胡蝶別曲 (나비별곡) : 乱れ蝶の詩 (みだれちょうのうた)

Scene 12.

熙珍(ヒジン)が團長の居処の中にて礼を捧げていた。薄暮に沈み始めた陽を受けながら、熙珍の礼を黙然と見守っていた團長が、口を重く開いた。

團長 : 太初の争いから生まれた呪いであろう。

熙珍が座布団の上へ身を下ろすやいなや聞こえてきた言葉に、熙珍が衣の身嗜みを正しては軽く微笑みを浮かべた。

團長 : 氾濫を起こしてこそ歪みを断てるということは。ただ、いわれのない賭けが招いた呪いの、隠された裏面に過ぎぬ。

熙珍 : しかし、仰せの通り、歪んだ循環は摂理に逆らうことはできません。

團長 : 歪んだ循環という奈落へ突き落とすこともまた、結局は摂理を覆そうとする所業であろうな。

熙珍 : 一度は経なければならぬことです。それが今であることは無念ですが、ゆえに私の務めを果たすと申し上げているのです。私以外に、適任者もまたおりません。

團長 : だからこそ、余計に済まなく思うのだ。

熙珍 : 私に済まなく思われる理由はございません。私は、お返しするだけです。團長にも、あの友にも。

熙珍の端正な確信に、團長がしばし言葉を止め、息を整えるように身を座り直した。軽い問いが熙珍へ渡った。

團長 : それはそうと、ちゃんと会ってこられたか。なにぶん怖がりな子だからな。

熙珍 : はい。鏡にふさわしく高潔で美しゅうございました。もう一羽の蝶にふさわしく。

團長 : お前たち皆に辛いことばかり押しつけているようで、幾度躊躇ったか知れぬことであった。

熙珍 : 團長。

熙珍が落ち着いた重みで團長の言葉を継いだ。

熙珍 : 私は、今になってようやく蝶を描くことができます。私がその座を占めたいと願った、あの四羽の蝶が正しく飛べるようにすることが、私の務めです。私は躊躇ったことなどございません。むしろ気を揉みながら待っておりました。遅くなることが怖うございました。あの昔、團長は踏みにじられていた私を掬い上げてくださいました。種を宿し大切に育ててくださり、私はようやく種を宿した花として再び在ることができたのです。團長は最後まで躊躇っておいででした。ある者は、私が深く宿した種を撒き散らすには蝶たちが傷つかざるを得ないと、それこそが團長が躊躇っておいでだった最たる理由だと思うでしょうが、私はそうは存じません。團長は最後まで私のことをご心配くださっておいででした。私が痛まずにはおれぬためでした。私の中の花の種を散らすには、私は消えなければならぬためです。團長。私はただ、願うのみです。

熙珍が晴れやかに微笑み、座布団に座したまま腰をさらに折り、團長に再び礼を捧げた。

熙珍 : 團長がもう躊躇われませんよう願っております。私は、最善を尽くします。残り少ない時と長く残された時のすべてにおいて。

團長が強張った微笑みを浮かべたまま、辛うじて頷いた。受け入れ難い犠牲であり、歩むまいとした道であったが、ついに歩かざるを得なくなってしまった道であった。團長がにじませていた深い痛切さを、軽い溜め息で収めた。


Scene 13.

始緣が席から立ち上がりながら思い切り伸びをした。

始緣 : まあ、うん。まだ全部はわかんないけど、その呪い?が、思ったよりクソほどでもないって確信はしてるんだな? あたしらが間違ってるわけでもないし。

所姬が席に座ったまま頷いた。

始緣 : 理由はおいおいわかるだろうし。あたしはバカな女だから言われたことくらいちゃんとやれたらいいな。あたしのせいでクソになったらイラつきそうだし。

所姬 : もうすぐ着くよ。早く降りて行きな。

始緣 : 今日なんか、別にあるの?

所姬 : ないよ。今日はただ金受け取って終わりの仕事。あの女も忙しいだろうし。本格的にバラバラに動き始めるだろうから。むしろあたしたちにも少し時間ができるかもしれない。

始緣が頷いた。ぼんやりと考え込んでいた連曦が、玄関を出た始緣を見送ろうと立ち上がったが、すでに始緣は外へ出て扉を閉めているところであった。所姬が連曦の様子を窺っていた。そんな所姬の視線に、連曦が先に難しい問いを投げかけ、重い沈黙を取り払った。

連曦 : 私は、ではどのような方法で과업(科業:クァオプ)を受けることになるのでしょう。

連曦の問いに、所姬がいくらか重い声を伝えた。

所姬 : 所長。私と知暎オンニ。そして始緣は、まだ、表面的にではあっても團とは何の関わりもない人間たちです。

所姬の言葉に連曦が思案した。思案の答えをさほど難なく見出した連曦が、答えの代わりに虚脱した微笑みを浮かべたまま頷き、独り言のように答えを伝えた。

連曦 : そうですか。

所姬 : あの場所が答えです。所長の問いに対する。ですが決めるのは私たちではなく——

連曦が首を横に振った。いかなる瞬間よりも確信に満ちた微笑みを浮かべた連曦が、所姬をまっすぐに見つめた。

連曦 : いいえ。私は、團長を信じています。いつも後ろから私を助けてくださるあの方も。ですから心配しないでください。私がなすべき務めがあるのなら、私は不足なく果たしてみせます。背を向けたりもしません。