「慎也。あのさ。父さんじゃ解決出来ないかもしれないけど……話してみたらどうだ? 少しは楽になるかもしれないぞ」
何があったか、どこまで話せばいいんだろう。でも、人を責めるようなことは言いたくない。だまされる俺が悪いんだ。
「俺が……バカだった……」
全部俺が悪いんだろ? それでいい。もう、どうでもいいじゃないか。
「俺……悲しくて……バカみたいで……」
そこまで言った時、心が崩壊してしまったかのように、涙がボロボロこぼれ落ちて、「わーっ」と声を上げながら泣き出してしまった。みっともない。小さな子じゃないのに。もう、高校生なのに。
そうして泣き叫んでいたら、頭の上に手が乗せられた。父さんだった。
「気の済むまで、泣け。我慢するな」
そんなこと言われたら、もうどうしようもない。俺は、泣きに泣いた。こんなに泣いたのは、いつ以来だろう。
落ち着きを取り戻したのは、それから三十分くらいしてからだ。ちょっと腹筋が痛い。それと、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「ごめん……」
それしか言えなかった。父さんは、強張っていた顔に、無理矢理のような笑顔をのせて、
「随分と我慢してたんだな。気付いてやれなくて、悪かったよ。去年だって、叱るばっかりで、何も話を聴いてやらなかった。反省してる。ごめんな」
父さんが俺に頭を下げてきた。それは違う。やめてくれ。そう言いたいけど、言葉は出てこなかった。
「慎也。何があった? 話せそうか?」
「……昨日の……あの人とケンカしちゃって……」
ケンカなのか? でも、説明が難しい。
「それが……それが、すごく悲しくて……苦しくて……」
そう言いながら、また泣きそうになってしまう。父さんは、「そうか」と言うと、
「慎也は、安達くんが大事なんだな。だから、悲しくなるんだよな。どうでもいい相手なら、そんなに苦しくならないだろ。ま、ケンカはしたかもしれないけど、そんなに思い込める人と友達になれたのって、すごいことだよな。父さんは、そう思うよ」
頭を撫でてくれる。
そうか。俺は陽平のことを、そんな風に思ってたのか。だから、辛いのか。親友がいるっていうのも、大変なんだな。
今まで、そこまで親しくした人がいなかったから、自分の気持ちが何なのか、言葉に出来なかった。でも、きっと父さんが言った通りなんだ。
「父さん、ありがとう。それから、母さん。ごめんなさい。去年のことも、さっきのことも」
母さんは、首を振って、
「いいのよ」
「いや。よくないよ。俺が悪かった。でもさ、去年もいろいろありすぎて、あんな態度取るしかなかったんだ。本当に、ごめんなさい」
「慎也……」
母さんが泣き出してしまった。父さんは、俺の頭から手を移動させて、母さんの背中をポンポンと叩いた。
俺は、何でこの人たちをこんなに悲しませてるんだ? でも、俺も耐えられなかったんだ。仕方ない。これからの人生で、何か返していこう。返せるのか、わからないけど。
「慎也。父さん、思うんだけどさ。これからは、お互いにもっと話そう。それが必要だと感じたんだ。殴り合いになったとしても、逃げちゃいけなかったんだよな。父さん、逃げてたよ。ごめんな。許してくれなくていいけど、これからは話し合おう。どうだ?」
俺は、深く頷いた。そうだ。歩み寄りが足りなかったんだ。お互いに、大事な言葉は口から出さなかった。だから、あんなことになったんだ。
「賛成。俺も、これからはそうする」
「よし。約束だぞ。母さんもな?」
母さんも頷き、「そうね」と小さな声で言った。三人で手を握り合った。何だかホームドラマか何かみたいだ。でも、胸の奥がポカポカしている。
何も解決はしてないし、陽平を許せるかは微妙だけど、思いをぶつけてみよう。それでダメなら、それまでだ。どうせ、絶交って言っちゃったし。
「父さん。俺、明日、陽平と話し合ってみる。指揮者と伴奏者が険悪じゃ、せっかくの音楽が台無しだよな?」
「合唱コンクールか。懐かしいな。慎也たち、何をやるんだ?」
「『花は咲く』だよ。ほら。大震災の時に作られた、あの曲」
父さんは何度も頷くと、
「いい曲だよな。そうか。あの曲か」
「今年は頑張る」
ピアノは弾かないけど。緊張しやすい俺だけど、負けない。あのすごいクラスメイトたちに、恥をかかせたらダメだ。俺が失敗したら、みんなの失敗になるんだぞ。
そこまで考えて、去年のことを思い出してしまった。でも、俺は去年の俺じゃない。自分の意思とは関係なく指揮者をやることになったけど、今回は頑張りたいと前向きに考えられている。去年は、どうしよう、無理、としか思えなかったけど、気持ちが全然違う。やってやる。
闘志が湧いてきた。でも、難題が一つ。陽平だ。
明日、学校で会った時、俺は陽平に何て言うんだろう。ちゃんと思いを伝えられるのか?
堂々巡りだ。でも、逃げたくない。陽平は変なやつだけど、俺の親友だ。絶交中だけど、そうだ。とにかく、話し合いだ。陽平を理解出来るか自信はないけど、やってみよう。
心の中で、「よし」と気合を入れて、席を立った。
何があったか、どこまで話せばいいんだろう。でも、人を責めるようなことは言いたくない。だまされる俺が悪いんだ。
「俺が……バカだった……」
全部俺が悪いんだろ? それでいい。もう、どうでもいいじゃないか。
「俺……悲しくて……バカみたいで……」
そこまで言った時、心が崩壊してしまったかのように、涙がボロボロこぼれ落ちて、「わーっ」と声を上げながら泣き出してしまった。みっともない。小さな子じゃないのに。もう、高校生なのに。
そうして泣き叫んでいたら、頭の上に手が乗せられた。父さんだった。
「気の済むまで、泣け。我慢するな」
そんなこと言われたら、もうどうしようもない。俺は、泣きに泣いた。こんなに泣いたのは、いつ以来だろう。
落ち着きを取り戻したのは、それから三十分くらいしてからだ。ちょっと腹筋が痛い。それと、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「ごめん……」
それしか言えなかった。父さんは、強張っていた顔に、無理矢理のような笑顔をのせて、
「随分と我慢してたんだな。気付いてやれなくて、悪かったよ。去年だって、叱るばっかりで、何も話を聴いてやらなかった。反省してる。ごめんな」
父さんが俺に頭を下げてきた。それは違う。やめてくれ。そう言いたいけど、言葉は出てこなかった。
「慎也。何があった? 話せそうか?」
「……昨日の……あの人とケンカしちゃって……」
ケンカなのか? でも、説明が難しい。
「それが……それが、すごく悲しくて……苦しくて……」
そう言いながら、また泣きそうになってしまう。父さんは、「そうか」と言うと、
「慎也は、安達くんが大事なんだな。だから、悲しくなるんだよな。どうでもいい相手なら、そんなに苦しくならないだろ。ま、ケンカはしたかもしれないけど、そんなに思い込める人と友達になれたのって、すごいことだよな。父さんは、そう思うよ」
頭を撫でてくれる。
そうか。俺は陽平のことを、そんな風に思ってたのか。だから、辛いのか。親友がいるっていうのも、大変なんだな。
今まで、そこまで親しくした人がいなかったから、自分の気持ちが何なのか、言葉に出来なかった。でも、きっと父さんが言った通りなんだ。
「父さん、ありがとう。それから、母さん。ごめんなさい。去年のことも、さっきのことも」
母さんは、首を振って、
「いいのよ」
「いや。よくないよ。俺が悪かった。でもさ、去年もいろいろありすぎて、あんな態度取るしかなかったんだ。本当に、ごめんなさい」
「慎也……」
母さんが泣き出してしまった。父さんは、俺の頭から手を移動させて、母さんの背中をポンポンと叩いた。
俺は、何でこの人たちをこんなに悲しませてるんだ? でも、俺も耐えられなかったんだ。仕方ない。これからの人生で、何か返していこう。返せるのか、わからないけど。
「慎也。父さん、思うんだけどさ。これからは、お互いにもっと話そう。それが必要だと感じたんだ。殴り合いになったとしても、逃げちゃいけなかったんだよな。父さん、逃げてたよ。ごめんな。許してくれなくていいけど、これからは話し合おう。どうだ?」
俺は、深く頷いた。そうだ。歩み寄りが足りなかったんだ。お互いに、大事な言葉は口から出さなかった。だから、あんなことになったんだ。
「賛成。俺も、これからはそうする」
「よし。約束だぞ。母さんもな?」
母さんも頷き、「そうね」と小さな声で言った。三人で手を握り合った。何だかホームドラマか何かみたいだ。でも、胸の奥がポカポカしている。
何も解決はしてないし、陽平を許せるかは微妙だけど、思いをぶつけてみよう。それでダメなら、それまでだ。どうせ、絶交って言っちゃったし。
「父さん。俺、明日、陽平と話し合ってみる。指揮者と伴奏者が険悪じゃ、せっかくの音楽が台無しだよな?」
「合唱コンクールか。懐かしいな。慎也たち、何をやるんだ?」
「『花は咲く』だよ。ほら。大震災の時に作られた、あの曲」
父さんは何度も頷くと、
「いい曲だよな。そうか。あの曲か」
「今年は頑張る」
ピアノは弾かないけど。緊張しやすい俺だけど、負けない。あのすごいクラスメイトたちに、恥をかかせたらダメだ。俺が失敗したら、みんなの失敗になるんだぞ。
そこまで考えて、去年のことを思い出してしまった。でも、俺は去年の俺じゃない。自分の意思とは関係なく指揮者をやることになったけど、今回は頑張りたいと前向きに考えられている。去年は、どうしよう、無理、としか思えなかったけど、気持ちが全然違う。やってやる。
闘志が湧いてきた。でも、難題が一つ。陽平だ。
明日、学校で会った時、俺は陽平に何て言うんだろう。ちゃんと思いを伝えられるのか?
堂々巡りだ。でも、逃げたくない。陽平は変なやつだけど、俺の親友だ。絶交中だけど、そうだ。とにかく、話し合いだ。陽平を理解出来るか自信はないけど、やってみよう。
心の中で、「よし」と気合を入れて、席を立った。


