ?」
またそんな難しいことを。俺は、自分が可愛いなんて少しも思ってないのに。返事に困っていると、つっちーが拍手して、
「美しいな。陽平の愛情」
「そうだろ?」
「でもさ、陽平。それを慎也が求めているかは別だからね」
つっちー、バッサリ言ったな。感心してしまう。でも俺、もしかしたら求めているのかも。まだ、はっきりとはしない。でも、何だかもう否定するのが難しくなっている。
その時、母さんが入ってきて、「コーヒー入ったわよ」と言った。


