【続編♡】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい2



「どうぞ、プリンとクッキー…です」
「え?伊織、なんやねんこれ?」
「話って、これぇ?」
「いただこう」


月曜日。時刻はちょうどお昼時。
俺は晴れて恋人同士になった千冬と共に、カゲヤン達を一ノ宮キャンパスの学食に呼んでいた。
昨日千冬とデパートで買ってきた、ちょっといいデザートをカゲヤン達に配る。


「いや、これは…ささやかなお礼…っつうか…」
「僕たち、恋人同士になりました。先輩達のおかげです。本当にありがとうございます」
「ちょ、千冬…!」


歯切れの悪い俺に代わって、千冬が三人に報告を完了させる。
こいつ、恥ずかしくないのか…!?
俺はなんか小っ恥ずかしいんだけど?
赤い顔で千冬の服の端を引っ張ると、千冬が眉を下げ、優しく微笑む。


「恥ずかしいんですか?ふふ。僕は、幸せですよ」
「っ…」


そして俺の手にそっと触れた。
栗色の瞳が、甘く俺を見つめる。


「………ボク達、見せつけられてるぅ?」
「られてるな」
「あー、スイーツ食う前から甘ったるいんやけど」


ブチブチ言いながらもプリンの蓋を開けて早速食べ始める三人。
俺と千冬も、自分たち用に買った分を開けて食べ始める。


「まあ良かったな。これで俺達も一安心や」
「だねぇ。お幸せにね」
「末長く爆発しろ」
「爆発?」


マンティスの謎発言に突っかかっているとキリがないから、気にはなるけどスルーする。
三人の朗らかな表情を見る限り、祝福されてるのはちゃんと伝わる。
隣をチラリと見ると、スプーンを口に運んだ千冬と目が合い、ちょっと照れて、緩む頬が熱を持つ。
そのまま目だけで三人を見上げて口を開いた。


「…ありがとな、三人とも。…その、これからも、よろしくな…?何か、俺が協力できることがあったら、言ってくれな」
「何~?改まってぇ?」
「伊織、顔が緩み過ぎ…」

「あっ!ハイハイ!あるある!」


マンティスが何か言いかけながら、千冬の方を一瞬見て、素早く顔を逸らす。
その横で、カゲヤンがスプーンを咥えたまま元気に手を上げた。


「学祭来てやぁ!部活で販売やんねん。買うてや!」
「へぇ?カゲヤンって部活なんだっけ?」
「うぉぉいッ!山岳部やで!?『岳斗(がくと)』の『岳』は、『山岳』の『岳』やろ」
「岳斗?」
「俺の名前やろが!影山岳斗ォ!ったく、お前らなァ…」


カゲヤンの渾身のツッコミにみんなで笑う。
カゲヤンの言う学祭とは、来月にある大学祭のことだ。
俺は部活もサークルもやってねぇし、関係ないから行くつもりなかったけど、頼まれたからには行くしかねぇよな。


「わかった、行くわ」
「僕も行きます」
「それならアニ研にも来るといい」
「あー、マンティスはアニメ研究会だっけ?」
「そうだ。アニ研にも金を落としていってくれ」
「やらしぃな~、その言い方」
「なら、ボクも剣道部のステージ披露あるから観にきてよぉ」
「おう、多分行くわ」
「ちょっとぉ、多分って何?さっきまでのしおらしさはどうしたのぉ?」
「ははっ、…あ、」


マロをからかって笑っていると、スプーンのプリンを誤って服に落としてしまった。
慌てて近くのペーパータオルで拭き取ろうとすると、余計汚れが広がってしまう。
あー…。


「悪ぃ、千冬。これ、千冬の服なのに」
「「「ブッ」」」
「大丈夫ですよ。今から僕の家戻って着替えますか?」
「「「ブフッ…」」」
「いや、そこまで時間ねぇし、上着羽織れば見えねぇからいいわ。洗濯して返すな」
「そのままでも良いですよ?とりあえず、濡れタオルで拭きましょう。お手洗い行きましょうか」
「おう、分かった」
「先輩たち、少し伊織先輩を借りますね」
「「………どうぞ」」
「見せつけられてるわぁ…」


カゲヤンが何かボヤくが、俺は、千冬に手を引かれて席を立つ。

近くのトイレまで行くも、千冬はそこを通り過ぎて、階段を登っていった。


「トイレ行くんじゃねぇの?」
「ここは混んでますから、2階上の空いてるところへ行きましょうか」
「ああ、確かにな」


食堂から離れるにつれて、人の声も気配も消えていく。
千冬の言う通り、2階上のフロアは人気がなく、トイレも誰1人いなかった。
静かなトイレは、少し寒々しい印象を受ける。ていうか、実際ちょっと空気が冷たい。
…千冬に手を繋がれてる俺は、あったけぇけど…。


「伊織先輩、こっち向いてください」
「ん」


千冬は洗面所でハンカチを濡らすと、俺の服の裾に触れる。
長いまつ毛を伏せたまま、静かに尋ねる。


「服の中に、手、入れても良いですか…?」
「おう…、えっ!?」


よく考えないまま返事をした瞬間、千冬が更に一歩近づき、服の裾に手をかけた。


「何っ…、」
「すぐ、終わらせますから」


動揺する俺を置いて、千冬の手が、服の裏側をスルスルと登った。
千冬の肘に引っかかった裾がたくし上げられていき、ひんやりした空気が服の中に入り込む。
身体がビクッと跳ねた。


「っ、」
「…寒いですか?」
「…大丈夫、」


千冬の手が汚れ部分まで到達すると、内側から服を押さえながらハンカチで丁寧に拭き取ってくれる。

目の前には、柔らかいピンクの髪と、俯く千冬の整った顔。


「……お前、ほんとに世話好きだよな…」


汚れた服を拭いてもらうなんて、ガキっぽいか?と、少し冷静になった頭が考え始める。
微妙な恥ずかしさを千冬の世話好きのせいにしようと呟くと、視線を上げた千冬と目が合った。

ち、近ぇ…。


「…伊織先輩、」
「な、なんだよ?」
「………僕以外に、可愛い顔…見せないでほしいです」
「……は?」


静かに零された言葉にびっくりする。
カワイイカオ?
何の話だ。

ゆっくりと距離を詰める千冬に後退りすると、背中に冷たい壁が当たる。
千冬はさらに距離を縮め、唇が触れるギリギリのところでやっと止まった。

長いまつ毛の下で、甘い栗色の瞳が切なげに俺を見る。


「僕だけのものに、したいんです……」
「っ、」
「そんなこと言ったら、僕のこと、嫌いになっちゃいますか…?」


服の内側に入れられた手を首元から出し、俺の顎に添える。
服が引っ張られて、身体ごと千冬に引き寄せられるような感覚になった。


──ちゅ


そして、優しい口付け。
柔らかい唇の感触に、頬がじんわり熱くなる。


「ち…ふ、ゆ…、誰か、来るかも……」
「…少しだけ、ですから…」


再び唇が合わされ、俺の抗議ごと飲み込まれてしまう。


「……僕の、伊織先輩、です…」
「…っ、」


唇が離れ、千冬を見上げると、うっとりした瞳と目が合った。
服の中にあった手を引き抜き、服の裾を整えると、しなやかな指先が優しく頬を撫でた。


「伊織先輩…」


千冬の腕が、背中に回る。


「次に会えるのは、水曜のバイトですよ…」
「そうだな」
「……寂しいです」


掠れた声が呟く。


「水曜なんて、明後日だろ」
「………」


俺の言葉に、千冬が俺の首元に擦り寄った。
肌にあたる髪が、くすぐったい。
腕の力が強まって、千冬の体温が俺の体を侵食していく。


「千冬、……今日、寝る前に電話する」
「!、本当ですか?」
「おう」
「ふふ、嬉しいです」


ようやく身体が解放され、目の前には、照れたように微笑むかわいい後輩がいた。


「ほら、そろそろ戻らねぇと、アイツらに置いてかれる。戻ろうぜ」
「はぁ…、はい。分かりました」


千冬に手を繋がれ、トイレを出る。

きゅっ、と握られた手に、幸せを感じた。